副業の請求書の書き方、源泉徴収で損しない記載とは
画像出典: 写真: Namira22(CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)
副業の請求書は、取引年月日・取引先名・請求内容(品目・数量・単価)・請求金額・消費税額・発行者の氏名と連絡先が基本の記載項目です。源泉徴収がある取引では、報酬額と消費税額を請求書上で区分して書くことで、源泉徴収の対象を税抜金額にできます(区分がないと税込総額が対象になりうる)。インボイス発行事業者の登録をしていない場合、登録番号は記載できません。
初めての請求書は、フォーマットそのものより「どこまで書く必要があるのか」がわからなくて手が止まります。請求書は決まった様式が法律で定められた書類ではなく、必要な情報が入っていれば手書きでもExcelでも成立します。
ただし、書き方によって手取り額が変わる箇所が一つだけあります。源泉徴収と消費税の書き分けです。ここだけ先に押さえておけば、あとは埋めていくだけの作業になります。
請求書に必ず書く項目は?
まず、業種を問わず共通して必要になる項目から埋めていきます。ひとつずつ意味を確認しながら見ていきましょう。
- 取引年月日(いつの取引か)
- 取引先(発注者)の名称
- 請求内容(品目・数量・単価)
- 請求金額
- 消費税額
- 源泉徴収税額(該当する場合)
- 発行者(自分)の氏名または名称・連絡先
HiPro(パーソルキャリア)の公表データをもとに作成
このうち初心者がつまずきやすいのが「請求内容」の書き方です。「デザイン制作一式」のような1行では、後から何の対価だったのかが双方でわからなくなります。品目・数量・単価に分けて書くと、追加作業が発生したときの交渉もしやすくなります。
請求内容の書き方の例
| 品目 | ブログ記事執筆(3,000字・構成込み) |
|---|---|
| 数量 | 4 |
| 単価 | 15,000円 |
| 金額 | 60,000円 |
「一式」ではなく本数と単価を分けておくと、次回の単価交渉のときにも、この請求書がそのまま実績の記録として使えます。
源泉徴収がある場合、どう書けばいい?
所得税法上、請求書に源泉徴収税額を記載すること自体は法律上の義務ではありません。それでも書くよう求められるのは、支払う側が源泉徴収の事務をミスなく行うためです。実務上は明記するのが一般的なので、求められたら素直に書いておけば問題ありません。
問題はここからです。源泉徴収税額を「税込の総額」に対して計算するか、「税抜の報酬額」に対して計算するかで、その月に振り込まれる金額が変わります。
区分記載があるかないかで、こう変わる
報酬10万円+消費税1万円の取引を例にします(税率10%・源泉徴収率10.21%と仮定)。
| 請求書の書き方 | 源泉徴収の対象 | 源泉徴収税額 |
|---|---|---|
| 報酬額と消費税額を区分して記載 | 100,000円(税抜) | 10,210円 |
| 「110,000円」と総額のみ記載 | 110,000円(税込) | 11,231円 |
freeeの公表データをもとに作成
この差は最終的に確定申告で精算されるため、払いすぎた税金が消えてなくなるわけではありません。ただし精算されるのは翌年の申告時です。手元の資金が薄い副業初期に、毎月1,000円ずつ余分に先払いする状態は避けたいところです。
源泉徴収税額の計算で1円未満の端数が出た場合は切り捨てます。また、そもそも源泉徴収の要否や扱いは案件によって異なります。発注元が個人事業主で従業員を雇っていない場合など、源泉徴収の義務がないケースもあるため、請求書を出す前に「源泉徴収はありますか」と一言確認しておくのが、後のトラブルを防ぐ一番確実な方法です。
消費税とインボイスはどう書く?
消費税の書き方は、自分が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録しているかどうかで変わります。ここは混同しやすいので、順に整理します。
「適格請求書(インボイス)」とは、発注側が仕入税額控除を受けるために必要な、決められた項目を満たした請求書のことです。インボイスとして認められるには、税率ごとに区分した消費税額と適用税率、そして登録番号の記載が必要になります。
- 登録している場合「T」から始まる13桁の登録番号を請求書に記載し、税率(10%/軽減8%)ごとに区分した消費税額を書きます。
- 登録していない(免税事業者の)場合登録番号は記載できません。持っていない番号を書くことはできず、他社の番号を借りることもできません。消費税額の記載自体は、区分して書いて差し支えありません。
副業を始めたばかりの人が最も間違えやすいのがこの点です。テンプレートに「登録番号」欄があるからといって、登録していないのに何かを埋める必要はありません。空欄のまま、あるいは欄ごと削除して提出します。
出す前に確認したい、間違いやすいポイントは?
送信前の最終チェックです。差し戻しの多くは、金額そのものではなく事務的な不備で起きます。
- 報酬額と消費税額を分けて書いたか(源泉徴収がある場合は特に)
- 源泉徴収税額の端数を切り捨てたか
- 差引請求額(振込してもらう金額)が明示されているか
- 登録していないのに登録番号欄を埋めていないか
- 振込先の口座名義が、自分の登録名義と一致しているか
- 先方指定の締め日・書式(PDF指定など)に合っているか
特に見落としやすいのが最後の2つです。屋号名義の口座を使う場合、口座名義の表記が請求書の発行者名と食い違うと振込が保留されることがあります。また、企業によっては請求書のフォーマットや提出システムが指定されていることもあるため、初回だけは「請求書の様式や締め日の指定はありますか」と先に聞いておくと確実です。
控えは必ず残す
送った請求書は、自分用の控えとして必ず保存しておきます。確定申告のときに、その年の売上を集計する根拠になるからです。案件が増えてくると記憶では追えなくなるので、「請求書_発行年月日_取引先名」のような命名ルールを最初の1枚から決めておくと、翌年の申告作業が驚くほど軽くなります。
請求書を出したあと、何をすればいい?
請求書は、送って終わりではありません。次の3つを続けていくと、副業が「作業」から「事業」に変わっていきます。
- 入金予定日を控える請求書の支払期日を、カレンダーやスプレッドシートに記録します。入金漏れに自分で気づける状態を作っておきます。
- 入金の消し込みをする振込があったら控えにチェックを入れます。源泉徴収されている場合、振込額は請求額より少なくなるので、その差額が源泉徴収税額と一致するか確認します。
- 年間の売上と源泉徴収額を集計する確定申告では、1年間の売上と、すでに天引きされた源泉徴収税額の合計が必要になります。月ごとに足していけば、申告時に慌てずに済みます。
最初の1枚は誰でも手探りです。ただ、ここで挙げた項目さえ入っていれば、体裁が完璧でなくても請求書として機能します。まずは1枚出してみて、先方から指摘があればそれを次回に反映する。それで十分に前へ進めます。
よくある質問
副業の請求書に決まったフォーマットはありますか?
法律で定められた様式はありません。取引年月日、取引先の名称、請求内容(品目・数量・単価)、請求金額、消費税額、発行者の氏名と連絡先が入っていれば、ExcelでもWordでも請求書として成立します。ただし発注先から書式やシステムを指定される場合があるため、初回は事前に確認しておくと確実です。
請求書に源泉徴収税額を書く義務はありますか?
所得税法上、請求書への源泉徴収税額の記載は法律上の義務ではありません。ただし支払う側が源泉徴収の事務を正確に行うため、記載を求めるのが実務上は一般的です。求められた場合は記載しておくとやり取りがスムーズになります。
源泉徴収は消費税込みの金額と税抜の金額、どちらで計算されますか?
請求書で報酬額と消費税額を区分して記載していれば、税抜金額を源泉徴収の対象にできます。区分記載がない場合は税込の総額が対象になりうるため、源泉徴収される金額が大きくなります。なお計算で1円未満の端数が生じた場合は切り捨てます。
インボイス登録をしていない場合、請求書に登録番号は書けますか?
書けません。登録番号を記載できるのは適格請求書発行事業者として登録した事業者のみで、免税事業者は記載できません。テンプレートに登録番号欄があっても、登録していない場合は空欄にするか欄ごと削除して提出します。
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