仕事の優先順位のつけ方、4象限で差がつく理由
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
仕事の優先順位は、緊急度と重要度を別々に判断して4象限に振り分けると決まります。重要かつ緊急なものから着手し、重要だが緊急でないものはカレンダーに予定として置き、緊急だが重要でないものは人やツールに任せ、どちらでもないものは実行しません。振り分けは朝の10分程度で終わります。
タスクが多いから残業になる、とは限りません。順番の決め方が「声の大きい順」になっていると、時間はいくらあっても足りなくなります。
正直なところ、優先順位づけは根性でも段取り力でもなく、判断の型を1つ持っているかどうかで差がつきます。ここで使うのは、緊急度と重要度という2つのものさしでタスクを4つに分ける方法です。朝の10分で今日の仕事を並べ直すところまで、手順として書いていきます。
なぜ優先順位が決められなくなるのか?
手元のタスクを眺めて手が止まるとき、多くの場合は「緊急度」と「重要度」がひとかたまりになっています。鳴っている電話、今届いたチャット、今日締切の依頼——これらは全部「早くやらなきゃ」に見えます。
ただ、緊急の割り込みは自分の優先事項ではなく、他者の優先事項に基づいて発生する傾向があります。誰かが「今すぐ」と言ったから緊急に見えるだけで、自分の目標にとって重要かどうかは別の話です。この2つを分けて判断することが、優先順位づけの出発点になります。
この考え方はアイゼンハワーマトリクス(第34代米大統領ドワイト・D・アイゼンハワーの意思決定法をもとにした、緊急度と重要度の2軸でタスクを4象限に分類する時間管理のフレームワーク)と呼ばれています。スティーブン・コヴィー著『7つの習慣』でも、緊急ではないが重要な領域へ時間を投資することの大切さが説かれています。
緊急度×重要度の4象限とは?
2本の軸で区切ると、タスクは次の4つのどれかに入ります。この4つはそれぞれ第1領域〜第4領域と呼ばれ、以降もこの呼び方で通します。大事なのは分類そのものより、領域ごとに「取るべき行動」が最初から決まっていることです。
| 領域(象限) | 行動 | 具体例 |
|---|---|---|
| 第1領域:重要 × 緊急 | やる(今すぐ着手) | 締め切りが近い報告書作成、クライアントからの緊急依頼対応 |
| 第2領域:重要 × 非緊急 | 予定する(カレンダーに入れる) | スキル習得、ネットワーキング |
| 第3領域:非重要 × 緊急 | 任せる(委任・ツール化) | 電話対応、議事録作成 |
| 第4領域:非重要 × 非緊急 | 削除する(やらない) | 目的のないネットサーフィン |
Asanaの公表データをもとに作成
上の表で目を引くのは、4つのうち自分の手で最後まで実行するのは実質1つだけ、という点です。残りは予定に変える・人に渡す・捨てるという処理になります。優先順位づけが「やる順番を決める作業」ではなく「やらないことを決める作業」でもあるのは、このためです。
重要度の判断は、「そのタスクが自分の担当目標や成果に直結するか」で切ります。やらなくても誰も困らない、あるいは自分でなくても成立するなら、重要度は下がります。逆に、期限は先でも自分の評価やチームの成果に効くものは重要度が高い側です。
今日のタスクを並べ直す手順は?
実際の作業に落とします。朝のうちに10分取れれば十分です。
- 今日触るタスクを全部書き出す頭の中・メール・チャット・付箋から、今日発生しうるものを1行ずつ出します。粒度は揃えなくて構いません。
- 第4領域(非重要×非緊急)から先に消す目標達成の妨げになるだけの作業を最初に削ります。判断に迷うものを残すより、明らかに不要なものを先に落とすほうが速く進みます。
- 残りに緊急/非緊急のフラグを付けるここでは重要度をいったん忘れ、「今日中に動かないと誰かが困るか」だけで判定します。
- 重要/非重要を付けて4象限に振り分ける2つのフラグの組み合わせで、自動的に領域が決まります。
- 領域ごとの行動に変換する第1領域(重要×緊急)は着手順に並べ、第2領域(重要×非緊急)はカレンダーへ時間ごと置き、第3領域(非重要×緊急)は依頼先とツールを決め、第4領域は消したまま戻しません。
手順4まで終わった時点で、「何から手を付けるか」はもう考える必要がなくなります。第1領域の上から順に着手するだけです。
- 優先度ごとに色分けする(例:緑=第1領域、黄=第2領域)
- 各領域のタスクは10個までに絞る
- 仕事用と個人用のリストを分ける
- 第4領域(不要タスク)から先に削除する
Asanaの公表データをもとに作成
領域あたり10個という上限は、地味ですが効きます。第1領域が15個ある日は、優先順位づけの問題ではなく引き受けすぎの問題なので、そこで初めて上司に相談する材料になります。
残業が減るのは第2領域を予定に変えたとき
毎日残業気味という状態は、第1領域(重要×緊急)だけで一日が埋まり続けている状態です。そして第1領域が増える主な原因は、第2領域(重要×非緊急)を後回しにしてきたことにあります。
たとえば、手順書の整備、テンプレートづくり、後輩への引き継ぎ、使っているツールの操作を覚え直すこと。どれも今日やらなくても誰にも怒られませんが、放っておくと必ず「締切前の緊急対応」として戻ってきます。
だからこそ、第2領域はToDoリストに書くのではなくカレンダーに予定として組み込みます。「木曜15:00〜16:00 手順書の整備」のように、会議と同じ枠で押さえてしまう形です。ToDoに置いたままだと、緊急のタスクに毎回上書きされます。
第3領域を手放す言い方は?
非重要×緊急は、誰かがやる必要はあるが自分でなくてよい仕事です。とはいえ、いきなり「これは私の仕事ではないので」とは言えません。実際に使える形にすると、次のような渡し方になります。
- 依頼する場合:「今週は◯◯の締切対応で手が埋まっているので、議事録は△△さんにお願いできますか。フォーマットは共有します」
- 時間を区切る場合:「電話の一次受けは午前中だけこちらで持ちます。午後は◯◯さんの当番でお願いします」
- ツールに寄せる場合:定例の議事録は録音の文字起こしを下地にする、繰り返しの連絡はテンプレート化して使い回す
ポイントは、断る形ではなく「代わりに何を渡すか」をセットにすることです。フォーマット・手順・引き継ぎメモを添えると、依頼はかなり通りやすくなります。
裁量がほとんどない業務——コールセンターの一次対応や、着信順に処理することが仕事そのものである役割では、4象限に振り分ける前提が成り立ちません。この場合に効くのは優先順位づけではなく、処理そのものの短縮(定型文の用意、よくある質問の手元まとめ)です。
また、振り分けに時間をかけすぎると本末転倒になります。1タスクの置き場所が即座に決まらず考え込んでしまうなら、それは重要度の基準が自分の中で固まっていないサインです。まずは上司と「今期、自分が優先すべき成果は何か」をすり合わせるほうが先になります。
一日の終わりに5分だけ振り返る
この方法を続けるうえで効くのは、翌日の精度を上げる短い確認です。実践の成功のカギは、現在の時間配分を把握し、削除可能な業務を認識することにあります。
終業前に、その日実際に時間を使ったタスクを4象限のどこだったか思い出してみてください。第1領域ばかりだった日が続くなら第2領域の予定化が足りておらず、第3領域に時間を取られていたなら渡し方を1つ決める、という具合に打ち手が特定できます。
振り返りを重ねるほど、自分の時間がどこへ流れているかがはっきりしてきます。まずは明日の朝、10分だけ試してみてください。
よくある質問
緊急度と重要度はどう見分ければいいですか?
緊急度は「今日中に動かないと誰かが困るか」で判断し、重要度は「自分の担当目標や成果に直結するか」で判断します。この2つを別々に付けてから組み合わせると、4象限のどこに入るかが自動的に決まります。緊急の割り込みは他者の優先事項に基づいて発生する傾向があるため、緊急に見えるものが必ずしも重要とは限りません。
すべてのタスクが重要に見えて絞れないときはどうしますか?
各領域のタスクを10個までに絞るというルールを先に決め、その上限に収まるように取捨選択します。それでも第1領域(重要かつ緊急)が上限を超え続ける場合は、優先順位づけの問題ではなく業務量の問題なので、その一覧をそのまま上司との相談材料にするのが現実的です。
重要だけど緊急でないタスクを後回しにしないコツはありますか?
ToDoリストではなくカレンダーに予定として組み込むことです。「木曜15:00〜16:00 手順書の整備」のように会議と同じ枠で時間を押さえると、緊急タスクに上書きされにくくなります。ToDoに置いたままだと、緊急の依頼が入るたびに順番を追い越されます。
優先順位づけには毎日どれくらい時間をかけるべきですか?
朝の10分程度で十分です。タスクを書き出し、不要なものを先に削り、緊急と重要のフラグを付けて振り分けるまでが一連の作業になります。1タスクの置き場所が即座に決まらず考え込んでしまうようなら、重要度の基準自体が定まっていないサインなので、まず自分の優先すべき成果を上司とすり合わせるほうが効果的です。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。