米雇用統計とFOMC、日本株が動く理由と発表日の調べ方
画像出典: 写真: AgnosticPreachersKid(CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons)
米雇用統計やFOMCが日本株を動かすのは、米金利の見通しが変わると日米金利差を通じてドル円が動き、円安・円高が日本の輸出企業の採算や海外投資家の売買に跳ね返るためです。ただし米金利上昇は円安要因であると同時に世界的なリスク回避も招くため、方向は一つに決まりません。発表日はBLS(米労働省労働統計局)とFRB(米連邦準備制度理事会)の公式カレンダーで事前に確認できます。
日本株を持っているだけなのに、値動きの理由が海の向こうにある。この距離感が飲み込めないまま、月曜の寄付きを眺めている人は少なくありません。
ここでほどきたいのは、米国の指標 → 米金利の見通し → ドル円 → 日本株という一本の道筋です。この順番さえ頭に入れば、ニュースの見出しから「次に何が動きそうか」を自分で追えるようになります。加えて、雇用統計やFOMC(米国の金融政策を決める会合)がいつ発表されるかを事前に自分で調べる手順まで持ち帰ってください。
米雇用統計とは何を発表しているのか?
米雇用統計は、米国の労働省労働統計局(BLS)が毎月まとめている雇用の統計です。何人ぶんの雇用が増えたか、失業率はどうか、賃金がどれだけ上がったかといった数字が並びます。
市場が見ているのは数字そのものより、事前の市場予想からどれだけズレたかです。予想より強ければ「米国経済は元気だ」、弱ければ「勢いが落ちている」と読まれます。この「予想との差」が、次の段落で説明する金利の見通しを動かします。
雇用が増えることは経済にとって良い話ですが、株式市場は「良い」と「都合がいい」を分けて見ています。景気が過熱していると判断されれば、FRB(米連邦準備制度理事会)は物価を抑えるために金利を上げる方向に傾きやすくなります。金利が上がると企業の借り入れコストが増え、投資家にとっては株を持たずに債券で利回りを得る選択肢も魅力を増します。だから「強い雇用統計」が株にとって重荷になる場面が生まれます。
逆に弱い結果が出ると、景気減速のサインと受け取られる一方で、利下げや金融緩和への期待が高まります。三菱UFJ eスマート証券や野村證券の解説でも、弱い雇用統計は利下げ期待からドル売り・円買い(円高)につながりやすい、という整理がされています。
米金利から日本株まで、どう波及するのか?
ここが本題です。順番に一段ずつ追っていきます。
- 指標が出る米雇用統計やFOMCの結果が発表され、市場予想とのズレが明らかになる。
- 米金利の見通しが変わる強い結果なら利上げ観測、弱い結果なら利下げ観測が強まる。実際の政策変更より先に、見通しの段階で金利が動く。
- 日米金利差が広がる/縮む日本の金利が大きく動かなければ、米金利の変化はそのまま日米の金利差の変化になる。
- ドル円が動く金利差が広がればドルを持つ魅力が増し、ドル買い・円売り(円安)に傾きやすい。縮めばその逆。
- 日本株に届く円安は輸出企業の海外売上を円に換算したときの金額を押し上げ、採算改善の期待につながりやすい。円高はその逆に働く。
この5段目まで来て、ようやく日経平均の話になります。日本企業の業績発表が何もない日でも日本株が動くのは、途中の「為替」という中継地点が海外の材料を運んでくるからです。
逆方向に働く経路もある
ただし、この道筋を「米金利上昇=日本株にプラス」と単純化すると危険です。米金利が急に上がると、米国株の割高感が意識されて世界的にリスクを回避する動きが強まることがあります。そのときは円安であっても日本株が売られます。つまり米金利には、為替を通じたプラスの経路と、リスク回避を通じたマイナスの経路が同時にあるということです。
実際、2025年8月には米雇用統計の悪化を受けて米国株がリスク回避で下落し、その流れが週明けの日本株に波及して日経平均が一時4万円を割り込みました。同じ局面でドル円は151円近辺から147円台半ばへ円高方向に振れています(三井住友DSアセットマネジメント、2025年8月時点のレポート)。また2026年7月4日付の報道では、雇用統計が市場予想を下回った局面でドル円が160円台後半まで動いたと伝えられています。
ここで説明しているのは、値動きが起きたあとに理由をたどるための道筋であって、次の値動きを当てるための公式ではありません。同じ「弱い雇用統計」でも、そのときの局面によって円高が主役になることも、利下げ期待から株高が主役になることもあります。市場関係者の見通しやアナリスト予想を目にしたときも、それはあくまで発表時点での予想であって前提ではないと受け止め、いつ時点の見方かを確認する習慣を持ってください。
ニュースを見たとき、どの順番で確認すればいいのか?
波及の道筋がわかると、確認する順番も決まります。日本株の値動きだけを眺めても理由は見えないので、上流から下流へたどります。
- 米国の指標が予想に対して強かったか弱かったか(数字そのものではなく予想との差)
- 米国の長期金利がその後どちらへ動いたか
- ドル円がどちらへ、どのくらい動いたか
- 米国株(S&P500やナスダック)が上げたか下げたか
- そのうえで日経平均・TOPIXがどう反応したか
この5つを並べると、「円安なのに日本株が下がった」といった一見ちぐはぐな日でも、リスク回避の経路が優勢だったのだと説明がつきます。自分の中で説明がつくかどうかが、値動きに振り回されないための最初の防波堤になります。
FOMCと雇用統計の発表日はどこで確認するのか?
ここからは手を動かす話です。指標の発表日は事前に公開されているので、慌てて後追いする必要はありません。
FOMCの日程を確認する
FOMCは年8回、あらかじめ日程が公表されています。FRBの公式サイト(federalreserve.gov)の金融政策カレンダーのページに一覧があり、各会合の資料もそこから辿れます。2026年の日程は次のとおりです。
| 開催月 | 会合日程 | 経済見通し(SEP)公表 |
|---|---|---|
| 1月 | 1月27日-28日 | なし |
| 3月 | 3月17日-18日 | あり |
| 4月 | 4月28日-29日 | なし |
| 6月 | 6月16日-17日 | あり |
| 7月 | 7月28日-29日 | なし |
| 9月 | 9月15日-16日 | あり |
| 10月 | 10月27日-28日 | なし |
| 12月 | 12月8日-9日 | あり |
Federal Reserve(米連邦準備制度理事会)の公表データをもとに作成
上の表で右端に付けた「経済見通し(SEP)公表」は、参加者による経済成長率・失業率・物価・政策金利の見通しが同時に出される回を示しています。年4回のこの回は、政策金利の判断そのものに加えて先々の金利の道筋まで示されるため、市場が身構えやすい会合です。日程を押さえるなら、まずこの4回から覚えると効率がいいでしょう。
発表時刻は、政策声明が米東部時間の14時、その30分後から議長の記者会見というのが通例です。日本時間に直すと、米国のサマータイム期間で深夜3時台、それ以外の期間で4時台にあたります。つまり日本の投資家にとっては寝ている間に結果が出て、翌朝の寄付きで反応を受け取る形になります。
米雇用統計の発表日を確認する
米雇用統計は原則として毎月第1金曜日、米東部時間の午前8時30分に発表される運用です。日本時間では金曜の夜にあたります。ただし祝日などの都合でずれることがあるため、日付を確定させたいときは公式で確認してください。
- BLSの公式スケジュールを開く米労働省労働統計局のリリース日程ページ(www.bls.gov/schedule/)にアクセスします。
- 該当の統計名を探す雇用統計は英語で「Employment Situation」という名称で掲載されています。この名前で探すと迷いません。
- 発表日と時刻を控える掲載されているのは米東部時間なので、日本時間に換算して自分のカレンダーに入れておきます。サマータイム期間は日本時間で13時間差、それ以外は14時間差です。
- 証券会社の経済指標カレンダーで補う多くの証券会社が日本時間に換算済みの経済指標カレンダーを無料で公開しています。日々の確認はこちらのほうが手軽です。
公式サイトを一度は自分で開いておくことをおすすめします。まとめサイトの日程は転載時点の情報なので、変更が反映されていないことがあるためです。
発表日がわかったら、何をすればいいのか?
日程を把握する目的は、発表に賭けることではありません。むしろ逆で、結果が出るまで方向がわからない日を知っておくためです。
- その日に自分が新規で注文を入れる予定があるか
- 手持ちの銘柄に、円安・円高の影響を受けやすいもの(輸出比率の高い企業など)がどれくらいあるか
- 翌朝の寄付きで想定外の価格になっても耐えられる量を持っているか
- その週に決算発表を控えている保有銘柄がないか
特に3つ目が要です。海外の材料は日本市場が閉まっている間に出るため、売りたいと思った瞬間に売れるとは限りません。翌朝の寄付き価格は、前日終値から離れた場所で付くことがあります。日程を知る価値は、この「動けない時間帯」を意識してポジションの大きさを決められる点にあります。
指標発表の前後は値動きが大きくなりやすく、短時間で往復することも珍しくありません。日程を知ったことで「イベントを取りにいく」方向へ進むと、方向を当てる勝負に変わってしまいます。ここで渡したいのは、値動きの理由を説明できる状態と、動けない時間帯を織り込んだ量の管理です。日程表は攻めの道具ではなく、備えの道具として使ってください。
この理解をどこまで広げればいいのか?
米雇用統計とFOMCが最も注目されますが、同じ道筋をたどる指標はほかにもあります。米国の消費者物価指数(CPI)は物価の実績値として金利の見通しに直結しますし、FOMC後に公表される議事要旨も、参加者の意見の分かれ方から次の一手を読む材料になります。
いずれも見るポイントは同じです。予想とのズレ → 金利の見通し → ドル円 → 日本株。この型を一つ持っておけば、新しい指標名が出てきても当てはめて考えられます。指標カレンダーの見方そのものを整理したい場合は経済指標カレンダーの記事も参考になります。
当てることと理解することは、別の作業です。理由をたどれるようになると、慌てて売買する回数そのものが減っていきます。まずは次の第1金曜と、直近のFOMCの日付をカレンダーに入れるところから始めてみてください。
※本記事は投資判断の参考となる情報の提供を目的とした教育目的の解説であり、特定の銘柄・商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任であり、元本が保証されるものではありません。記載した日程・数値は執筆時点で確認できた公表情報に基づくもので、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
よくある質問
米雇用統計はいつ発表されますか?
米雇用統計(Employment Situation)は原則として毎月第1金曜日、米東部時間の午前8時30分に米労働省労働統計局(BLS)から発表されます。日本時間では金曜の夜にあたります。祝日などで日程がずれる場合があるため、確定した日付はBLS公式サイトのリリーススケジュールページ(www.bls.gov/schedule/)で確認するのが確実です。
米金利が上がると日本株は上がりますか、下がりますか?
どちらにもなり得ます。米金利上昇は日米金利差の拡大を通じて円安に働きやすく、輸出企業の採算改善期待から日本株にプラスに作用する経路があります。一方で米金利の急上昇は米国株の割高感を意識させ、世界的なリスク回避を招いて日本株にマイナスに働く経路もあります。どちらの経路が優勢になるかはその時々の局面によって変わるため、一方向に決めつけない見方が必要です。
FOMCの2026年の開催日程はどこで確認できますか?
FRB(米連邦準備制度理事会)の公式サイト(federalreserve.gov)の金融政策カレンダーページで確認できます。2026年は1月27-28日、3月17-18日、4月28-29日、6月16-17日、7月28-29日、9月15-16日、10月27-28日、12月8-9日の年8回で、うち3月・6月・9月・12月の回は参加者による経済見通し(SEP)も同時に公表されます。
FOMCの結果は日本時間の何時にわかりますか?
政策声明は米東部時間の14時、記者会見は14時30分からというのが通例です。日本時間に換算すると、米国のサマータイム期間はおおむね深夜3時台、それ以外の期間は4時台になります。日本市場が閉まっている時間帯に結果が出るため、日本の投資家は翌営業日の寄付きで反応を受け取ることになります。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。