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貸株、金利につられる前に知りたい3つの落とし穴

2026年7月31日|いろは堂投資編集部
夕焼けの海を背景に複数のモニターに株価チャートを表示した室内デスク

画像出典: sergeitokmakov / Pixabay

この記事の要点
貸株サービスは保有株を証券会社に貸して年0.1〜0.2%程度の金利を受け取る仕組みですが、株式の名義が証券会社に移るため副作用があります。権利確定日をまたぐと配当は「配当金相当額」となり、給与などと合算して課税される雑所得の扱いになって配当控除も譲渡損との損益通算も使えず、優待の長期保有認定が途切れる恐れがあり、貸出中の株は投資者保護基金の補償対象外です。多くの証券会社にある「配当・優待優先(自動)コース」を選ぶと、権利日前後だけ株が返却され、税制と優待の不利を避けられます。
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保有株を置いておくだけで金利がもらえるの? だったら全部オンにしておけばいいのでは

証券口座の設定画面にある「貸株サービス」は、たしかに保有株を貸し出すだけで金利が入ります。持っているだけの株にわずかでも利回りが乗るなら、オンにしない理由はなさそうに見えます。

ただ、貸株は株式の名義が自分から証券会社へ移る取引です。名義が移ると、配当の受け取り方も、優待の保有年数のカウントも、破綻時の保護のされ方も変わります。金利の数字だけを見て設定すると、あとから「そこは想定していなかった」となる部分が出てきます。

貸株サービスとは何をしている仕組み?

貸株サービスは、自分が保有している株式を証券会社に貸し出し、その対価として貸株金利(賃借料)を受け取る仕組みです。銀行にお金を預けて利息を受け取るのに近い形ですが、決定的に違うのは、貸している間株式の名義が証券会社(あるいはその先の借り手)に移る点です。

金利の水準は年0.1〜0.2%程度が一般的です。ただし、空売りなどで株を借りたい需要が集中している銘柄では、株の借り手が貸し手に支払う上乗せの料金である品貸料が高騰し、金利が跳ね上がることもあります。逆に言えば、高い金利が付いている銘柄は、それだけ「借りたい人がいる」状況にあるということです。

ここで押さえておきたいのは、金利は年率で表示されるという点です。100万円分の株を年0.1%で1年間貸し続けても、受け取れるのは1,000円(税引前)です。100万円の株の値動きは1日で数千円動くこともありますから、貸株金利は株価の変動に比べればごく小さいという感覚を先に持っておくと、次に説明する副作用との比較がしやすくなります。

貸株を設定すると起きること
  • 株式の名義が自分から証券会社へ移る
  • 貸出期間に応じて貸株金利が日割りで付く
  • 株の売買自体はいつでも自由にできる(売れば貸出も終了)
  • 名義が移ることに紐づく権利・保護が変わる

注意点1: 配当が「配当金相当額」になると税制が変わる

貸株の弱点として最初に挙がるのが、配当の扱いです。権利確定日を貸し出したままでまたぐと、株式の名義は証券会社にあるため、企業からの配当はそちらへ支払われます。投資家の手元には代わりに「配当金相当額」が証券会社から支払われます。

通常の配当金配当金相当額(貸株中)
所得区分配当所得雑所得
課税方式申告分離課税を選択可総合課税
配当控除対象対象外
株式の譲渡損との損益通算できるできない
確定申告源泉徴収ありの特定口座なら原則不要原則必要

SBI証券の公表内容をもとに作成

入ってくる金額はほぼ同じでも、税制上の分類が別物になっています。通常の配当金で使える申告分離課税(他の所得と切り離して一定税率で課税する方式)や、配当にかかる二重課税を調整する配当控除は、雑所得(給与など他の所得と合算して税率が決まる総合課税の所得区分)である配当金相当額では使えません。株式の譲渡損との損益通算も対象外です。原則として確定申告も必要になります(給与所得者で給与以外の所得が20万円以下などの場合は申告不要になり得ます)。

とくに影響が出やすいのが、その年に株式の売買で損失を出している人です。通常の配当金なら譲渡損とぶつけて税負担を圧縮できますが、配当金相当額はこの相殺の対象外になります。年0.1%の金利のために、相殺できたはずの税額を失う——という逆転が起こり得ます。

「配当・優待優先(自動)コース」で回避できる

多くの証券会社は、貸株の設定にコースを用意しています。配当・優待優先(自動)コースを選ぶと、権利確定日の前に自動で株式が返却され、名義が自分に戻った状態で権利日をまたぎます。配当は通常の配当所得として受け取れ、優待の権利も確保できます。

その分、権利日近辺は貸出が止まるので貸株金利はわずかに減りますが、失う金利は日割りの数日分です。税制上の不利を避けるほうが、ほぼ確実に有利になります。貸株を使うなら、まずこのコース設定を確認するところから始めてください。

注意点2: 優待の長期保有認定が途切れることがある

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株はずっと持ち続けているのに、長期保有の判定に入らないことがある?

株主優待の権利は、権利確定日時点の株主名簿に自分の名前が載っているかで決まります。貸株中は名義が証券会社にあるため、名簿には自分の名前が載りません。優待優先コースを設定していなければ、優待そのものを取りこぼします。

さらに厄介なのが、保有年数で優待内容がグレードアップする長期保有優待です。この判定は、株主名簿上で同じ名義が継続して記録されているかで行われます。貸株によって証券会社名義に切り替わる期間が挟まると、連続保有の記録が途切れ、長期保有認定がリセットされる恐れがあります。手元では何年も持ち続けているつもりでも、企業側から見た記録は0年に戻ってしまう、という食い違いが起きるわけです。

企業ごとに判定方法は異なるため、「必ずリセットされる」と断定はできません。ただ、リセットされる可能性を抱えたまま数年分の実績を積むのは、得られる金利に対してリスクが釣り合いません。

貸株が向いていないケース

長期保有優待を狙って何年も持ち続けている銘柄、その年に譲渡損が出ていて配当と相殺したい状況、優待そのものを目的に保有している銘柄。これらは、年0.1〜0.2%の金利で得られる金額よりも、失うものが上回りやすい組み合わせです。判断に迷うなら、貸株はオフのままにしておくほうが単純です。

注意点3: 貸出中の株は投資者保護基金の対象外

通常、証券会社に預けている株式は分別管理(証券会社の自己資産と顧客の資産を分けて管理すること)が義務づけられており、万一証券会社が破綻しても投資家の資産は保全されます。それでも返還されない場合に備えて、投資者保護基金による補償の枠組みもあります。

ところが、貸株中の株式はすでに証券会社へ貸し出された状態にあり、投資家の預かり資産ではありません。したがって投資者保護基金の補償対象外となります。証券会社が経営破綻した場合、貸し出した株式が返ってこないリスクを、投資家が直接負うことになります。

現実にこの事態が起きる確率は高くありません。しかし、リスクの性質が他の2つと違う点は意識しておく価値があります。配当の税制も優待の認定も、金額として見積もれる損失です。対して信用リスクは、めったに起きない代わりに起きたときの損失が保有株全額に及ぶタイプのリスクです。年0.1%の対価として引き受ける対象としては、性質が釣り合っているかを一度考えておきたいところです。

貸株を使うかどうかの判断手順

ここまでの内容を、実際の設定作業の順番に落とすと次のようになります。

  1. 保有銘柄を3つに仕分ける「優待狙い(特に長期保有優待あり)」「配当狙い」「値上がり狙いで無配・無優待」に分けます。貸株の副作用は前2者に集中し、3つ目にはほとんど当たりません。
  2. 今年の譲渡損益を確認する損失が出ている年は、配当と譲渡損の相殺が効きます。配当金相当額ではこれが使えないため、配当銘柄の貸株は見送るか、優待優先コースを必ず設定します。
  3. コース設定を先に決める貸株を使うなら「配当・優待優先(自動)コース」を選択してから貸出をオンにします。オンにしてから設定を直そうとすると、その間に権利確定日をまたぐ事故が起こります。
  4. 金利の実額を計算する「保有額 × 金利 × 貸出日数 ÷ 365」で、実際に受け取れる金額を出します。数百円と分かった時点で、上の副作用と釣り合うかの判断がはっきりします。
  5. 設定後に一度だけ明細で確認する最初の権利確定日を過ぎたら、入金が「配当金」か「配当金相当額」かを取引報告書で確認します。ここで想定通りなら、設定は正しく効いています。
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全部オンにするか全部オフにするか、の二択じゃなくてよかった

貸株は「使う/使わない」の全体設定ではなく、銘柄ごとに向き不向きが分かれる仕組みです。無配・無優待で長期保有する予定の銘柄なら副作用はほぼなく、金利がそのまま上乗せになります。逆に長期保有優待を積み上げている銘柄は、貸さないという判断のほうが素直です。

金利という分かりやすい数字が先に目に入る設計になっているぶん、失うものの側を自分で数えておくと判断がぶれません。貸株は使いこなせば便利な機能ですが、便利さの中身を知ってから設定しても遅くはありません。

※本記事は貸株サービスの仕組みと制度の解説を目的としたもので、特定の銘柄や商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。株式投資に元本保証はなく、損失が生じる可能性があります。税制の取り扱いは個人の状況により異なるため、具体的な申告については税務署または税理士にご確認ください。

よくある質問

貸株サービスの金利はどのくらいもらえますか?

貸株金利の相場は年0.1〜0.2%程度が一般的です。100万円分の株式を年0.1%で1年間貸し出した場合、受け取れるのは税引前で1,000円程度になります。ただし空売り需要が集中し、借り手が支払う上乗せ料金である品貸料が高騰している銘柄では、金利が大きく上がることもあります。

貸株中でも配当金はもらえますか?

金額としてはほぼ同額を受け取れますが、名目が「配当金相当額」に変わります。これは税制上、給与など他の所得と合算して課税される雑所得として扱われ、配当控除(配当にかかる二重課税を調整する制度)の対象外となり、株式の譲渡損との損益通算もできません。原則として確定申告も必要です。証券会社の「配当・優待優先(自動)コース」を設定すれば、権利確定日に自動で株式が返却され、通常の配当金として受け取れます。

貸株をすると株主優待の長期保有認定はどうなりますか?

長期保有優待は株主名簿上の名義が継続して記録されているかで判定されるため、貸株によって証券会社名義に切り替わる期間があると、連続保有の記録が途切れて長期保有認定がリセットされる恐れがあります。判定方法は企業ごとに異なりますが、長期保有優待を積み上げている銘柄では貸株を設定しないか、優待優先コースを利用するのが安全です。

証券会社が破綻したら貸株中の株式はどうなりますか?

貸株中の株式は証券会社に貸し出された状態にあり、投資家の預かり資産ではないため、投資者保護基金による補償の対象外となります。証券会社が経営破綻した場合、貸し出した株式が返還されないリスクがあります。通常の預かり株式は、証券会社の自己資産と分けて管理する分別管理と投資者保護基金で守られる点が大きな違いです。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。