読書メモの取り方、3行だけ残せば忘れない
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
読んだ本を忘れるのは記憶力の問題ではなく、記録が「線を引いただけ」で終わっているためです。1冊につき「事実(本に書いてあったこと)」「気づき(自分の状況とどう違うか)」「行動(いつ何をするか)」の3行だけ残すと、内容が使える形で定着します。所要時間は1冊5分、道具は手帳でもスマホのメモアプリでも構いません。
本の内容を忘れるのは、記憶力ではなく記録の形の問題です。線を引く、付箋を貼る、要約を書く。どれも読んでいる最中は前に進んでいる感じがしますが、後から見返したときに「で、自分は何をすればいいんだっけ」が書かれていないので、行動に変換されないまま消えていきます。
正直なところ、丁寧な読書ノートを何冊も続けられる人はごく少数です。1冊読むたびにA4一枚を埋める前提だと、3冊目あたりで手が止まります。だから量を減らします。1冊につき、残すのは3行だけ。事実・気づき・行動の3つです。
この記事の型は5分で書けて、読み返しに10秒しかかかりません。仕事の資料づくりでも、資格の勉強でも、レポートでも同じように使えます。
読書メモの取り方は、なぜ3行でいいのか?
読書メモが続かない最大の理由は、書く量が多いことではなく、書いた後に使う場面が用意されていないことです。要約を10行書いても、読み返す予定がなければ書いた時点で役目が終わってしまいます。
逆に言えば、「後で必ず見る1行」が入っていれば、メモは短くて構いません。手帳術の分野では、読んだ日付・書名・評価と、実践すると決めた具体的なアクションを書き残す「3行ノート」という方法が紹介されています。学び→行動→成果のつながりを目に見える形にすることが狙いで、紙のノートでもNotionやEvernoteのようなデジタルツールでも実践できるとされています(一般社団法人日本手帳マネージメント協会代表理事・高田晃氏考案/STUDY HACKER)。
ここで紹介する「事実・気づき・行動」の3行は、この考え方を土台にした構成です。ポイントは、3行それぞれの役割がはっきり分かれていることにあります。
- 事実=本に書いてあったこと。自分の解釈を混ぜない
- 気づき=それを読んで自分の状況について思ったこと
- 行動=いつ、何をするか。日付か場面を必ず入れる
この3つを分けるのは、混ざると再利用できなくなるからです。「事実」と「気づき」が混ざったメモは、後から引用しようとしたときに、どこまでが本の主張でどこからが自分の考えか分からなくなります。仕事の資料やレポートに使うつもりなら、この線引きは最初から引いておいたほうが早いです。
3行読書メモの書き方は?
手順は3つです。読み終わってから机に向かう必要はなく、電車を降りる前の数分で書けます。
- 読む前に「知りたいこと」を1つ決める「営業資料の構成をうまくしたい」「Pythonの例外処理の考え方を知りたい」のように、目的を一言で決めてから開きます。目的があると、線を引く場所が3分の1に減ります。
- 読みながら候補に印だけ付けるこの段階では書きません。ページの角を折るか、付箋を貼るだけ。読書のリズムを止めないことを優先します。
- 読み終えたら、印の中から1組だけ選んで3行書く印が20か所あっても、書くのは1組です。「一番目的に効いたのはどれか」で選びます。
3行目の「行動」には、必ず「いつ」を入れます。「意識する」「気をつける」は行動ではありません。「明日の定例で最初に結論から話す」「今週の水曜、企画書の1枚目を目的だけの構成に書き直す」のように、予定表に書ける粒度まで落とします。いつ行動するかをその場で決めておくことが、実際に動くうえで効くとされています。
実際に書くとこうなる(ビジネス書の例)
| 事実 | 資料は「結論→根拠→詳細」の順で並べると、読み手が途中で離脱しにくい |
|---|---|
| 気づき | 自分の企画書は背景説明から始まっていて、結論が3枚目にある |
| 行動 | 水曜午前、来月分の企画書の1枚目を結論だけのページに差し替える |
勉強・試験の本ならこう書く
| 事実 | 減価償却の定額法は、取得価額÷耐用年数で毎年同額を費用にする |
|---|---|
| 気づき | 定率法と混ざるのは、計算式ではなく「何を基準に割るか」を覚えていないから |
| 行動 | 土曜の朝、定額法と定率法を1枚に並べて書き出し、翌週の演習前に見る |
気づきの行が「自分の場合はこうだった」という形になっているのが分かるでしょうか。ここが空欄だと、ただの要約になって記憶に残りません。本の内容と自分の現状のズレを言葉にした瞬間に、はじめて「自分の話」になります。
紙とスマホ、どちらで書くのがいい?
結論から言うと、読み返す場所に置けるほうを選べば正解です。判断材料は次のとおりです。
| 紙の手帳・ノート | スマホのメモアプリ | |
|---|---|---|
| 書く速さ | やや遅いが、書きながら考えがまとまる | 速い。移動中でも書ける |
| 探しやすさ | 冊数が増えると探しにくい | 書名や語句で検索できる |
| 向く人 | 手を動かすと定着する人、冊数が月数冊の人 | 月に何冊も読む人、仕事の資料に流用したい人 |
迷うならスマホのメモアプリに1つファイルを作り、そこに追記していく形が無難です。3行×20冊でも画面数枚に収まるので、月末にまとめて眺めるのが簡単になります。紙を選ぶ場合は、専用ノートではなくいつも持ち歩く手帳の後ろ数ページに集約すると続きます。持ち物が増えないことが継続の条件です。
見返すタイミングは2つ用意しておけば十分です。1つは週の初め。行動の行だけを上から流し読みして、その週にやると決めたものを予定に入れます。もう1つは必要になったとき。企画書を書く直前、面談の前、試験の直前に、関係しそうな行だけ拾います。全部を毎回読み返す必要はありません。
3行に絞ると、大事なことを取りこぼさない?
取りこぼします。ただし、それは問題になりません。
1冊から10個の学びを書き取っても、実行できるのはせいぜい1つです。残りの9個は「知っているが使っていないこと」として積み上がり、次に本を開くときの心理的な重さになります。3行に絞ることは、記録の精度を下げる代わりに実行率を上げる交換だと考えてください。
どうしても捨てがたい情報がある場合は、行動の行の下に「保留」として1〜2語だけ足しておきます。ページ番号だけでも構いません。本さえ手元にあれば、後から引き直せます。読書メモの役割は本の中身を丸ごと持ち歩くことではなく、本を開き直すべきタイミングを自分に知らせることです。
小説やエッセイのように、読む体験そのものが目的の本には向きません。「行動」の行が無理やりになり、読書が作業になります。物語系は何も書かずに読むほうが得るものが多いです。
また、体系的に学ぶ必要がある教科書・専門書も、この型だけでは足りません。全体の構造を押さえる必要があるので、章立てを写した目次ノートを別に作り、3行メモは「その日進んだ範囲」単位で使い分けてください。
忙しくて読む時間がない場合はどうする?
ここは、置かれている状況によって答えが変わります。
平日に自由時間が1〜2時間しか取れない社会人の場合は、読む量ではなく書く量から先に決めるのが現実的です。「今月は3冊読む」ではなく「今月は3行メモを3枚作る」と決めます。読了は条件にしません。半分しか読んでいなくても、目的に対する答えが見つかった時点で3行書いて終わりにしていいことにします。読み切ることが目的ではないからです。
一方、学生や、長期休暇・転職の合間などでまとまった時間が取れる人は、同じテーマの本を3冊並行して読み、3行メモを3枚並べる使い方ができます。同じ主張が3冊に共通していればそれは定説に近く、1冊にしか出てこなければ著者独自の見解だと判断できます。可処分時間がある人にしかできない読み方で、テーマの地図を作るのに効きます。
- 今読みかけの本を1冊決める
- メモアプリか手帳に「事実/気づき/行動」の3行を用意する
- 行動の行に、日付か場面を1つ書き込む
3行なら5分もかかりません。完璧なノートを作ろうとして1冊目で止まるより、雑な3行が20冊分たまっているほうが、半年後の自分にとってはるかに役立ちます。
よくある質問
読書メモは読みながら書くべきですか、読み終わってから書くべきですか?
読みながらはページの角を折る・付箋を貼るなど印を付けるだけにとどめ、書くのは読み終わってからにするのがおすすめです。読んでいる途中で文章を書こうとすると読書のリズムが途切れ、結果として1冊にかかる時間が延びて挫折しやすくなります。読了後に印の中から一番目的に効いたものを1つ選び、3行にまとめれば5分程度で終わります。
「事実・気づき・行動」の3行のうち、どれか書けないときはどうすればいいですか?
行動が書けないときは、その本が今の自分の課題と合っていない可能性が高いので、無理に埋めず本を置いて構いません。気づきが書けないときは、事実の行を読み返して「自分の場合は今どうなっているか」を1文足すと出てきます。事実が書けないのは目的を決めずに読み始めた場合が多いため、次に開くときは「何を知りたいか」を一言決めてから読むと解決します。
3行読書メモは紙とアプリのどちらが続きますか?
読み返す場所に置けるほうが続きます。月に何冊も読む人や、メモを仕事の資料に流用したい人は、書名や語句で検索できるスマホのメモアプリが向いています。手を動かすと覚えられる人や読書量が月に数冊の人は紙が向きますが、その場合も専用ノートを新調せず、普段持ち歩く手帳の後ろ数ページに集約すると持ち物が増えず続けやすくなります。
読んだ本の内容を仕事で使えるようにするには、要約を作るべきですか?
要約より、本の主張と自分の現状のズレを1行書くほうが仕事では役立ちます。要約は本の中身を圧縮したもので、読み返しても「知っている情報」の確認にしかならないためです。「本にはこう書いてあった/自分の資料は今こうなっている/いつ何を直す」という3行の形にしておくと、企画書を書く直前や面談の前に、その行だけを拾って使えます。
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