いろは堂投資 ← 戻る

金利と債券価格はなぜ逆に動く?デュレーションで分かる下落幅

2026年6月18日|いろは堂投資編集部
株式市場の値動きを示すイメージ

画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

この記事の要点
債券のクーポン(表面利率)は発行時に固定されているため、市場金利が上がると新しく発行される債券のほうが有利になり、既に発行済みの債券は利回りが釣り合うところまで価格が下がります。下落率の目安は「デュレーション × 金利の変動幅」で概算でき、この考え方は債券を組み入れた投資信託の基準価額にもそのまま当てはまります。
😟
金利が上がると債券の価格が下がるって聞くけど、金利が上がるならむしろ得な気がして、頭のなかで繋がらないんです……

「金利が上がる」の主語がどれを指しているかがずれていると、この話は繋がらなくなります。上がっているのは市場全体の金利であって、すでに持っている債券の受取額ではありません。ここを分けて考えると、価格が下がる理由は素直な計算に落ちます。

正直なところ、この話は言葉だけで追うとどこまでも抽象的になります。額面100円の債券を1本だけ想定して、数字を動かしながら見ていくのがいちばん早い道です。

そもそも債券は何が固定されているのか?

固定利付債は、発行されたときにクーポン(表面利率)——毎年いくら利息を払うかの率——が決まり、その後は変わりません。額面100円・クーポン2%なら、市場がどう動こうと年2円を受け取り、満期には額面の100円が戻ってくる。この2つは契約として固定されています。

一方で利回りは違います。利回りは「今この債券をいくらで買うと、満期までに年あたり何%になるか」という、買う人にとっての実質的な条件です。受け取る中身が固定でも、買う値段が変われば利回りは動きます。債券で動く余地があるのは、受取額ではなく価格のほうです。

金利が上がると、なぜ既発債の価格が下がるのか?

市場金利が上がると、新しく発行される債券は、その高い金利水準に合わせたクーポンを付けて出てきます。ここで、すでに発行されている低いクーポンの債券は、投資家から見て見劣りする商品になります。

ただし、既発債の側でクーポンを引き上げることはできません。固定されているからです。そこで調整されるのが価格です。「安く買えるなら、利回りとしては新発債と釣り合う」という水準まで価格が下がることで、市場のなかで選ばれる商品に戻る——これが、金利と債券価格が逆に動く理由です。

金利上昇時に起きていること
  • すでに持っている債券の受取額(クーポン・額面)は変わらない
  • 新しく出る債券のクーポンだけが高くなる
  • 既発債は、利回りが釣り合う水準まで価格が下がる
  • 結果として、途中で売る場合の売却価格が下がる

数値で確認する

具体的な数字で追ってみます。クーポン2%・残存5年・額面100円の債券を持っているとします。ここで市中金利が1%上昇し、3%になったとします。新しく発行される債券は、クーポン3%・額面100円という条件になります。

すると、手持ちのクーポン2%の債券は、新発のクーポン3%債と見合う利回りになるよう、価格が約95円まで下落します(およそ5%の下落)。年2円しか受け取れないぶんを、買う値段の安さで埋め合わせる形です。

満期まで持つ場合は、話が変わります

この95円という価格は、途中で売るときに突きつけられる値段です。満期まで保有し続けるなら、途中の価格変動に関係なく、毎年のクーポンと満期時の額面100円を受け取ります(発行体が支払える限りにおいて、という前提は残ります)。つまり金利上昇による価格下落が実際の損失になるかどうかは、途中で売る必要があるかどうかで決まります。

下落幅はどのくらいになる?デュレーションの使い方

「金利が上がれば下がる」まで分かったら、次に知りたいのは幅のはずです。ここで使うのがデュレーション——金利が1%変動したときに債券価格が何%動くかを示す指標(単位は年)です。

概算の式はとてもシンプルです。式のなかでは、金利変動に対する感応度を表すこの指標を修正デュレーションと呼びますが、月次レポートなどで「デュレーション」として示される年数を、そのまま当てはめて構いません。

価格変動率の概算式
  • 債券価格の変動率(%) ≒ −1 × 修正デュレーション × 金利の変動幅(%)
デュレーション金利1%上昇時の価格変動(概算)
2年約 −2%
5年約 −5%
7.6年約 −7.6%

デュレーションの概算式の解説をもとに作成

上の表のとおり、デュレーション5年の債券なら金利が1%上昇したときの下落はおよそ5%、デュレーション2年の債券ならおよそ2%です。先ほどの残存5年・約5%下落という数値例が、この式ときれいに重なることが確認できます。

金利の動き幅が同じでも、デュレーションが長いほど価格の振れは大きくなります。債券の値動きの大きさは、金利の動きそのものよりもデュレーションで決まると考えると整理しやすくなります。

🤔
デュレーションが長い債券って、要するにどういう債券なんでしょう

おおまかには、償還までの期間(残存年数)が長い債券ほどデュレーションも長くなります。将来の受け取りが遠い先まで続くぶん、今の金利水準が変わったときの影響を強く受けるためです。残存30年の超長期債が「金利に敏感」と言われるのは、この構造によるものです。

債券の投資信託だと、どう影響が出る?

個別の債券を持っていなくても、この話は他人事ではありません。債券ファンドは中身として債券を保有しているため、保有債券の値動きがそのまま基準価額——投資信託の値段にあたるもので、日々公表される1口(または1万口)あたりの評価額——に反映されます。金利が上昇した局面で債券ファンドの基準価額が下がるのは、ここまで見たしくみが束になって効いているからです。

そして便利なことに、ファンドのデュレーションは月次レポートに記載されています。運用会社が公表しているレポートを開けば、そのファンドが金利変動にどれくらい敏感かを、自分で概算できる状態にあります。

  1. 月次レポートを開く保有しているファンド(または検討中のファンド)の名前で、運用会社サイトの月次レポート(マンスリーレポート)を探します。
  2. デュレーションの記載を探すポートフォリオ特性値の欄に「デュレーション」「平均デュレーション」といった項目があり、年数が書かれています。
  3. 概算式に当てはめる金利が1%上昇したと仮定して、デュレーション × 1% を計算します。デュレーション7.6のファンドなら、1% × 7.6 = 約7.6%程度の基準価額の下落、という概算になります。
  4. 自分の保有額で金額に直す保有額が100万円なら、7.6%はおよそ7.6万円。率のままだとピンと来ない場合は、金額に直すと自分の実感に合わせやすくなります。

この作業をしておく価値は、当てにいくことではなくあらかじめ振れ幅を知っておくことにあります。基準価額が下がってから理由を探すのと、下がりうる幅を把握したうえで見るのとでは、判断の落ち着きがまったく違います。

この概算が向いていないケース

デュレーションによる概算は、金利が小さく動いたときの目安として使うものです。金利の変動幅が大きくなるほど実際の値動きとのズレが出ますし、信用リスク(発行体の財務状況)や為替の影響は、この式ではまったく捉えられません。外貨建て債券や外債ファンドでは、為替の変動が金利要因より大きく出ることもあります。「金利要因だけを切り出した目安」として扱うのが安全です。

金利と債券価格の関係を、どう受け止めればいい?

ここまでの内容を、判断に使える形にまとめておきます。金利がこの先どちらへ動くかを言い当てる話ではありません。どちらへ動いたときに自分の保有がどう反応するかを、事前に把握しておくための話です。

確認しておきたいこと
  • 保有している債券・債券ファンドのデュレーションは何年か
  • 金利が1%動いたとき、金額にしていくらの振れになるか
  • その債券は満期まで持てるお金か、途中で使う可能性のあるお金か
  • 外貨建てなら、為替の影響も別途あることを織り込めているか
😌
価格が下がる理由が計算で追えると、値動きを見ても慌てずに済みそうです

債券は「値動きしない安全資産」として語られることがありますが、正確には値動きの理由が構造的に説明できる資産です。株価と違って、金利がどう動いたからいくら動いた、という筋道を後から辿れます。その筋道を先に持っておくことが、そのまま備えになります。

※本記事は債券のしくみに関する教育・情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入を推奨するものではありません。投資は自己責任であり、元本が保証されるものではありません。実際の投資判断にあたっては、目論見書や運用報告書などの一次情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

よくある質問

金利が上がると債券価格が下がるのはなぜですか?

固定利付債のクーポン(表面利率)は発行時に決まり、その後変わらないためです。市場金利が上がると、新しく発行される債券はより高いクーポンを付けて出てきます。すでに発行済みの低いクーポンの債券は、価格が下がって利回りが釣り合う水準になることで、はじめて新発債と比較して選ばれる商品に戻ります。この調整が価格の下落として現れます。

金利が1%上がると、債券価格は何%下がりますか?

おおよその目安は「デュレーション × 金利の変動幅」で計算できます。デュレーション5年の債券なら金利1%上昇で約5%の下落、デュレーション2年なら約2%の下落です。たとえばクーポン2%・残存5年の債券は、市中金利が1%上昇して3%になった場合、価格が約95円まで下落するとされています。

債券の投資信託でも金利上昇の影響を受けますか?

受けます。債券ファンドは中身として債券を保有しているため、保有債券の値動きが基準価額(投資信託の値段にあたる、日々公表される評価額)に反映されます。影響の大きさは、ファンドの月次レポートに記載されているデュレーションから概算できます。デュレーションが7.6のファンドなら、金利が1%上昇したときの基準価額の下落は概算で7.6%程度になります。

満期まで保有すれば、金利上昇による価格下落は関係ありませんか?

満期まで保有し続ける場合、途中の価格変動に関係なく、毎年のクーポンと満期時の額面を受け取ることになります(発行体が支払いを履行する前提です)。価格の下落が実際の損失として確定するのは、途中で売却する場合です。ただし投資信託には満期がないため、この考え方をそのまま当てはめることはできません。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。