クラウドとは?SaaS・PaaS・IaaSの3分類で理解する
画像出典: 写真: BalticServers.com(CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons)
クラウドとは、自社でサーバー機器を持たず、事業者の設備をインターネット経由で必要な分だけ借りて使う仕組みです。提供される範囲によってSaaS(完成したソフト)・PaaS(開発の土台)・IaaS(サーバーなどの基盤)の3つに分かれ、総務省の令和7年版情報通信白書では2024年時点で企業の80.6%が利用しています。
クラウドは、技術というより「持ち方」の話です。これまで会社は、社内の一室にサーバーという機械を置き、そこにデータやソフトを入れて使っていました。クラウドは、その機械を自社で持つのをやめて、事業者が用意した設備をインターネット越しに必要な分だけ借りる——ただそれだけの違いです。
言葉としては新しく聞こえますが、あなたが普段使っているGmailも、社内のファイル共有も、たいていはもうクラウドです。総務省の令和7年版情報通信白書によれば、2024年時点で企業の80.6%が何らかの形でクラウドを使っています。知らないまま使っているだけで、すでに全員が当事者なんです。
ここでは、仕組みの中身と、会議で飛び交う用語の意味を、順番に整理していきます。
クラウドとは何か?自社サーバーとの違いで理解する
クラウドを一言でいうと、インターネット経由で、データやソフトウェアを「借りて」使う仕組みです。対になる言葉がオンプレミス(自社の敷地内に機器を設置して運用する形)で、この2つを並べると輪郭がはっきりします。
オンプレミスでは、会社がサーバー機器を購入し、置き場所を用意し、電源と空調を確保し、故障すれば自分たちで交換します。人が増えれば機械を買い足し、減っても機械は残ります。クラウドでは、その一式を事業者が持っています。利用者はインターネット越しにその設備を使い、使った分だけ料金を払います。
身近な例に置き換えると、オンプレミスは車を買うこと、クラウドはカーシェアを使うことに近い持ち方です。買えば自由に改造できますが、車検も駐車場も自分持ちです。借りれば整備は任せられますが、用意されている車種の中から選ぶことになります。どちらが優れているかではなく、何を自分で抱えるかの選択です。
「データはどこにあるの?」という疑問
クラウド上のデータは、事業者が運営するデータセンターのサーバーに物理的に保管されています。雲という名前のせいで実体がないように感じますが、国内外の建物の中に、実際の機械が並んでいます。手元のパソコンからは見えないだけで、置き場所は確かに存在します。
この点は、業務で使ううえで無視できません。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」でも、クラウドサービスを使うときはデータが事業者側のサーバーに保管され、インターネット経由でやり取りされることから、十分なセキュリティ対策が施されたサービスを選ぶことが重要だと示されています。「便利だから」だけで選ぶ話ではない、ということです。
SaaS・PaaS・IaaSの違いは?借りる範囲で分かれる
会議で最もよく出てくる略語がこの3つです。難しく見えますが、事業者からどこまでを借りるか、という範囲の違いにすぎません。名前の末尾はすべて「as a Service(サービスとして提供する)」で共通しています。
| SaaS(サース) | 完成したソフトウェアをそのまま使う。メール、グループウェアなど |
|---|---|
| PaaS(パース) | アプリを作る土台を借りる。データベースやプログラムの実行環境など |
| IaaS(イアース) | サーバーやストレージといった基盤だけを借りる。中身は自分で作る |
先ほどの車の例を続けるなら、SaaSは運転手つきのタクシー、PaaSは車を借りて自分で運転、IaaSはエンジンとシャーシを借りて車体は自分で組む、というくらいの差があります。非エンジニアが日常的に触れるのはほぼSaaSで、PaaS・IaaSは情報システム部門や開発会社が扱う領域です。
- 「SaaSを入れる」=出来合いのサービスを契約して使い始める話
- 「PaaSで作る」=土台は借りて、アプリは自社で開発する話
- 「IaaSに移す」=社内のサーバー機器をやめて、借りた基盤へ引っ越す話
企業はどれくらいクラウドを使っている?
| 年 | クラウドサービス利用率(一部でも利用) |
|---|---|
| 2024年 | 80.6% |
総務省 令和7年版 情報通信白書の公表データをもとに作成
上の数値は、一部の業務でも使っていれば含まれる割合です。白書では、約10年で利用率がほぼ倍増し、企業活動に欠かせない存在として浸透したと説明されています。つまりクラウドは「これから来るもの」ではなく、すでに標準になった持ち方です。
利用目的として最も多いのは「ファイル保管・データ共有」で、続いて「社内情報共有・ポータル」「電子メール」「給与・財務会計・人事」「スケジュール共有」が上位に並びます。派手なAI活用より前に、日々のファイルとメールが主戦場だということです。あなたの会社で共有フォルダがブラウザ上にあるなら、それはもう典型的なクラウド利用にあたります。
非エンジニアが押さえるべき用語はどれ?
全部を覚える必要はなく、話の流れを見失わない程度の語をいくつか持っていれば足ります。技術者と同じ深さは要りません。判断に加われる程度の語彙が目標です。
- オンプレミス自社に機器を置いて運用する形。クラウドの対義語として出てきます。「オンプレからクラウドへ」は引っ越しの話だと分かれば十分です。
- SaaS / PaaS / IaaS借りる範囲の3段階。自分の業務に直接関わるのはほぼSaaSです。
- アカウントと権限クラウドでは誰がどのデータを見られるかを設定で決めます。非エンジニアが最も関わる部分で、事故が起きやすいのもここです。
- 従量課金使った分だけ払う料金の形。人数や容量が増えると費用も増えるため、予算の話で必ず出てきます。
- データセンター事業者のサーバーが実際に置かれている施設。「データはどこにあるか」を説明する語です。
この5つが頭に入っていれば、社内の会議で置いていかれることはほとんどなくなります。逆にいえば、それ以上の語は必要になった時点で調べれば間に合います。
クラウドを業務で使うとき、何に気をつける?
便利さの裏側には、自分たちで管理しない分だけ「任せる相手を選ぶ責任」が残ります。総務省が示しているとおり、判断の軸はセキュリティ対策が十分なサービスかどうかです。
- 誰がそのデータにアクセスできるか、権限を設定できるか
- 退職者のアカウントを確実に止められる運用になっているか
- 社外への共有リンクが、意図せず全公開にならない設定か
- 契約が終わったときにデータを取り出せるか
特に3つ目は、非エンジニアが日常的に触れる落とし穴です。ファイル共有の「リンクを知っている全員が閲覧可」という設定は手軽ですが、そのリンクが外に出れば誰でも中身を見られます。便利な機能ほど、既定値のまま使わないほうが安全です。
法令や契約でデータの保管場所が厳しく指定されている業務、インターネットから切り離すことが前提の環境、既存の機器がまだ十分に使えて費用対効果が合わない場合は、オンプレミスのままが妥当なこともあります。「クラウドにすれば安くなる」とは限らず、利用量が大きいほど従量課金が積み上がる点も含めて、自社の条件で判断する話です。
ここから学びを広げるには?
クラウドの基礎は、一度輪郭をつかめば大きくは変わりません。次の一歩として現実的なのは、手を動かして触ってみることです。個人向けのクラウドストレージを1つ選び、無料枠でファイルを保存し、共有リンクの権限設定を自分で変えてみる。それだけで、権限とアクセスの感覚が体に入ります。所要時間は30分ほどで、費用もかかりません。
もう少し体系的に学ぶなら、クラウド関連の入門資格が学習の地図として使えます。学生であれば学割が用意されている試験もあり、社会人より受験料の負担を抑えられる場合があります。一方で社会人は可処分時間が限られるぶん、実務で使っているサービスの管理画面を教材にできる強みがあります。置かれた条件が違えば、有利な学び方も違います。時間があるなら基礎から順に、なければ業務で触る範囲から逆算する——どちらでも到達点は同じです。
クラウドという言葉が難しかったのは、中身が難しいからではなく、実体が見えなかったからです。借りて使う仕組みだと分かれば、あとは「何を、どこまで借りるか」を考えるだけになります。急いで全部を理解する必要はありません。知ってから決めれば十分です。
よくある質問
クラウドとオンプレミスの違いは何ですか?
オンプレミスは自社でサーバー機器を購入・設置・管理する形で、クラウドは事業者が用意した設備をインターネット経由で必要な分だけ借りて使う形です。オンプレミスは自由度が高い代わりに購入費と保守の手間を自社で負い、クラウドは保守を任せられる代わりに提供されている機能の範囲で使うことになります。
SaaS・PaaS・IaaSはどう使い分けられていますか?
事業者から借りる範囲が違います。SaaSはメールやグループウェアなど完成したソフトウェアをそのまま使う形、PaaSはデータベースやプログラム実行環境といったアプリ開発の土台を借りる形、IaaSはサーバーやストレージなど最も基本的なITインフラだけを借りる形です。非エンジニアが日常業務で触れるのはほとんどがSaaSです。
日本の企業はどれくらいクラウドを使っていますか?
総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年時点で企業のクラウドサービス利用率は80.6%です。利用目的では「ファイル保管・データ共有」が最も多く、続いて「社内情報共有・ポータル」「電子メール」「給与・財務会計・人事」「スケジュール共有」が上位に挙がっています。
クラウドに保存したデータはどこにありますか?
クラウド上のデータは、サービス事業者が運営するデータセンター内のサーバーに物理的に保管されます。総務省も、クラウド利用時はデータが事業者側のサーバーに保管され、インターネット経由でやり取りされることから、十分なセキュリティ対策が施されたサービスを選ぶことが重要だとしています。
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