いろは堂テック ← 戻る

部屋だけ電波が悪い原因と、今日できる対処5つ

2026年5月25日|いろは堂テック編集部
Wi-Fiルーターとアンテナ

画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

この記事の要点
家の中で特定の部屋だけスマホの電波が悪くなる主な原因は、壁や床の建材による電波の減衰です。コンクリートは電波の10〜90%を吸収し、鉄筋コンクリートの壁1枚で受信電力が最大約10dB下がった実測例もあります。日本の大手キャリアはWi-Fi通話(Wi-Fi Calling)を提供していないため、現実的な対処はWi-Fiを弱い部屋まで届かせてLINE通話などのデータ通信の通話に切り替えることです。
😟
リビングだと4本立つのに、寝室に入った瞬間1本になる。スマホが壊れてるのかな…?

スマホの故障ではありません。電波は壁や床を通り抜けるときに弱くなります。しかも、どのくらい弱くなるかは建材で大きく変わります。木の壁ならほとんど素通りしますが、鉄筋コンクリートの壁は電波をかなり食い止めてしまう。家の中で「あの部屋だけダメ」が起きるのは、たいていその一枚の壁のせいです。

正直なところ、電波の入りそのものを自力で強くする方法はほとんどありません。ただ、弱い部屋でも「通話とネットが使える状態」にすることはできます。しくみを知ってから、家でできる手を順に見ていきましょう。

なぜ壁を1枚はさむだけで電波が弱くなるの?

電波は目に見えませんが、光と同じ仲間の波です。ガラスは光を通し、木の板は通さない。電波にも同じことが起きていて、材料によって「通り抜けやすさ」がまったく違います。

電波がどれだけ材料に吸われるかを表す指標に吸収係数(材料に当たった電波のうち、通り抜けずに吸われてしまう割合の目安)があります。代表的な建材の値を並べてみます。

材料電波の吸収係数(目安)
木材・石膏ボードなど非金属材料0〜10%程度
コンクリート10〜90%程度

ローム TechWeb「電波の吸収」の公表データをもとに作成

上の表のとおり、コンクリートは非金属の建材とくらべて桁違いに電波を吸います。同じ「壁1枚」でも、木造の間仕切りと鉄筋コンクリートの壁では話がまるで違うわけです。

実測でも同じ傾向が出ています。鉄筋コンクリートの壁を電波が透過するとき、受信電力が最大約10dB下がったという建物内電波伝搬の研究例があります。10dBというのは、受け取れる電力が10分の1になる程度の落ち込みです。もともとギリギリ届いていた部屋なら、これだけで圏外寸前まで落ちても不思議はありません。

🤔
じゃあ壁の厚さがわかれば、どのくらい弱くなるか計算できる?

壁の厚さから減衰量を割り出すことはできません。一般建築材料の透過減衰は、コンクリート内部の水分の分布や、電波の周波数帯によってばらつきが大きいことが報告されています。しかも周波数が高いほど、そのばらつきは大きくなる傾向にあります。同じ間取りの家でも、部屋ごと・季節ごとに入りが変わることがあるのはこのためです。

もうひとつ効いているのが鉄筋です。金属は電波を反射・遮蔽しやすく、鉄筋の入り方やコンクリートのかぶり厚によっては、特定の周波数の電磁波を狙って遮る設計すら成立します。鉄筋コンクリートの建物の奥まった部屋や地下が特に弱いのは、コンクリートの吸収と鉄筋の遮蔽が重なるからです。

電波が悪い部屋には、どんな共通点がある?

建材の話を家の中に当てはめると、弱くなりやすい場所の見当がつきます。基地局からの電波は屋外から入ってくるので、外から見て「壁を何枚くぐるか」が効いてきます。

電波が弱くなりやすい部屋の条件
  • 建物の中心にあり、外壁に面した窓がない部屋
  • 地下、または半地下の部屋
  • 鉄筋コンクリート造の建物で、廊下や別の部屋をはさんだ奥まった位置
  • 浴室・トイレなど、金属や配管に囲まれた狭い空間
  • 金属製の棚・大きな鏡・冷蔵庫などが電波の通り道をふさいでいる場所

逆に言えば、窓のある壁際は家の中でいちばん電波が入りやすい場所です。通話が切れそうなときに窓際へ移動するとつながるのは、気のせいではなく、減衰の少ない経路に自分から移動しているからです。

「Wi-Fi通話」を使えば解決するのでは?

🤩
スマホの設定に「Wi-Fi通話」って項目があったはず。あれをオンにすればいいんじゃない?

日本の大手キャリアでは、この機能は使えません。ここは誤解が多いところなので、はっきりさせておきます。

Wi-Fi通話(Wi-Fi Calling / VoWiFi)は、携帯の電波の代わりにWi-Fi経由で普通の電話番号の通話を成立させるしくみです。海外では広く使われていますが、NTTドコモ・au・ソフトバンクの公式VoLTE(携帯のデータ通信の回線に音声をのせて通話する、現在の標準的な通話方式)のサービスページを確認しても、Wi-Fi経由の音声通話に関する案内は見当たりません。iPhoneの「設定→電話→Wi-Fi通話」も、対応キャリアでなければ有効化できず、日本の主要3社は対応キャリアとして明記されていません。

設定項目が出てこなくても故障ではありません

スマホ側に機能が入っていても、契約しているキャリアが対応していなければ項目が現れない、または操作できません。「自分のスマホだけおかしいのでは」と探し回る必要はありません。日本で電波の弱い部屋をなんとかしたいなら、別の手を使います。

今日できる対処法はどれから試せばいい?

キャリアの電波そのものを強くするのは個人には難しいので、「Wi-Fiを弱い部屋まで届かせて、通信をそちらに逃がす」のが現実的な考え方です。手間の軽い順に並べます。

  1. 通話をデータ通信のアプリに切り替えるWi-Fiさえ届いていれば、LINE通話・FaceTime・Google Meetなどのデータ通信ベースの通話は成立します。携帯の電波が1本でも、Wi-Fiが安定していれば会話は途切れません。まずはここが一番早く効きます。
  2. Wi-Fiルーターの置き場所を見直すルーターの位置を、弱い部屋に近い場所へ寄せます。ルーターメーカーのバッファローも公式FAQで、壁や天井などの障害物をはさむと電波が届きにくくなると案内しています。床置き・棚の奥・金属ラックの中は避け、部屋の中央寄りの高い位置に置くのが基本です。
  3. 家具や家電の配置を変える金属製の棚、大きな鏡、冷蔵庫などが電波の経路上にあるなら、ずらすだけで改善することがあります。また、2.4GHz帯のWi-Fiは電子レンジと干渉するため、ルーターと電子レンジは離して置きます。
  4. 中継機やメッシュWi-Fiを足す置き場所の工夫で足りない場合は、Wi-Fi中継機やメッシュWi-Fiで家全体の電波を均一化します。中継機は「弱い部屋」ではなくルーターと弱い部屋の中間、まだ電波が十分届いている位置に置くのがコツです。
  5. キャリアの窓口に相談する屋内の電波改善について、各社が相談を受け付けている場合があります。提供している機器や条件は会社ごとに異なるため、契約中のキャリアの公式窓口で確認するのが確実です。
😌
まずはルーターの位置を直して、通話はLINEに寄せてみる。それだけならすぐできそう。

費用をかける前に、置き場所と通話手段の2つを見直すだけで済むケースはかなりあります。機器を買い足すのは、その2つを試したあとで十分です

それでも改善しないときは何を疑う?

上の手を尽くしても弱いままなら、原因が別のところにある可能性を考えます。

切り分けのチェックポイント
  • 家族の別のスマホでも同じ部屋で弱いか(端末側か環境側かの切り分け)
  • 同じ部屋でも窓際なら回復するか(建材の減衰かどうかの確認)
  • 時間帯によって変わるか(変わるなら基地局側の混雑の影響も考えられます)
  • Wi-Fiは届くのに遅い場合、電波の強さではなく回線側の問題の可能性

特に、アンテナの本数が十分なのに遅いときは、電波の強さとは別の要因を疑ったほうが早いことがあります。この見分け方は回線速度の考え方の記事中継機の使い方の記事もあわせて読むと整理しやすくなります。

建材による減衰は、住んでいる建物の構造そのものが原因なので、なくすことはできません。ただ、電波が届かない場所を、届く回線で埋めるという考え方に切り替えれば、多くの家は今ある機能だけで十分に使える状態にできます。

よくある質問

家の特定の部屋だけスマホの電波が悪いのはなぜですか?

壁や床の建材が電波を弱めるためです。コンクリートは電波の10〜90%程度を吸収するとされ、木材や石膏ボードの0〜10%程度と比べて減衰が大きくなります。鉄筋コンクリートの壁を透過する際に受信電力が最大約10dB下がった実測例もあり、建物の中心や地下など外壁から遠い部屋ほど弱くなりやすい傾向があります。

日本の大手キャリアでWi-Fi通話(Wi-Fi Calling)は使えますか?

NTTドコモ・au・ソフトバンクの公式VoLTE(携帯のデータ通信の回線に音声をのせて通話する、現在の標準的な通話方式)のサービスページには、Wi-Fi経由の音声通話に関する案内は見当たりません。iPhoneの「設定→電話→Wi-Fi通話」も対応キャリアでなければ有効化できず、日本の主要3社は対応キャリアとして明記されていません。電波の弱い部屋で通話したい場合は、LINE通話やFaceTimeなどデータ通信を使う通話アプリが現実的な選択肢になります。

Wi-Fi中継機はどこに置くのが正しいですか?

電波の弱い部屋そのものではなく、ルーターと弱い部屋の中間で、まだ電波が十分に届いている位置に置きます。中継機は受け取った電波を中継するため、設置場所の電波がすでに弱いと、弱いまま中継することになります。また壁や天井などの障害物をはさむと電波が届きにくくなるため、障害物の少ない経路上に置くことが重要です。

同じ部屋でも日によって電波の入りが変わるのはなぜですか?

建築材料の透過減衰は、コンクリート内部の水分の分布や電波の周波数帯によってばらつきが大きく、周波数が高いほどばらつきが大きくなる傾向が報告されています。加えて、基地局側の混雑状況によっても通信の速さは変わります。アンテナ表示は接続中の基地局との電波の強さを示す指標で、混雑状況までは反映されません。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。