スターリンク衛星で音声通話、圏外で話せるのはいつから?
画像出典: Artem Beliaikin (Flickr, CC0 Public Domain)
KDDIは2026年9月15日、次世代衛星「Starlink Mobile V2」のサービス提供契約をSpaceXと締結したと発表し、スマホと衛星が直接つながる「au Starlink Direct」で高速データ通信と音声通話(VoLTE)を2027年内に提供開始することを目指すとしました。2026年10月時点で圏外からできるのはテキストメッセージや位置情報の共有までで、音声通話はまだ使えません。衛星側がLTEの基地局に相当する機能を積み、スマホからは「上空の基地局」として見える形のため、専用アプリや追加機器は不要です。
山の中や離島、工事中の林道。地上の基地局の電波が届かない場所は、日本の国土にまだかなり残っています。そこで動いているのが、地上の鉄塔ではなく上空を回る衛星にスマホから直接つなぐという方法です。
KDDIは2026年9月15日、米SpaceXとの間で次世代衛星「Starlink Mobile V2」のサービス提供契約を締結したと発表しました(契約締結自体は2026年8月10日、アジアで初めての契約です)。この衛星を使って、圏外からの音声通話まで踏み込むという話です。正直なところ「結局いつから電話できるのか」が一番知りたいところだと思うので、時期の話も含めて順に見ていきます。
圏外から電話できるのはいつから?
結論から書きます。KDDIは「au Starlink Direct」で高速データ通信と音声通話(VoLTE)を2027年内に提供開始することを目指すとしています。VoLTEは、音声を通常のデータ通信と同じ回線に載せて運ぶ通話方式で、いまのスマホの通話に使われているものです。
ただし、2027年内という言い方にとどまっていて、具体的な月や四半期、正式な開始日は発表されていません。2026年10月の時点では、衛星経由の音声通話はまだ利用できません。
NTTドコモも同じ「Starlink Mobile V2」を使い、「docomo Starlink Direct」で高速ブラウジングや音声通話を2028年度中に始める計画です。auが先、ドコモが後という順になります。
通話に対応する端末の具体的な機種リストは、まだ発表されていません。現在のau Starlink Directはおよそ50機種(iPhone 13以降、Pixel 7/8シリーズ、Xperia 1 VIIなど)に対応していますが、この50機種がそのまま音声通話にも対応するかは公表されていません。「2027年に手持ちのスマホで必ず通話できる」とは、まだ言えない段階です。
いま圏外でできることは何?
KDDIと沖縄セルラーは2025年4月10日に「au Starlink Direct」の提供を開始しました。日本で初めてのDirect to Cell(スマホと衛星が直接通信する方式)サービスです。1年半ほど動いているサービスなので、すでにできることもあります。
- テキストメッセージ(SMS/RCS/iMessage)の送受信
- 現在地の位置情報の共有
- 緊急地震速報・津波警報・Jアラートの受信
- Android端末でのGemini(AIアシスタント)への質問
- 緊急SOSの発信
- 海外ローミング接続(米国・カナダ・フィリピン・ニュージーランド・オーストラリアなど)
- IoT機器・AIドローンとの直接通信
文字と位置情報は通る、声はまだ通らない。これが現在地です。遭難時に「ここにいます」と伝えるところまでは今日でもでき、2027年内に「もしもし」が加わる、という段取りになります。
なお、利用できるのは空が見える屋外です。衛星との間に屋根や厚い雲ではなく、見通しが必要になります。山間部・離島など地上の電波が届きにくい場所を補う位置づけで、街中の屋内を置き換えるものではありません。
衛星から直接電話がつながるしくみとは?
従来の衛星電話は、専用の端末と太いアンテナを使うものでした。Direct to Cellはそこが違います。衛星の側に、LTEの基地局(eNodeB)に相当する機能を積んでいるのです。
つまり、スマホから見ると相手は衛星ではなく「上空にある基地局」です。ふだん鉄塔の上にある設備が、高度数百kmを秒速で移動している、という違いしかありません。だからスマホ側は特別なことをしていません。専用アプリも追加機器も不要で、対応する周波数帯(au Starlink Directの場合は2GHz帯)に対応したスマホであれば使えます。
声はどこを通って相手に届くのか
Starlinkの低軌道衛星群はおよそ7000機あり、そのうちスマホと直接通信できる機能を持つ衛星は数百機規模です。手元のスマホが上空の1機につながったあと、データは衛星同士をレーザー通信で渡っていき、最終的に地上のゲートウェイ(地上局)に降りて、通常の通信網に接続されます。
- スマホ → 衛星圏外の屋外から、基地局相当の機能を持つ衛星へ直接電波を出す。
- 衛星 → 衛星衛星間をレーザー通信でデータが中継される。
- 衛星 → 地上局電波の届く地域にある地上のゲートウェイに降りる。
- 地上局 → 相手そこから先は通常の携帯網・固定網を通り、相手の電話機につながる。
相手側から見れば、ふつうのauの番号からの着信です。経路の最初のひと区間が鉄塔ではなく衛星になっている、という構造です。

なお、衛星内部の構造や通信プロトコルの細部について、KDDI・SpaceXから技術仕様は公表されていません。ここで書いたしくみは、Direct to Cellという方式に共通する一般的な説明です。
なぜ今まで文字しか送れなかったのか?
基地局の機能が空にあるなら、最初から通話もできたはずだと思えます。足りなかったのは容量です。1機の衛星が1つの基地局として、見下ろす広い範囲のスマホ全部を受け持つことになるため、使える通信容量を大勢で分け合う形になります。短い文字なら足りても、途切れずに流し続ける音声には足りませんでした。
次世代衛星「Starlink Mobile V2」で変わるのは、まさにそこです。
| 第1世代からの変化 | 向上の度合い |
|---|---|
| 衛星1基あたりのスループット | 約20倍 |
| データ密度(単位面積あたりの通信容量) | 約100倍 |
KDDI株式会社の公表データをもとに作成
上の表の2つは別々の改良によるものです。スループットの向上はアンテナの大型化によるもので、1機が運べる通信量そのものが増えます。データ密度の向上は通信ビームを増やしたことによるもので、同じ面積をより細かく分担して受け持てるようになります。
結果として、メッセージ送受信や低速データが中心だった使い方から、日常利用に近い高速ブロードバンド通信と音声通話(VoLTE)へ広がる見通しになりました。
圏外に行く予定がある人が今できることは?
通話は2027年内の目標なので、今年の登山や離島への旅行には間に合いません。ただ、いま使える機能は設定を確認しておけば圏外でも動きます。
- 手持ちの端末がau Starlink Directの対応機種か(iPhone 13以降、Pixel 7/8シリーズ、Xperia 1 VIIなどを含む約50機種)
- 連絡を取りたい相手とのやり取りが、SMS/RCS/iMessageで届く状態になっているか
- 位置情報の共有を、家族など特定の相手に送れるようにしてあるか
- 圏外で使うのは空が見える屋外だと理解しておく(谷筋や樹林帯では空が開けた場所へ移動する)
圏外対策は端末の機能だけで決まるものではなく、電波が届く場所を事前に知っておくことも効きます。山や郊外での電波の性質についてはアウトドアでの電波対策、衛星通信そのものの基礎は衛星通信とスマホも合わせて読んでみてください。
よくある質問
au Starlink Directで音声通話はいつから使えますか?
KDDIは2026年9月15日の発表で、au Starlink Directの高速データ通信と音声通話(VoLTE)を2027年内に提供開始することを目指すとしています。具体的な月や正式な開始日は発表されておらず、2026年10月時点では衛星経由の音声通話は利用できません。
衛星と直接通信するのに専用の機器やアプリは必要ですか?
必要ありません。スマホと直接通信できる機能を持つStarlink衛星はLTEの基地局(eNodeB)に相当する機能を搭載しており、スマホからは上空の基地局として認識されます。対応する周波数帯(au Starlink Directでは2GHz帯)に対応した対応機種であれば、追加機器や専用アプリなしで利用できます。
2026年10月時点で、圏外から何ができますか?
テキストメッセージ(SMS/RCS/iMessage)の送受信、現在地の位置情報の共有、緊急地震速報・津波警報・Jアラートの受信、Android端末でのGeminiへの質問、緊急SOSの発信、一部の国での海外ローミング接続ができます。利用できるのは空が見える屋外です。
ドコモでも衛星からの音声通話はできるようになりますか?
NTTドコモも同じ次世代衛星「Starlink Mobile V2」を用いて、「docomo Starlink Direct」で高速ブラウジングや音声通話を2028年度中に始める計画です。auが2027年内を目標としているため、提供開始はauより後になる見通しです。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。