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人材開発支援助成金リスキリング改正、対象外になった研修は

2026年9月15日|いろは堂まなび編集部
木製テーブルに置かれた日本語キーボードのノートパソコンの画面を接写している

画像出典: ぱくたそ

この記事の要点
2026年8月3日、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の支給要領が改正され、全社員向けのAIリテラシー研修や汎用的なプロンプト講座は助成対象外に整理されました。今も対象になるのは、特定の職務に直接必要で、訓練後の業務で具体的に使える実技・演習を含む研修です。適用の基準は研修の実施日ではなく職業訓練実施計画届の提出日で、8月2日までに提出済みの計画は従来基準が適用されます。
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会社の助成金でAIの研修を受けようと思って調べたら、「その内容はもう対象外です」と言われてしまって…

会社の制度を使って学び直したい、と動き出した矢先にこういう返事が返ってくると、正直なところ気持ちが折れます。ただ、これは研修そのものが否定されたわけではなく、助成の対象として認められる研修の線引きが、2026年8月3日に引き直されたということです。

線引きの位置がわかれば、対象から外れた内容を対象になる形に組み替えることもできます。まず「何が変わったのか」から順に見ていきます。

2026年8月3日に何が変わった?

人材開発支援助成金は、会社が雇っている人に職務に関連した知識・技能を身につけさせる訓練(OFF-JT=業務を離れて行う研修)を計画に沿って実施したとき、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。AI・DXの学び直しは主に「事業展開等リスキリング支援コース」が窓口になります。

2026年8月3日、このコースの支給要領が改正されました。柱は2つです。①助成対象外となる訓練の範囲が広がったこと、②eラーニングの受講回数に上限が新設されたこと。どちらも、AI関連の研修を検討していた人に直接ひびく変更です。

まず押さえる3点
  • 適用の基準は研修の実施日ではなく「職業訓練実施計画届の提出日」
  • 8月2日までに計画届を提出済みなら、従来基準が適用される(経過措置)
  • 8月3日以降に提出する計画から、新しい線引きが適用される

ここを取り違えると話が噛み合いません。「10月に受ける研修だから新基準でしょう?」ではなく、その研修の計画届をいつ出したかで、どちらの基準で判定されるかが決まります。社内で以前から準備していた研修なら、8月2日までに提出が済んでいる可能性もあります。担当部署にまず確認する価値があります。

対象外になったAI研修はどんな内容?

今回の改正で対象外と整理されたのは、ひとことで言えば「誰が受けても同じように役立つ」内容の研修です。具体的には次の2つの型が対象外になりました。

  1. 間接的にしか必要でない内容その職業・職務に直接ではなく、間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容。
  2. 職種を問わず共通して必要な内容職業・職務の種類を問わず共通して必要な、一般教養型の内容。概念やリテラシーの理解にとどまる研修もここに含まれます。

この整理により、「全社員向けのAIリテラシー研修」「汎用的なプロンプト講座」は、8月3日以降に提出する計画届からは助成対象外になりました。「生成AIとは何か」「プロンプトの書き方一般」といった、職種を問わない基礎講座がこれにあたります。

AI以外でも同じ線引きが働きます。たとえばSNS関連なら「SNSマーケティングの基礎」「アルゴリズムの考え方」「各プラットフォームの特性理解」のように概念理解で完結する内容は、対象外になりやすいと解説されています。

もともと対象外だったもの(今回も変わらず)

改正前から対象外とされてきた内容もあります。業務に直結しない普通自動車免許の取得訓練、職種を問わず必要なビジネスマナー研修、日常英会話やスピーチ講座など趣味・教養にあたる内容、交通法規などの法定講習。そして労働者が職務上ではなく自分の判断で受講する訓練も対象外です。

「自分で学びたいから」では通らない制度です

この助成金は、会社が職務のために訓練を実施する制度です。個人が「AIを勉強したい」と思って自分で申し込む講座は、内容が良くても対象になりません。個人の学びとして進めるなら、この制度とは切り離して考えたほうが早いです。学生の方が就職前にAIスキルを身につけたい場合も同様で、この助成金は雇用されている労働者が対象のため、在学中は使えません。学割のあるオンライン講座や、大学の授業・キャリアセンターの講座を先に当たるほうが現実的です。

今も助成対象になる研修の見分け方は?

対象として残るのは、特定の職務に直接必要で、訓練が終わったあとの業務で具体的に活用できる知識・技能を扱う研修です。判定の軸は「難しいかどうか」ではなく「その職務に紐づいているかどうか」。ここが今回の改正のいちばんの勘所です。

頭に絵を描きやすいように、同じテーマで並べてみます。SNS研修の例で言えば、プラットフォームの特性を座学で学ぶだけなら概念理解で終わります。一方、自社商品を撮影し、投稿用に編集し、投稿実績を分析して次の施策に活かす——ここまでの一連の実務フローを含む内容なら、職務直結型として対象になりうると整理されています。同じ「SNS研修」でも、扱う範囲が業務の最後まで届いているかで判定が分かれます。

AI研修でも考え方は同じです。カスタマー対応の自動応答文を実際に作る、社内データを分析するためにAIツールを操作する、自社の業務フローにAIを組み込む——こうした特定業務に即した実技・演習を伴う研修は対象になりやすいとされています。逆に、座学で概念を理解して終わる講座は外れやすい。受講後に「何の成果物ができているか」を言えるかどうかが、ひとつの目安になります。

eラーニングの回数制限はどうなった?

もうひとつの変更が、eラーニングの受講回数の上限です。通勤時間や在宅で進められるeラーニングは社会人の学び直しと相性が良く、これまで使い勝手のいい選択肢でした。そこに制限が入りました。

eラーニングの回数ルール
  • 同一の労働者について、コース全体で1年度あたり最大3回まで助成対象になり得る
  • うち、2026年8月3日以降に提出した計画届に基づくeラーニングは1年度1回まで

つまり、「今年はeラーニングで3講座まとめて受けよう」という組み立ては、8月3日以降提出分については成り立ちません。回数が限られる以上、どの講座に1回を使うかを選ぶ必要があります。選ぶ基準は前の章と同じで、自分の職務に直接紐づき、受講後に業務で使う形が具体的に描ける講座から充てるのが筋です。

なお、この助成金はOFF-JTが原則で、訓練時間10時間以上などの要件があります。eラーニングだけで組み立てようとすると要件面でも制約が出るため、集合研修や実技演習と組み合わせる前提で考えたほうが通りやすくなります。

申請前に何を確認すればいい?

ここまでの内容を、実際に確認する順番に並べ直します。上から順に見ていけば、自分が検討している研修が今どの位置にいるかがわかります。

  1. 実技・演習が含まれているか検討中の研修が特定の職種・職務に紐づく実技・演習を含むか確認する。含まなければ対象外のリスクが高い。
  2. 一般論で終わっていないか研修内容が「誰にでも当てはまる」概念説明で完結していないか確認する。該当すれば対象外。
  3. eラーニングの利用回数その労働者が同一年度ですでに何回eラーニング訓練を助成対象として受けているか確認する(8月3日以降提出分は年1回まで)。
  4. 計画届の提出日職業訓練実施計画届の提出日が8月3日以降かどうかを確認する。8月2日以前の提出分は経過措置で従来基準。
  5. 判断がつかなければ事前相談管轄の労働局・ハローワーク、または社会保険労務士に訓練の前に相談する。

手を動かす順番としては、まず1と2を自分で確認したうえで、会社の人事・総務担当に3と4を聞くのが早いです。計画届は訓練を始める前に管轄労働局へ提出する必要があるため、「受けてから申請する」はできません。研修の日程を決める前に相談に入るのが前提になります。

助成率と、対象外の費用

費用がどれくらい戻るのかは、企業規模で変わります。事業展開等リスキリング支援コースの助成の水準は、2026年8月時点の案内で次のとおりです。

企業規模経費助成率賃金助成(1人1時間あたり)
中小企業75%1,000円
大企業60%500円

厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」ほか2026年8月時点の公表データをもとに作成

上の表のとおり、同じ研修でも中小企業のほうが戻る割合は大きくなります。助成率や上限額は企業規模や年度によって変わるため、申請の段階では必ず最新の厚生労働省パンフレットで確認してください。

費用面で注意したいのが機器代です。パソコン・タブレット・スマートフォンのように通常業務でも使う機器の購入費は、このコースでは従来から対象外です。一方、2026年8月の改正では「設備投資助成」が新設され、要件を満たす設備投資は助成率50%で対象になり得るとされています。また制度改正にともない、中小企業診断士などの認定支援機関による事業計画の確認が必要になるケースもあります。

この記事の情報の限界について

2026年8月3日改正の内容は、助成金コンサル会社・社労士事務所の解説記事にもとづいて整理しています。改正後の支給要領の正式な条文そのものを確認したものではありません。申請を進める際は、厚生労働省の公式パンフレットと管轄労働局での確認を必ず挟んでください。制度の運用は個別の判断を含むため、同じ研修名でも内容次第で結論が変わります。

助成金が使えない研修は、どう学べばいい?

「AIリテラシーから学びたいのに、そこは対象外」という状況は起こります。ここで考え方を分けておくと動きやすくなります。助成金は「会社の職務のための訓練」に付くもので、個人の学びの入口には付かない——この線に沿って、学びを2本立てにします。

🤔
じゃあ基礎の部分は、自分でなんとかするしかないってこと?

基礎の部分は自分の時間で進め、業務に直結する実技部分を会社の研修として申請する——この分担が、改正後の制度と噛み合う形です。基礎は無料の公式ドキュメントやオンライン講座でも十分に届く範囲ですし、そこを自力で越えておくと、会社に研修を提案するときの説得力も上がります。「AIを学びたいです」ではなく「この業務のこの工程をAIで置き換えたいので、この演習型研修を受けたい」と言えるようになるからです。

可処分時間の事情は人によって違います。平日に2時間取れる人もいれば、通勤の往復40分しか確保できない人もいます。学生なら授業や試験期間と重なる時期があり、社会人なら繁忙期がある。どちらにしても、まとまった時間ではなく「毎日確実に取れる最小の枠」から組むほうが続きます。まずは自分の1日を見て、確実に取れる枠がどこにあるかを1つ決めるところからで十分です。

制度の線引きが変わったのは、学び直しを止めるためではありません。職務に直結する学びに助成を集中させる方向への変更です。自分の職務のどこをAIで変えたいのか——そこが決まれば、対象になる研修も、自分で学ぶべき基礎も、自然に見えてきます。

よくある質問

人材開発支援助成金のリスキリング支援コースは、2026年8月3日に何が変わりましたか?

2026年8月3日、事業展開等リスキリング支援コースの支給要領が改正され、主に2点が変わりました。①助成対象外となる訓練の範囲が拡大し、職務に間接的にしか必要でない内容や、職種を問わず共通して必要な一般教養型・概念理解にとどまる内容が対象外と整理されました。②eラーニングに受講回数の上限が新設され、同一労働者について1年度あたり最大3回、うち8月3日以降提出の計画届に基づくものは1年度1回までとなりました。

全社員向けのAIリテラシー研修は助成対象になりますか?

2026年8月3日以降に職業訓練実施計画届を提出する場合、全社員向けのAIリテラシー研修や汎用的なプロンプト講座は助成対象外です。職業・職務の種類を問わず共通して必要な内容、概念やリテラシーの理解にとどまる内容が対象外と整理されたためです。8月2日までに計画届を提出済みの場合は経過措置により従来基準が適用されます。

今も助成対象になるAI研修はどんな内容ですか?

特定の職務に直接必要で、訓練後の業務で具体的に活用できる知識・技能を扱う研修です。たとえばカスタマー対応の自動応答文作成、社内データ分析のためのAIツール操作、自社業務フローへのAI組み込みなど、特定業務に即した実技・演習を伴う内容は対象になりやすいとされています。逆に「生成AIとは何か」「プロンプトの書き方一般」といった職種を問わない基礎講座は対象外になりやすい内容です。

新しい基準は研修を受ける日と申請する日のどちらで判定されますか?

研修の実施日ではなく、職業訓練実施計画届の提出日で判定されます。2026年8月3日以降に計画届を提出した訓練から新基準が適用され、8月2日までに提出済みの計画には経過措置として従来基準が適用されます。計画届は訓練を始める前に管轄労働局へ提出する必要があるため、研修の日程を決める前に社内の担当部署へ提出状況を確認してください。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。