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金地金を買わせる特殊詐欺、親を守る合言葉の決め方

2026年9月18日|いろは堂くらし編集部
和室で座卓に向かい固定電話を耳に当てノートを見る高齢男性一人の写真

画像出典: ぱくたそ

この記事の要点
警察官をかたる者が口座の不正利用を理由に預貯金の交換を指示し、貴金属店で買わせた金地金をだまし取る手口が広がっています。警察・銀行が資産の提出や暗証番号を求めることは絶対になく、家族で合言葉を決めておくだけでも電話口で見抜けます。迷った段階では警察相談専用電話#9110に相談できます。
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実家の親、電話に出るとなんでも信じちゃうタイプで…。ニュースで金塊の詐欺って見て、急に不安になってきました。

離れて暮らしていると、詐欺の電話がかかってきた瞬間に立ち会うことはできません。だからこそ効くのは、電話がかかってくる前に「この一言が出たら詐欺」という判断の型を親に渡しておくことです。長い説明はいりません。合言葉ひとつと、切って折り返すという習慣だけで守れます。

正直なところ、帰省のたびに「詐欺に気をつけてね」と言うだけでは足りません。親の側は「自分は大丈夫」と思っていますし、実際の電話は「あなたが犯罪に関わっている」という、断りにくい入口から入ってくるからです。

金地金を買わせる特殊詐欺とは?

まず、いま起きていることを事実として共有します。警察官などをかたる者がSNSでニセの逮捕状の画像を送りつけ、「あなたに逮捕状が出ている」「金融詐欺に関与した疑いがある」「身の潔白を証明するには資産をすべて提出してほしい」と不安をあおる手口です。偽の警察手帳や逮捕状の画像を見せてくるケースもありますが、いずれも偽物です。

ここまでは、これまでの「ニセ警察詐欺」と同じ入口です。違うのは出口のほうです。「口座が犯罪に使われている。このままでは逮捕することになる。預貯金を金塊(インゴット)に交換しなさい」と指示し、本人に貴金属店へ行かせて金地金を買わせ、それを受け取ってだまし取ります。金地金(きんじがね)は、金を延べ棒の形にした現物のことです。

現金の引き出しやATM送金と違い、本人が自分の足で店に行き、自分の意思で買っているように見えるのが厄介なところです。ニセ警察詐欺の中で資産(金塊を含む)をだまし取る手口は、2026年1〜5月に全国で約45億円の被害が確認されています。

入口は「警察」とは限らない

電話会社や総務省などをかたって「携帯電話の未納料金がある」と接触し、そのあと警察官役に電話を代わる流れも確認されています。SNSやビデオ通話へ誘導されるパターンもあります。親には「最初の相手が何を名乗ったか」ではなく、話の途中で警察・検察が出てきたら、その時点でいったん切ると伝えるほうが確実です。

特殊詐欺の被害はどれくらい増えている?

不安をあおるための数字ではなく、親に「実際に起きている」と伝えるための材料として使ってください。2026年の特殊詐欺の被害額を、前年の同じ期間と並べると次のようになります。

期間(2026年)被害額前年同期
1〜6月末約1,816億円約1,197億円
1〜7月末約2,108億円約1,476億円

ScanNetSecurity(2026年9月10日)の公表データをもとに作成

上の表のとおり、1〜6月末の時点で前年同期比+52%、7月末までの累計でも前年同期より632億円多い水準です。同じ7月末時点の手口別の認知件数では、ニセ警察詐欺が5,422件と最も多く、次いで架空料金請求詐欺3,688件、SNS型ロマンス詐欺3,037件、オレオレ詐欺2,350件、還付金詐欺1,757件と続きます。かつての代表格だったオレオレ詐欺より、ニセ警察を名乗る型のほうが件数で上回っている点は、親と共有しておく価値があります。

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オレオレ詐欺より多いんですか。うちの親、そっちの警戒しかしてないかも。

「息子を名乗る電話には気をつけている」高齢者ほど、警察を名乗る電話には素直に応じてしまうことがあります。警戒の向き先を更新してもらうのが、今回いちばん効く会話です。

要注意のサインはどこで見分ける?

細かい手口を全部覚える必要はありません。次のどれかが出たら、内容にかかわらず詐欺と決めておけば足ります。

この言葉が出たら、その時点で詐欺
  • 「預貯金を金塊(インゴット)に交換してください」
  • 「逮捕状が出ています」とSNSやビデオ通話で画像を送ってくる
  • 「身の潔白を証明するために資産をすべて提出してください」
  • 「暗証番号を教えてください」「キャッシュカードを預かります」
  • 「資産の写真を送ってください」
  • 「このことは家族にも言わないでください」

銀行・警察・検察が電話やSNSで暗証番号やキャッシュカードの提出、資産の写真を求めることは絶対にありません。例外はありません。だからこそ、判断の基準として親に渡しやすい一文です。

「うちの親は大丈夫」がいちばん危ないところです

この手口は、お金の話から入りません。「あなたが犯罪に巻き込まれている」という話から入り、相手を焦らせ、家族に相談させないよう仕向けます。判断力の問題ではなく、そういう設計になっているからこそ、しっかりした人でも引っかかります。「うちは大丈夫」と思っている家庭ほど、事前の取り決めを持っていないぶん危うい、と考えてください。

家族の合言葉はどう決めればいい?

合言葉は、警察庁や政府広報オンラインでも継続して案内されている基本対策です。怪しい電話に対して「合言葉は?」と一言返すだけで、相手は答えられません。仕組みが単純なぶん、高齢の親にも覚えてもらいやすいのが利点です。

  1. 推測されにくい言葉を選ぶ誕生日・名前・住所など、SNSや年賀状から推測できるものは避けます。家族しか知らない出来事や、昔飼っていたペットの呼び名のような、外に出ていない言葉が向いています。
  2. 帰省や電話のときに口頭で伝えるメールやLINEの文面に残すより、会って決めるほうが安全です。紙に書いて電話機のそばに貼るのは有効ですが、「合言葉」とは書かず、家族にだけ分かる形にしておきます。
  3. 使う場面を決めておく「お金・カード・資産の話が出たら必ず聞く」と条件を固定します。判断を毎回考えさせないことが大事です。
  4. 数か月に一度、電話で実際に使ってみるいざという時に思い出せなければ意味がありません。普段の電話でときどき使い、覚えているかを確かめます。
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合言葉を決めたのに、親が忘れてしまいそうで不安です。

忘れる前提で、二段構えにしておくと安心です。合言葉を思い出せなくても「お金の話が出たら、いったん切って子どもに電話する」という行動だけ残っていれば、被害は止まります。合言葉は入口の関門、折り返しの習慣は最後の砦、という役割分担です。

怪しい電話がかかってきたら、何をすればいい?

その場で判断させないことがすべてです。詐欺の電話は、相手に考える時間を与えないよう設計されています。

  1. いったん通話・やり取りを止める「折り返します」とだけ言って切ります。理由を説明する必要も、相手を納得させる必要もありません。
  2. 公式の番号を自分で調べて、そこにかける相手が伝えてきた番号にはかけ直しません。警察署や役所の番号は、自分で検索するか、電話帳・自治体の広報紙で確認します。
  3. 家族か#9110に相談する緊急ではないけれど不安、という段階の相談先が警察相談専用電話「#9110」です。平日8時30分〜17時15分、匿名でも相談できます。相談料はかからず、かかるのは通常の通話料だけなので、数分の相談なら10円〜数十円程度で済みます。止められる被害が数十万円〜数百万円単位の金地金の購入であることを考えれば、迷った時点でかけてしまうほうが割に合います。すでに被害が発生している・危険が迫っている場合は110番です。

親には「相談してから動いても遅くならない」と伝えておいてください。本当に警察が用があるなら、折り返しの数時間で状況が悪くなることはありません。急かしてくる時点で、相手が本物ではないという証拠になります。

店頭で止まる可能性もある

被害の急増を受け、警察庁は金地金取扱業者に対して、詐欺を見破るための不審点チェックリストを配布し、不審な取引時の通報を要請しています。貴金属店や銀行の窓口でも、高額・急な購入の際に本人の意思を確認する声かけが行われています。

これは親への安心材料としても使えます。「もし店で理由を聞かれても、それは疑われているのではなく守ろうとしてくれている」と先に伝えておけば、店員の質問を振り切って買ってしまう展開を減らせます。

ネット上の偽サイト・偽広告にも注意が必要?

電話やSNSの手口とは別に、貴金属をめぐる偽サイト・偽広告の相談も増えています。消費者庁は、田中貴金属工業やミキモトなど実在企業の社名を無断で使った「140周年キャンペーン」などの偽広告について注意喚起しています。

田中貴金属工業は、訪問販売・買取・電話・SNSによる投資勧誘は一切行っていないと公式に明言しています。有名企業の名前が出ているかどうかは、本物かどうかの判断材料になりません。被害にあった、あるいは支払ってしまった場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」に連絡できます。

実家に貼っておきたい番号
  • #9110 … 警察相談専用電話(緊急でない不安・相談)
  • 110 … 緊急時・被害が起きている時
  • 188 … 消費者ホットライン(契約・支払いのトラブル)
  • 子どもの携帯番号(お金の話が出たら必ずここへ)

今日、親に何を伝えればいい?

一度に全部を伝えようとすると、親のほうが構えてしまいます。次の電話で、この3つだけ渡してください。

次の電話で渡す3つ
  • 「預貯金を金塊に替えろ」「暗証番号を教えろ」は100%詐欺。例外はない
  • お金・カード・資産の話が出たら、いったん切ってこちらに電話する
  • 家族の合言葉を1つ決める(お金の話が出たら必ず聞く)

帰省の予定があるなら、そのときに電話機のそばへ相談先の番号を貼るところまでやっておくと確実です。詐欺対策は、賢くなることではなく、迷ったときの行き先を決めておくことです。それなら今日の電話一本で始められます。

よくある質問

警察が「預貯金を金塊に替えなさい」と指示することはありますか?

ありません。警察・検察・銀行が電話やSNSで資産の提出や金地金への交換、暗証番号やキャッシュカードの提出を求めることは絶対にありません。そう言われた時点で詐欺と判断して差し支えありません。

SNSで逮捕状の画像が送られてきました。本物ですか?

偽物です。SNSやビデオ通話でニセの逮捕状や警察手帳の画像を送りつけ、「身の潔白を証明するために資産を提出してほしい」と迫るのが、ニセ警察詐欺の典型的な手口です。やり取りを止め、警察相談専用電話#9110に相談してください。

家族の合言葉は何にすればいいですか?

誕生日や名前、住所など、SNSや年賀状から推測できるものは避け、家族しか知らない出来事や昔の呼び名など外部に出ていない言葉を選びます。決めたあとは普段の電話でときどき使い、思い出せるか確認しておくと確実です。

詐欺かどうか迷う段階でも相談できる窓口はありますか?

警察相談専用電話「#9110」が使えます。緊急性はないが不安、という段階の相談を受け付けており、平日8時30分〜17時15分、通常の通話料(数分で10円〜数十円程度)で匿名でも相談できます。被害が起きている・危険が迫っている場合は110番です。

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