リバランスのやり方、年1回で戻す3手順
画像出典: 写真: Dave Dugdale from Superior, USA(CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons)
リバランスは「現状比率を出す→目標との差を測る→超えた分だけ戻す」の3手順で完了します。点検は年1回でも十分機能し、目標比率から5〜10ポイント程度ずれたクラスを調整対象にする考え方が広く使われています。戻し方は売却して買い直す方法のほか、新規積立の配分だけを変える方法もあり、後者は売却コストや課税をともないません。
資産配分は、放っておくと勝手にずれていきます。値上がりした資産の金額が大きくなるぶん、その比率も自動的に膨らむからです。株式50%・債券50%で始めても、株式が伸びた年の年末には60%対40%になっている、というのはごく普通に起きます。
問題は、比率が変わると自分が引き受けているリスクの大きさも一緒に変わってしまうことです。株式60%のポートフォリオは、株式50%のものより下落局面での値動きが大きくなります。最初に決めた配分は「このくらいの振れ幅までなら耐えられる」という自分との約束なので、そこから離れたまま走り続けると、想定していない揺れに巻き込まれます。
正直なところ、この作業は毎日やる必要はまったくありません。年に1回、決算書の代わりに自分の資産の割合を数えてみる。それだけで機能します。ここでは、その数え方と戻し方を数値例で追っていきます。
リバランスとは何をする作業?
リバランスとは、値動きでずれてしまった資産の構成比率を、最初に決めた目標の比率に戻す作業です。増えすぎたものを減らし、減ったものを増やす。やることはそれだけです。
ここでいう「資産クラス」は、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券のように、値動きの性質が似たもののまとまりを指します。銘柄単位ではなく、このまとまり単位で比率を見るのがリバランスの基本です。
参考になるのが、公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のやり方です。GPIFは第5期中期目標期間(2025〜2029年度)の基本ポートフォリオとして、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式をそれぞれ25%ずつの均等配分としています。そのうえで資産ごとに「乖離許容幅」を設定し、原則として毎営業日ベースで資産構成割合を把握し、許容幅を超えた場合にルールに基づいてリバランスを実施しています(GPIFの公表資料より)。
注目したいのは、GPIFが「毎営業日ベースで把握」しているのに、実際に売買するのは許容幅を超えたときだけという点です。見る頻度と、動かす頻度は別物です。個人が同じ精度で毎日見る必要はありませんが、「あらかじめルールを決めておき、ルールに触れたときだけ動く」という骨格はそのまま真似できます。
いつやる?年1回で足りる理由
タイミングの決め方には、大きく2つの考え方があります。
- カレンダー方式 — 毎年◯月というように日付で決める。年1回、誕生月や年末年始など忘れない時期に固定する
- 乖離方式 — 目標比率から一定以上ずれたら実行する。GPIFが採っているのはこちら
個人の場合、複数の解説で共通して勧められているのが「年1回の点検+乖離が出たときだけ調整」という組み合わせです。日付で点検の機会を確保しつつ、実際に売買するかどうかは乖離の大きさで判断する形になります。
年1回で足りるのは、頻繁に直すほど良いわけではないからです。調整のたびに売買コストがかかり、課税口座なら売却益に税金が発生します。小さなずれまで律儀に直すと、その手間とコストが積み上がるだけで、リスク管理としての効果はほとんど変わりません。
相場が短期間で大きく動いたとき、まとまった資金を入金したとき、退職や住宅購入など生活の前提が変わったときは、年1回の予定日を待たずに比率を確認したほうが実態に合います。逆に言えば、そうした事情がない年は本当に1回で構いません。
手順1:現状の比率をどう出す?
最初にやるのは、いま持っているものを資産クラスごとに集計して、割合を出すことです。基準日を1日決めて、その日の評価額で揃えます。日をまたぐと相場が動いて数字が噛み合わなくなるためです。
- 評価額を書き出す証券口座の残高照会画面から、保有している投資信託・ETF・個別株の評価額をすべて書き出します。複数の金融機関を使っているなら全部合算します。
- 資産クラスごとにまとめる各商品がどの資産クラスに当たるかを確認してグループ分けします。判断に迷う場合は、投資信託の「月次レポート」や「交付目論見書」に投資対象が明記されています。
- 合計で割って比率を出すクラスごとの合計額 ÷ 全体の合計額 × 100 で、%を算出します。
例として、目標を「国内株式30%・外国株式30%・国内債券20%・外国債券20%」と決めていた人が、1年後に集計したところ次のようになっていたとします。
| 資産クラス | 評価額 | 現状比率 | 目標比率 | 乖離 |
|---|---|---|---|---|
| 国内株式 | 115万円 | 28.8% | 30% | −1.2pt |
| 外国株式 | 165万円 | 41.3% | 30% | +11.3pt |
| 国内債券 | 60万円 | 15.0% | 20% | −5.0pt |
| 外国債券 | 60万円 | 15.0% | 20% | −5.0pt |
| 合計 | 400万円 | 100% | 100% | — |
上の表の「乖離」は、現状比率から目標比率を引いた差です。単位は%ではなくポイント(pt)で表します。41.3%と30%の差は「11.3ポイント」であって「11.3%」ではありません。ここを%と書くと、後で「目標比率の11.3%分」なのか「11.3ポイント分」なのか分からなくなります。
手順2:どれくらいずれたら直す?
乖離の許容幅について、公的機関が定めた統一基準はありません。実務では複数の目安が紹介されています。
| 考え方 | 目安 | 性格 |
|---|---|---|
| こまめに戻す | 5〜10ポイント程度の乖離で検討 | 目標配分に忠実。調整回数は増える |
| 大きく構える | 15〜20ポイント程度の乖離で検討 | 売買コストと手間を抑える。ずれは大きめに許容 |
どちらが正しいというものではなく、自分の運用規模と手間の許容度で決める性質のものです。金額が小さいうちは売買コストの比重が相対的に重くなるため、幅を広めに取るほうが合理的なことが多くなります。
先ほどの数値例に5ポイントを許容幅として当てはめると、対象になるのは外国株式(+11.3pt)、国内債券(−5.0pt)、外国債券(−5.0pt)の3つです。国内株式は−1.2ptなので、今回は触りません。ずれた資産すべてを毎回きっちり揃える必要はなく、幅を超えたものだけを動かせば十分です。
許容幅そのものを見直すのは構いません。ただし変えるタイミングが重要で、比率を見た後に「今回は動かしたくないから幅を広げよう」と決めるのは本末転倒です。それをやると、ルールが判断を助ける仕組みではなく、判断を正当化する道具になってしまいます。見直すなら、点検前か、生活状況が変わったときに行います。
手順3:戻し方は売買だけじゃない
比率を戻す方法は2通りあります。性格がかなり違うので、順に見ていきます。
方法A:売って買い直す(売買によるリバランス)
増えすぎた資産を売り、その資金で足りない資産を買い増します。1回で目標比率に到達できるのが利点です。
先ほどの400万円の例で、目標比率ちょうどに戻す場合の金額を計算してみます。目標額は、全体400万円に目標比率を掛けたものです。
| 資産クラス | 現在 | 目標額 | 必要な売買 |
|---|---|---|---|
| 国内株式 | 115万円 | 120万円 | 5万円 買い増し |
| 外国株式 | 165万円 | 120万円 | 45万円 売却 |
| 国内債券 | 60万円 | 80万円 | 20万円 買い増し |
| 外国債券 | 60万円 | 80万円 | 20万円 買い増し |
上の表のように、売却45万円と買い増し45万円で釣り合います。全体の合計額は変わらず、中身の配分だけが入れ替わる形です。
SBI証券・楽天証券とも投資信託の買付手数料は原則無料(ノーロード中心)ですが、解約やスイッチング(乗換)の際には、ファンドによって信託財産留保額(解約時にファンドへ差し引かれる、いわば「途中で抜けるときの精算金」)などのコストがかかる場合があります。加えて課税口座での売却益には税金がかかり、NISA口座で売却した場合は、その年の非課税枠の使い方に影響します。「手数料が無料だからコストゼロ」ではない点に注意してください。
方法B:積立の配分だけ変える(ノーセルリバランス)
売却をせず、これから積み立てる分の配分を調整して、時間をかけて目標比率へ近づける方法です。「ノーセルリバランス」と呼ばれます。
先ほどの例で、毎月5万円を4クラスに均等(各1.25万円)で積み立てていたとします。これを次のように振り替えます。
- 増えすぎたクラスへの積立を止めるか減らす外国株式への1.25万円をいったん0円にします。
- 不足しているクラスへ回す浮いた1.25万円を、国内債券と外国債券へ振り分けます(例: 各6,250円ずつ上乗せ)。
- 次の点検日まで続けるこの配分のまま1年積み立てると、外国債券・国内債券にそれぞれ約22.5万円が追加で入り、比率のずれが縮まります。
配分変更(新規購入分の配分だけを変えること)は、追加コストなしで行えるケースが一般的です。売らないので、課税口座の含み益に税金が発生することもありません。
一方で、目標比率に届くまでに時間がかかります。ずれが小さいうちなら方法Bで十分間に合いますが、上の例のように11ポイント開いていると、積立だけで埋めるには年単位の時間が必要です。ずれが小さければ積立配分の変更、大きければ売買と、乖離の幅で使い分けるのが現実的です。
やるときに間違えやすいところは?
感覚として抵抗が出るのは自然です。ただ、リバランスは相場の先行きを当てにいく作業ではありません。増えたものを売るのは「これから下がると読んだから」ではなく、「その資産の比率が自分の決めた枠を超えたから」です。判断の根拠が相場予想ではなく比率にあるという点が、リバランスと売買判断の決定的な違いです。
だからこそ、今が上昇局面か下落局面かによってやり方を変える必要はありません。相場の見通しは強気にも弱気にも変わりますが、比率のルールはどちらの局面でも同じように機能します。
- 複数の金融機関の口座をすべて合算して比率を出したか(片方だけ見ると実態とずれる)
- 企業型DCやiDeCoの資産も含めたか(含めないと債券比率を過小評価しやすい)
- 生活防衛資金として置いている現金を、投資資産の比率計算に混ぜていないか
- 売却するファンドに信託財産留保額がかかるか、目論見書で確認したか
- 課税口座での売却なら、その年の損益通算の状況を把握しているか
特に見落とされやすいのが2番目です。iDeCoや企業型DCの中で債券型の商品を持っている場合、証券口座だけを見て「債券が足りない」と判断すると、実際には足りているのに買い増してしまいます。比率は運用資産全体で1つと考えます。
記録を残しておくと翌年が楽になる
点検が終わったら、実行した内容を短く残しておきます。次の年、同じ作業を最初から組み立て直さずに済みます。
- 基準日(何月何日時点の評価額か)
- 各クラスの評価額と比率
- 目標比率と、そのときの許容幅
- 実行した調整(売買したか、積立配分を変えたか、何もしなかったか)
- 何もしなかった場合、その理由(乖離が幅の内側だった、など)
「今年は何もしなかった」も立派な記録です。むしろ、幅の内側だったから動かさなかったという判断が書き残されていると、翌年に「去年はルール通りに我慢できた」という確認になります。表計算ソフトのシート1枚で足ります。
投資は自己責任であり、元本が保証されるものではありません。本記事は資産配分の管理手法を説明した教育目的の内容であり、特定の商品・銘柄の推奨や投資助言ではありません。リバランスを行っても損失を回避できるわけではなく、税制・手数料の取り扱いはご利用の金融機関や商品によって異なります。実行前にご自身で目論見書・約款をご確認ください。
よくある質問
リバランスはいつやるのが良いですか?
年1回の点検を固定日に設けたうえで、目標比率からのずれが自分で決めた許容幅を超えたときだけ実行する方法が広く勧められています。頻度を増やしても効果が大きく変わるわけではなく、売買コストと課税の負担だけが増えます。相場が短期間で大きく動いたときや、まとまった入金・生活環境の変化があったときは、予定日を待たずに比率を確認します。
どれくらいずれたらリバランスすべきですか?
公的な統一基準はありませんが、目標比率から5〜10ポイント程度ずれたら検討という目安と、15〜20ポイント程度で検討という目安の両方が解説されています。運用金額が小さいうちは売買コストの比重が相対的に重くなるため、幅を広めに取るほうが合理的なことが多くなります。許容幅は点検前に決めておき、比率を見た後で都合よく変えないことが重要です。
売らずにリバランスする方法はありますか?
あります。新規に積み立てる分の配分だけを変え、比率が超過しているクラスへの積立を減らし、不足しているクラスへ回す「ノーセルリバランス」という方法です。配分変更は追加コストなしで行えるケースが一般的で、売却しないため課税口座での売却益への課税も発生しません。ただし目標比率に近づくまでに時間がかかるため、ずれが大きい場合は売買との併用が現実的です。
iDeCoや企業型DCの資産もリバランスの計算に含めますか?
含めます。比率は運用資産全体で1つとして考えるため、証券口座だけを見て判断すると実態とずれます。特にiDeCoや企業型DCの中で債券型の商品を保有している場合、それを除いて計算すると債券比率を過小に見積もり、不要な買い増しをしてしまいます。一方、生活防衛資金として確保している現金は投資資産ではないため、比率の計算には含めないのが一般的です。
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