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ホルムズ海峡と原油高、株価に効く5つの指標

2026年8月22日|いろは堂投資編集部
暗い画面に赤緑のローソク足チャートと数値が並ぶ株価モニターの写真。

画像出典: Rafael Minguet Delgado / Pexels

この記事の要点
ホルムズ海峡の通航制約による原油高は、株価を機械的に動かすわけではありません。原油価格と日経平均に長期の明確な相関は見られないとされ、影響はガソリン・電気代・企業のコスト増という遠回りの経路で伝わります。見るべきは原油の国際価格、ガソリン価格と補助金、電気代に上乗せされる燃料費分、為替、そして業種別の値動きの5点です。
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原油が上がったってニュースばかり。これって持ってる株、売ったほうがいいってこと?

原油高と株価の関係は、ニュースの見出しほど単純ではありません。原油価格と日経平均の間には、長期的にはっきりした相関は見られないとされています(三井住友DSアセットマネジメント、2026年4月)。つまり「原油が上がったから株は下がる」という一本道の因果はありません。

ただし、影響がゼロというわけでもありません。原油はガソリン代や電気代、そして企業の製造コストという形で、時間差をつけて経済に染み込んでいきます。正直なところ、投資家にとって難しいのはこの「時間差」と「業種ごとの向き」です。ここを整理しておくと、日々のニュースに振り回されずに済みます。

ホルムズ海峡で何が起きているのか?

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾と外洋をつなぐ細い出口です。中東の産油国から出るタンカーは、ほぼここを通ります。世界の海上原油輸送量の約2割がこの海峡を通過しているとされ、ここが詰まると世界中の原油の流れが同時に細くなります。

2026年2月28日、米国とイスラエルによるイラン攻撃を契機に、この海峡は事実上の封鎖状態となり、以降その状態が長期化しています(All About マネー、2026年)。数日で解決する話ではなく、半年以上にわたって供給が停滞している、というのが現在の前提です。

価格の話に入る前に、ニュースで必ず出てくる2つの名前を先に押さえておきます。北海ブレントとWTIは、原油の値段の「代表選手」として世界中で参照されている銘柄名です。北海ブレントは欧州・中東産、WTIは米国産の原油を指し、どちらもニュースで「原油価格」と言われるときの中身はこの2つのどちらかだと考えて差し支えありません。そしてこれらは先物価格——「将来の決まった時期に、この値段で受け渡しします」と今の時点で約束する取引の値段——として報じられます。今日の店頭価格ではなく、市場が先を織り込んだ数字だ、という点だけ覚えておけば十分です。

その北海ブレントの先物のうち、受け渡しが最も近い10月物が、2026年8月21日に一時1バレル94ドル台後半をつけ、7月24日以来およそ1カ月ぶりの高値となりました(日本経済新聞、2026年8月21日)。世界の原油在庫が再び減少局面に入っていることも、需給逼迫の懸念を強めています。

「日本の石油が止まる」話ではありません

国内の原油備蓄は、国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄を合わせて約8か月分(約254日分)が整備されています。供給が途絶えてガソリンスタンドが空になる、という段階の話ではありません。問題は量ではなく価格です。備蓄があってもコスト上昇そのものは避けられません。

原油高はどの経路で家計と企業に届くのか?

海峡の情勢が株価に届くまでには、いくつもの中継地点があります。順番に見ていくと、自分がどの段階のニュースを読んでいるのかが分かります。

  1. 原油先物価格が動く供給不安が出た時点で、北海ブレントやWTIの先物価格に真っ先に反映されます。ここは数時間から数日の世界です。
  2. ガソリン・灯油の店頭価格に乗る原油の輸入から精製、店頭までにタイムラグがあるため、数週間遅れて効いてきます。ここに政府の補助金が挟まると、上がり方が緩みます。
  3. 電気・ガス料金に乗る電気代には、燃料の仕入れ値の変動を毎月の請求に反映する燃料費調整額という項目があります。この上乗せ分を通じて、さらに数カ月遅れて家計に届きます。
  4. 企業のコストと需要に効く輸送費・原材料費・電力費が上がる一方、家計の可処分所得が削られて消費が鈍ります。企業はこの二重の圧力を受けます。
  5. 業績予想と株価に反映される決算や業績予想の修正という形で、最終的に株価へ表れます。ここまで来ると、最初のニュースから数カ月経っていることも珍しくありません。

ガソリンについては、2026年7月時点で補助金が1リットルあたり2.8円程度にとどまり、レギュラーガソリンの「200円超え」が現実味を帯びているという指摘があります(outix防災、2026年7月時点)。補助金の水準は制度改定で変わるため、金額そのものより「補助が厚いのか薄いのか」を見るのが実用的です。

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じゃあ株価に効くのは、ずっと後になってからってこと?

反映の速さは、企業がコストをどれだけ価格に転嫁できるかで大きく変わります。転嫁しやすい業種は業績への打撃が小さく、原材料や輸送費の比率が高くて価格を上げにくい業種ほど、じわじわ効いてきます。だからこそ、指数全体ではなく業種の並びを見る意味があります。

原油高で株が下がるとは限らないのはなぜ?

原油高は、すべての企業にとって悪材料ではありません。エネルギー関連や資源トレーディングを持つ企業にとっては、扱う商品の価格が上がることを意味します。海運は運賃と燃料費の両方が動きます。一方で、電力を大量に使う製造業や、燃料費が固定費に近い運輸業には重い負担です。

指数はこうした正負が混ざった集合体なので、原油だけを説明変数にすると説明がつかなくなります。実際、原油価格と日経平均の間に長期的なはっきりした相関は見られないとされているのは、この打ち消し合いが一因です。ただし供給不安が長期化すれば、企業コスト増とインフレ懸念を通じた間接的な下押し圧力は意識されます(三井住友DSアセットマネジメント、2026年4月)。

今後の展開を占ううえでの焦点は、産油設備そのものに直接被害が出ているかどうかと、海峡の通航制約が続くかどうかの2点だとされています(第一生命経済研究所、2026年)。設備が無事で通航が戻れば価格は落ち着き、どちらかが崩れれば供給不安が一段強まる、という見方です。

見通しは「予想」であって前提ではありません

市場では、原油高が続く前提の弱気な見方も、情勢の落ち着きを織り込む強気な見方も、同時に語られています。どちらも予想であり、確定した前提ではありません。本記事の数値も2026年8月21日を基準日とした時点のものです。判断の際は、その見方がいつ時点の、誰の予想なのかを必ず確認してください。

毎週チェックすべき指標は何か?

ニュースの見出しを追うより、決まった指標を決まった頻度で見るほうが状況を把握できます。週に一度、次の5点を眺めるだけで十分です。

週1回の確認リスト
  • 北海ブレント・WTIの原油先物価格/週次の推移を見る。日々の上下ではなく、1カ月前と比べて水準が切り上がっているかを見る
  • レギュラーガソリンの全国平均価格と補助金の水準/資源エネルギー庁が定期公表。原油から家計への伝わり具合が分かる
  • 電気・ガス料金の燃料費調整額/検針票や電力会社サイトで確認できる。最も遅れて効く経路
  • 為替(ドル円)/円安が原油高と重なると、輸入コストが二重に増える
  • 業種別の値動き/指数だけでなく、商社・海運・エネルギーと、電力多消費型の製造業の差を見る

このうち見落とされがちなのが為替です。原油はドル建てで取引されるため、円安が同時に進むと日本の輸入コストは原油価格の上昇率以上に膨らみます。原油が横ばいでも円安なら国内のガソリンは上がる、という状況は普通に起こります。原油のチャートだけを見ていると、この分を見落とします。

指標をどう読めば判断につながるのか

数字を並べるだけでは動けないので、読み方の目安を持っておきます。原油先物が高値圏で横ばいなら、市場は現状の供給制約をすでに織り込んでいる段階です。一段の上抜けや、逆に急落が起きたときが、前提が変わったサインになります。

ガソリンと電気代は、原油に数週間から数カ月遅れて追随します。原油が下がり始めても、店頭価格はしばらく高いままという時期が生まれるのはこのためです。「原油は落ち着いたのに生活が楽にならない」と感じたら、それは遅れが効いている段階だと理解できます。

業種別の値動きは、市場が原油高をどう解釈しているかを教えてくれます。エネルギー・資源関連だけが買われて内需や電力多消費型が売られているなら、市場は「コスト増が特定業種に集中する」と見ています。全面安なら、原油以外の要因(金利や海外市場)が主役の可能性が高くなります。

個人投資家として何をしておけばよいのか?

こうした局面で有効なのは、銘柄を当てにいくことではなく、自分の持ち高が特定の要因にどれだけ偏っているかを把握しておくことです。原油高が効く業種にポートフォリオが集中していないか、逆に恩恵を受ける側だけに寄っていないかを一度数えてみる。それだけで、ニュースを見たときの落ち着き方が変わります。

もう一つは、判断のきっかけをあらかじめ決めておくことです。「原油が◯ドルを超えたら保有比率を見直す」「業績予想の下方修正が出たら考える」といった形で、見る指標と行動を結びつけておけば、見出しの強さで動かずに済みます。決めた内容は記録しておくと、後から自分の判断を検証できます。

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毎日のニュースじゃなくて、決めた指標を週1で見ればいいのね。

情勢が長期化しているということは、裏を返せば、毎日追いかけても大きくは変わらないということでもあります。週次の推移で水準の変化を捉えるほうが、実際の生活と投資判断には役立ちます。

※本記事は情報提供を目的とした教育コンテンツであり、特定の銘柄・商品の推奨や投資助言ではありません。投資は自己責任であり、元本は保証されません。掲載した数値・情報は2026年8月21日を基準日とした時点のもので、その後の情勢により変動します。税務・投資判断については、必要に応じて専門家にご相談ください。

よくある質問

ホルムズ海峡はなぜ原油価格に大きく影響するのですか?

ホルムズ海峡は世界の海上原油輸送量の約2割が通過する要衝で、中東産油国からのタンカーがほぼここを通ります。通航に制約が生じると世界の原油供給が同時に細くなるため、供給不安が原油価格に直結します。2026年2月28日以降、この海峡は事実上の封鎖状態が長期化しています。

原油が上がると日経平均は必ず下がりますか?

必ず下がるとは限りません。原油価格と日経平均の間には長期的にはっきりした相関は見られないとされています(三井住友DSアセットマネジメント、2026年4月)。エネルギー・資源関連には追い風、電力多消費型の製造業には逆風というように業種ごとに向きが異なり、指数全体では打ち消し合うためです。ただし供給不安の長期化に伴う企業コスト増を通じた間接的な下押し圧力は意識されます。

日本で原油が足りなくなる心配はありますか?

国内の原油備蓄は国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄を合わせて約8か月分(約254日分)が整備されており、供給途絶に対する一定の耐性があります。ただし備蓄があってもコスト上昇そのものは避けられないため、問題になるのは量よりも価格です。

原油高の影響を確認するには何を見ればよいですか?

原油価格の代表銘柄である北海ブレントとWTIの先物価格の週次推移、レギュラーガソリンの全国平均価格と政府補助金の水準、電気・ガス料金に上乗せされる燃料費調整額、ドル円の為替レート、そして商社・海運・エネルギーなど業種別の値動きの5点です。特に為替は、円安が原油高と重なると輸入コストが二重に増えるため見落とせません。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。