公務員の副業とは?申請なしで認められる範囲の基準
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公務員の副業は全面禁止ではなく、国家公務員法第103条・104条で「営利企業の役員兼業」「自営兼業」「報酬を得ての他の事務従事」が制限されています。不動産賃貸は独立家屋5棟未満・区画10室未満・年間家賃収入500万円未満なら承認申請なしで可能とされ、自家消費目的の小規模な農業や、勤務時間外の執筆・講演も比較的認められやすい分野です。基準を超える場合は自営兼業承認申請書の提出が必要で、収入を得たあとは確定申告と住民税の扱いも合わせて確認します。
公務員の副業は「全面禁止」ではありません。制限されているのは、法律が名指しした特定の関わり方であって、収入を得る行為すべてではないんです。実際、不動産の賃貸や農業には、承認申請なしで行える範囲がはっきりした数字で決められています。
正直なところ、この線引きを知らないまま「公務員だからダメ」で止まっている人はかなり多いです。逆に、知らずに基準を超えていて後から問題になるケースもあります。大事なのは、自分がどのラインのどちら側にいるかを数字で把握することです。順番に見ていきましょう。
公務員の副業は法律でどこまで制限されている?
まず土台を揃えます。国家公務員の兼業を制限しているのは、国家公務員法の第103条と第104条という2つの条文です。この2つが何を禁じているかを分けて理解すると、話が一気に整理されます。
- 第103条(私企業からの隔離)営利企業の役員などに就くこと、および自ら営利企業を営むこと(=自営兼業)
- 第104条(他の事業・事務への従事制限)報酬を得て、他の事業や事務に従事すること
- これらの具体的な運用基準を定めているのが人事院規則14-8。役員兼業の判断ラインはここに書かれています
ポイントは、条文が禁じているのが「収入を得ること」ではなく「営利企業の役員になること」「自ら事業を営むこと」「報酬を得て他の事務に従事すること」という関わり方だという点です。だからこそ、同じ不動産賃貸でも規模によって扱いが変わり、同じ農業でも自家消費か営利かで判断が分かれます。
そして、これらの解釈をまとめたものとして、内閣人事局・人事院が「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」(令和6年6月)を公表しています。不動産や農業の具体的な線引きは、この資料と人事院規則の運用基準が根拠になっています。
ここまでの条文はすべて国家公務員法のものです。地方公務員には地方公務員法の規定と、各自治体が定める許可基準が適用されます。総務省の分科会(令和7年3月17日)でも地方公務員の兼業が議論されており、国と地方で制度は完全に同一ではありません。地方公務員の方は、以下の数字を「考え方の目安」として読み、実際の判断は必ず所属自治体の基準を確認してください。
不動産賃貸はどこまでなら申請不要?(5棟10室基準)
比較的認められやすい代表例が不動産賃貸です。ここには「5棟10室基準」と呼ばれる、はっきりした数字のラインがあります。人事院規則の運用基準で、以下の規模未満であれば承認申請なしで行える自営の範囲内とされています。
| 独立家屋(戸建て) | 5棟未満 |
|---|---|
| 独立区画(マンション・アパート) | 10室未満 |
| 土地の賃貸契約 | 10件未満 |
| 年間の家賃収入 | 500万円未満(経費控除前の総額) |
人事院「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」等の公表内容をもとに作成
数字で見ると具体的にイメージできると思います。親から相続したアパート1棟(8室)を、年間家賃収入400万円で貸している——このケースなら、区画数も収入も基準内に収まります。一方で同じ8室でも、家賃が高く年間収入が520万円あれば、室数は基準内でも収入で超えることになります。4つの条件はどれか1つでも超えれば申請対象と考えてください。
もう1つ見落とされやすい要素があります。管理業務を自分でやらないことです。清掃や入居者対応を管理会社に委託していることは、「自ら事業を営んでいる」わけではないと判断される要素の1つとされています。逆に、自分で入居募集から修繕まで走り回っていると、規模が小さくても「自営」の色が濃くなります。
基準を超えること自体は違反ではありません。超える場合に必要になるのが、承認申請です。「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」を所轄庁の長を通じて人事院に提出し、承認を得るという手続きが用意されています。基準超え=禁止ではなく、基準超え=要承認、という理解が正確です。
ここは前向きに読んでいい部分でもあります。たとえば相続でアパートがもう1棟増えて合計12室になった、家賃収入が年600万円に届いた——基準は超えますが、承認を得られればその規模のまま続けられます。「基準を超えたら手放すしかない」と考えて先に諦める必要はありません。むしろ、規模が育ってきた段階で正式に承認を取っておくほうが、その後は堂々と運用できます。
農業と執筆・講演はどう扱われる?
農業はどこまで認められる?
農業・林業は、公務員が携わることが伝統的に認められてきた分野です。特に相続などで承継した家業としての農業は認められやすいとされています。実家の田畑を継いだ、というケースはここに当たります。
判断が分かれるのは規模と目的です。
- 自家消費が目的の小規模な農業兼業許可の申請は不要とされています。家族で食べる分、近所に分ける分、といった範囲です。
- 営利を主目的とする大規模な農業経営申請と承認が必要になります。事業として継続的に販売するなら、この扱いです。
- その中間の判断労働時間、販売の継続性、常設の販売施設があるかどうか等を総合的に見て判断されます。
不動産のような「5棟10室」に相当する数値基準がない分、ここは自己判断が最も危険な領域です。たとえば「自家消費が中心だけど、余った分を直売所に継続的に出している」といったケースは、労働時間や販売の継続性で見え方が変わります。迷ったら承認申請の相談ルートへ進んでください。
逆に言えば、規模を広げたくなったときに道が閉じているわけでもありません。営利を主目的とする規模になっても、申請して承認を得れば継続できる仕組みになっています。「これ以上増やすと違反になるから縮小しよう」と決める前に、承認という選択肢があることを思い出してください。
執筆・講演はどう扱われる?
執筆や講演は、不動産・農業とはそもそも整理の枠が違います。前の2つは「自営兼業」——つまり自分で事業を営んでいるかどうかの話でした。単発の原稿執筆や講演は事業を営む行為ではないため、営利企業の役員兼業や自営兼業とは別の整理がされ、比較的認められやすい分野とされています。
ただし、無条件ではありません。前提として押さえるべきなのは次の2点です。
- 勤務時間外に行うこと職務専念義務(勤務時間中は職務に専念する義務)に触れない範囲であること
- 職務との利益相反がないこと信用失墜行為に当たらないこと。自分の職務上の立場や非公開情報を使って利益を得る形になっていないか
実務的に危ういのは2つ目です。担当業務そのものを題材に、その分野の企業から講演料を受け取る——こうした形は、内容が適切でも利害関係が疑われます。「勤務時間外だから大丈夫」だけで判断せず、テーマと依頼元との関係を必ずセットで確認してください。
なお、第104条は「報酬を得て他の事業・事務に従事すること」を制限しています。単発か継続かの線引きは実務判断になるため、定期連載のように継続性が出てくる場合は、事前に相談しておくのが安全です。ここでも、継続的な依頼が来たこと自体は歓迎していい話です。相談して整理がついていれば、単発で終わらせずに続けられます。
最初の1件を受けるまで、どう進める?
ここからは実際に動く順番です。執筆・講演は、公務員が最初の1件にたどり着きやすい分野です。不動産や農業と違って初期資金も要らず、単発で完結するため、確認すべき論点も少なく済みます。次の順で進めてください。
- テーマを職務から切り離して決める自分の担当業務そのものではなく、勤務時間外に自力で積み上げた知識・経験をテーマにします。資格勉強の進め方、趣味の分野、独学で身につけた技術など。ここを間違えると、あとの確認が全部つまずきます。
- 依頼元との利害関係を確認するその相手が、自分の職務上で許認可・契約・指導などの関係を持つ先でないかを見ます。関係があれば、そのテーマ・その相手では受けない、と先に決めてしまうのが安全です。
- 受ける前に服務担当へ相談する「誰から・どんなテーマで・いくらの報酬で・どれくらいの時間」の4点を書き出して、人事課などの服務担当に相談します。相談した記録が残ることが、あとで自分を守ります。
- 単発の1件を勤務時間外に仕上げる執筆なら締切、講演なら日程を、勤務日に食い込まない形で確定させます。最初の1件は、報酬額より「勤務に影響を出さずに完了できるか」を確かめるためのものと考えてください。
- 報酬の記録を残す支払通知書や振込明細、必要経費(資料代・交通費など)の領収書を1か所にまとめます。次章の申告で必要になるのは、この記録です。
- 2件目以降は継続性を意識する定期連載のように継続の話が出てきたら、その時点でもう一度服務担当に相談します。単発と継続では第104条の見え方が変わるためです。
最初の1件は、稼ぐことより「手続きの一周を実際に通すこと」が目的です。相談→受注→納品→記録、この流れを一度通しておけば、2件目からは判断に迷う時間がほとんどなくなります。
いきなり継続契約や高額案件から入ると、職務専念義務と利益相反の両方を同時に判断することになり、相談を受ける側も答えを出しにくくなります。金額が小さく、単発で、職務と離れたテーマ。この3条件を満たす1件から始めるのが、結果的に一番早く前に進めます。
収入を得たら、確定申告と保険はどうなる?
承認の話と税・社会保険の話は別の制度です。所属先で問題ないと整理がついても、税務上の手続きは自分でやることになります。ここを飛ばすと、せっかく正しく始めた副業が別のところでつまずきます。
- 確定申告が必要かどうか給与を1か所から受けている人は、給与以外の所得(収入から必要経費を引いた額)が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。原稿料・講演料は源泉徴収されていることが多いですが、それで完結するわけではありません。
- 20万円以下でも住民税の申告は必要「20万円以下なら申告不要」は所得税の話で、住民税にはこの取扱いがありません。金額にかかわらず、お住まいの自治体へ住民税の申告が必要になります。
- 社会保険は原則そのまま共済組合の被保険者である立場は、勤務先での身分に基づくものです。執筆・講演の報酬を受け取っても、他の勤務先で雇用される形でなければ、加入先が変わるわけではありません。
実務で効いてくるのは経費の記録です。所得は「収入−必要経費」で計算するため、資料代や取材の交通費を記録しているかどうかで、申告が必要かどうかの判定自体が変わることがあります。前章で領収書をまとめておくよう書いたのは、このためです。
不動産の家賃収入がある場合は、規模によって扱いが変わり判断が複雑になります。金額が大きい、複数の収入源がある、経費の判断に迷う——このいずれかに当たるなら、税務署または税理士に確認してください。所属先の服務担当は服務の判断はしてくれますが、税務の判断はしてくれません。相談先が別だということも、先に知っておくと動きやすくなります。
承認申請が必要か迷ったらどう動く?
ここまでの基準を踏まえても、自分のケースが基準の内側か外側か判断しきれないことは普通にあります。そのときの動き方は決まっています。
- 数字を先に洗い出す不動産なら棟数・室数・土地の契約件数・年間家賃収入(経費を引く前の総額)。農業なら作付規模・販売の有無と継続性・かかっている時間。数字が揃っていないと相談しても答えが出ません。
- 管理・運営を誰がやっているかを整理する不動産なら管理委託の有無、農業なら自分がどれだけ手を動かしているか。「自ら営んでいるか」の判断材料になります。
- 所属先の服務担当に相談する人事課などの服務担当に、上の数字を持って相談します。申請の要否を自己判断しないことが実務上推奨されています。
- 必要なら承認申請書を出す不動産の場合は「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」を所轄庁の長を通じて人事院へ。承認を得れば、基準を超える規模でも問題なく続けられます。
「たぶん大丈夫だろう」で始めて、後から基準超過が判明するのが最も面倒なパターンです。相談すること自体は何のペナルティもありません。むしろ、事前に相談した記録が残っていることが自分を守ります。基準内だと確信できるケースでも、相続で物件が増えるなど状況が変わったタイミングでは再確認してください。
制限されているのは関わり方であって、収入を得ること全般ではない。この前提を持って自分の数字を並べれば、判断すべき論点はかなり絞られます。基準内なら申請なしでそのまま続けられますし、超えていても承認という道が残っています。急いで結論を出す必要はありません。数字を揃えて、服務担当に一度聞いてみる。そこから決めれば十分です。
なお、ここで扱った基準は現行(人事院規則14-8および令和6年6月改定のQ&A集)の内容です。制度は改定されることがあるため、実際の判断時点で最新の運用基準を所属先で確認してください。
よくある質問
公務員の副業は法律で全面的に禁止されているのですか?
全面禁止ではありません。国家公務員法第103条は営利企業の役員に就くことと自ら営利企業を営むこと、第104条は報酬を得て他の事業・事務に従事することを制限しています。制限されているのは特定の関わり方であり、収入を得る行為すべてではありません。不動産賃貸や農業には、承認申請なしで行える範囲が基準として定められています。
不動産投資は公務員でも申請なしでできますか?
人事院規則の運用基準では、独立家屋5棟未満・独立区画(マンション等)10室未満・土地の賃貸契約10件未満で、かつ年間の家賃収入(経費控除前の総額)が500万円未満であれば、承認申請なしで行える自営の範囲内とされています。また管理業務を管理会社に委託していることも、兼業に該当しないと判断される要素の一つです。これらの基準を超える場合は、自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)を所轄庁の長を通じて人事院に提出し承認を得る必要があります。
実家の農業を手伝うのに許可は必要ですか?
自家消費を目的とする小規模な農業であれば、兼業許可の申請は不要とされています。一方、営利を主目的とする大規模な農業経営は申請と承認が必要で、労働時間・販売の継続性・常設の販売施設の有無などが総合的に判断材料になります。農業・林業は伝統的に公務員が携わることが認められてきた分野で、特に相続などで承継した家業としての農業は認められやすいとされています。
副業で収入を得たら確定申告は必要ですか?
給与を1か所から受けている人は、給与以外の所得(収入から必要経費を引いた額)が年20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要です。20万円以下であっても、住民税にはこの取扱いがないため、お住まいの自治体への住民税の申告は必要になります。原稿料や講演料が源泉徴収されていても、それだけで手続きが完結するわけではありません。金額が大きい場合や経費の判断に迷う場合は、税務署または税理士に確認してください。
地方公務員にも同じ基準が適用されますか?
完全に同一ではありません。5棟10室基準などは国家公務員法・人事院規則に基づくもので、地方公務員には地方公務員法の規定と各自治体が定める許可基準が適用されます。総務省の分科会(令和7年3月17日)でも地方公務員の兼業について議論が行われています。地方公務員の方は、国の基準を考え方の目安としつつ、実際の判断は所属自治体の基準と服務担当への確認によってください。
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