まとめノート、意味あるかを分ける3条件
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まとめノートが無駄になるのは「書き写している」ときです。効果が見込めるのは、自分の言葉で要約している・図を含んでいる・作った後にノートを見ずに再現している、の3条件がそろう場合です。この3条件を満たすノートは1テーマ10分で作れます。
ノート作りが無駄かどうかは、作ったかどうかでは決まりません。同じ「まとめノート」という言葉で、まったく別の作業が2種類呼ばれているのが混乱のもとです。
ひとつは、教科書やテキストの記述を読みやすく書き直す作業。もうひとつは、読んだ内容を自分の頭で圧縮して置き直す作業。前者は3時間かかって記憶に残らず、後者は10分で残ります。かかる時間と効果が、きれいに逆になっているところが厄介なんです。
正直なところ、前者のほうが気持ちよく進みます。手が止まらないし、ページも埋まる。勉強した感触が一番強く出るのが、実は一番効果の薄いやり方だというのが、まとめノート問題の本質です。
まとめノートが「意味ない」と言われるのはなぜ?
理由は単純で、書き写しは、内容を理解しないままでも最後まで完遂できてしまうからです。目で文字を拾い、手で同じ文字を並べる。この作業は脳への処理負荷がほとんどかからず、そのため学習効果も低いと考えられています。板書やテキストをそのままコピーする勉強法が効果的でないとされるのは、この点にあります。
ここで一度、前提をそろえておきます。試験勉強の目的は「書くこと」ではなく「覚える・理解すること」です。当たり前に聞こえますが、ノートがきれいに仕上がっていくと、目的がいつのまにか「ページを完成させること」へすり替わります。完成度の高いノートほど、目的のすり替えに気づきにくいのが落とし穴です。
逆に言えば、脳に処理負荷がかかる書き方をしていれば、ノートは効きます。負荷とは、苦しさのことではなく「自分で考えないと次の一行が書けない状態」のことです。
作る価値があるまとめノートの3条件とは?
学習科学の知見から、まとめノートが機能する条件は次の3つに整理できます。3つのうち1つでも欠けると、時間に対する見返りが急に悪くなります。
- 自分の言葉で要約している(原文の言い回しをなぞらず、圧縮して言い直している)
- 図やイメージを含んでいる(文字だけの塊にしていない)
- 作った後にノートを見ずに再現している(作って終わりにしていない)
1つ目は精緻化(せいちか)と呼ばれる働きです。学習内容を自分の言葉で説明し、すでに持っている知識や経験と関連づけること、と定義されます。認知心理学者のJohn R. Andersonは1983年に、精緻化は記憶を増やす最も強力な方法のひとつだと主張したとされています。要約するとき、人は「どれが幹でどれが枝か」を判断せざるを得ません。この判断そのものが精緻化です。
短い字数に縛るとこの効果は強く出ます。浅田すぐる氏の『すべての知識を「20字」にまとめる 紙1枚!独学法』は、20字という制約の中で考え抜く習慣がつく点を主張しています。20字は、原文の言い回しでは絶対に収まらない長さです。だから自分の言葉に翻訳するしかなくなる。制約が思考を強制する構図になっています。
2つ目の図については、文字のみのノートを見た生徒の記憶率が約10%だったのに対し、図を含むノートの生徒は約65%を記憶していたという研究結果が紹介されています(John Medina氏の研究として紹介されているもので、原著は未確認のため参考値として扱ってください)。数字の大小はさておき、矢印1本を引くだけでも「AがBを引き起こす」という関係を自分で決める必要が出てきます。図は装飾ではなく、関係を確定させる作業です。
3つ目が、実は一番抜けます。アクティブリコール(能動的想起)は、参考書やノートを見ずに学習内容を白紙に書き出すなど、能動的に思い出す学習法です。思い出す行為自体が記憶定着を促すことは「テスト効果(Testing effect)」として研究で示されています。ノートは思い出すための的であって、眺めるための作品ではありません。
試験まで残り1週間を切っている、過去問をまだ1度も解いていない、テキストがすでによく整理されている──このどれかに当てはまるなら、ノート作りは後回しでかまいません。特に最後のケースでは、市販テキストの要約は「よくできた要約をもう一度要約する」作業になりがちで、得るものが小さくなります。その時間は過去問を解いて、間違えた箇所だけをノートにする方が効きます。
10分で作るまとめノートの型は?
ここからは実際の手順です。1テーマにつき10分、ノート1ページ以内で切ります。時間を先に決めるのは、清書に流れる余地をなくすためです。タイマーを使ってください。
- 1分:テキストを閉じる直前に読んだ範囲について、開いたまま書き始めないこと。開いていると、必ず書き写しになります。
- 3分:20字の見出しを書く「この範囲は結局なんの話か」を20字前後の1文で書きます。書けなければ理解できていない箇所なので、そこだけテキストに戻ります。この戻りが、範囲全体を読み返すより早く弱点を教えてくれます。
- 3分:関係を図にする登場する要素を3〜5個だけ書き出し、矢印でつなぎます。時系列なら横矢印、因果なら縦矢印、対立なら左右並置。きれいさは不要で、自分が読めれば十分です。
- 2分:質問を3つ書く「〜とは何か」「なぜ〜になるのか」「〜と〜の違いは」の形で、そのページから出せる問いを3つ、答えを書かずに残します。これが次回のテスト問題になります。
- 1分:日付と出典を書くテキストの何ページから作ったかを書いておきます。後で確認したくなったときに探し直す時間がゼロになります。
翌日以降は、このノートを開く前に白紙に3つの質問の答えを書き出します。書けたらノートで答え合わせ。書けなかった質問には印を付け、印が2つ溜まった項目だけテキストへ戻ります。作る10分より、この再現の3分の方が記憶には効いています。
絵の上手さは関係ありません。求められているのは、四角と矢印だけの図です。「原因→結果」「前提→例外」の2種類が描ければ、ほとんどの学習範囲は表現できます。うまく描けないときは、そもそも要素同士の関係を自分が把握できていない合図なので、それ自体が有益な発見になります。
清書型と10分型は何が違う?
| 清書型(従来のまとめノート) | 10分型 | |
|---|---|---|
| 手元の状態 | テキストを開いたまま書く | テキストを閉じて書く |
| 書く量 | 範囲のほぼ全て | 20字の見出し+図+質問3つ |
| 1テーマの所要 | 60〜180分 | 10分 |
| 作った後 | 読み返す(眺める) | 見ずに再現する |
| 途中で気づくこと | ほぼない(手が止まらない) | 書けない箇所=弱点がその場でわかる |
決定的な差は最後の行です。清書型は最後まで気持ちよく進むぶん、どこがわかっていないかを教えてくれません。10分型は3分目で手が止まります。この「止まる」が情報であって、止まらない勉強法は、進んだ実感と引き換えに弱点の在りかを隠してしまいます。
使える時間が違っても同じやり方でいい?
10分型は、平日に30分しか取れない社会人にも、1日に数時間を勉強へ充てられる学生にも、そのまま使えます。1テーマ10分という単位が変わらないからです。違ってくるのは、1日に何本回すかと、余った時間を何に使うかだけです。
- 1日30分しか取れない場合:新規のノートは1本(10分)まで。残り20分は、過去に作ったノートの質問への白紙再現に充てます。作る量を増やすより、既存のノートを何度も的にする方が伸びます。
- 1日2〜3時間取れる場合:ノート作りは連続で3〜4本(30〜40分)までに抑え、残りは問題演習へ回します。時間があるからとノート作りを2時間続けても、増えるのはページ数だけです。可処分時間が多い人ほど、清書型に戻る誘惑が強くなる点に注意してください。
学生の場合、まとまった時間が取れる代わりに、扱う範囲そのものが広くなりがちです。全範囲を10分型でカバーしようとすると本数が膨らむので、過去問や小テストで一度間違えた箇所に限定してノート化すると、本数が現実的な数に収まります。
すでに作った分厚いノートはどうすればいい?
捨てる必要はありません。質問を後から書き足すだけで、眺める作品から思い出す的へ変わります。各ページの余白に「このページから出る問いを3つ」書き込んでいく作業なら、1ページあたり2分ほどで終わります。
その際、全ページを処理しようとしないでください。直近の試験範囲や、模試で落とした分野のページだけで十分です。作り直しは不要で、使い方だけを変えるのが一番安く済みます。
費やした時間の価値は、これから的として何回使うかで後から決まります。今日1ページ分だけ、余白に質問を3つ書き足すところから始めれば十分です。
よくある質問
まとめノートは本当に意味がないのですか?
書き写し・清書に終始するまとめノートは学習効果が低いとされています。単純な書き写しは内容を理解しないままでも完遂でき、脳への処理負荷がほとんどかからないためです。一方、自分の言葉で要約し、図を含み、作った後にノートを見ずに再現するという3条件を満たすノートは、精緻化とテスト効果の両方が働くため効果が見込めます。
まとめノートは1テーマあたりどれくらいの時間で作るべきですか?
1テーマ10分、ノート1ページ以内を目安にします。内訳は、テキストを閉じるのに1分、20字前後の見出しを書くのに3分、要素3〜5個を矢印でつなぐ図に3分、質問を3つ書くのに2分、日付と出典に1分です。時間を先に区切ることで、書き写しや清書へ流れるのを防げます。
アクティブリコールとは何ですか?
アクティブリコール(能動的想起)とは、参考書やノートを見ずに学習内容を白紙に書き出すなど、能動的に思い出す学習法です。思い出す行為自体が記憶の定着を促すことが「テスト効果(Testing effect)」として研究で示されています。まとめノートに質問を書いておき、答えを見ずに白紙へ再現するのがこの学習法の実践形です。
すでに作った分厚いまとめノートは作り直すべきですか?
作り直す必要はありません。各ページの余白に、そのページから出せる質問を3つ書き足すだけで、眺めるためのノートから思い出すための教材に変わります。1ページあたり2分程度で処理でき、直近の試験範囲や間違えた分野のページに限定すれば負担も小さく済みます。
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