転職と副業、収入アップの判断軸5つ
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給与への不満を解決する手段は、転職と副業で性質がまったく違います。転職は年収が増えた人の平均で+70万円台(doda 2026年3月版)と伸び幅が大きい一方、下振れもある双方向の選択になります。副業は平均月6.5万円前後の積み上げ型で、失敗しても本業が残ります。賃金テーブルそのものへの不満なら転職、仕事は続けたいが収入だけ増やしたいなら副業が向きます。
給与への不満は、転職を考えるきっかけとして最も多い理由です。パーソルキャリアの転職理由ランキング【2025年版】では「給与が低い・昇給が見込めない」が5年連続の1位で、回答割合は前回の33.6%から36.6%へ3.0ポイント上がりました(2026年2月16日発表)。
ただ、同じ「収入を上げたい」でも、転職と副業では効き方がまるで違います。転職は本業の値札そのものを書き換える手段、副業は本業の外に別の売上をつくる手段です。ここを分けずに悩むと、いつまでも決まりません。
正直なところ、どちらが正解かは人によって変わります。ここでは数字で比較できる材料をそろえたうえで、自分がどちらに向いているかを判断する軸を5つに絞って整理します。
そもそも、なぜ「給与が低い」で悩む人が多いのか?
まず前提を合わせます。給与への不満は個人の甘えではなく、転職市場で最も多い動機です。実際のランキング上位は次のとおりです。
| 順位 | 転職理由 | 回答割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 給与が低い・昇給が見込めない | 36.6%(前回33.6%から+3.0pt) |
| 2位 | 労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある) | 前回より順位上昇 |
| 3位 | 個人の成果で評価されない | 前回より順位上昇 |
パーソルキャリア株式会社の公表データをもとに作成
年代別に見ると、30代から50代は全体と同じく「給与が低い・昇給が見込めない」が1位。20代だけは「労働時間に不満」が1位で、これは新卒初任給の改善が影響していると分析されています。
つまり、働き盛りの年代ほど「時間」より「金額」で悩んでいるということです。同じ悩みを持つ人が3人に1人以上いる以上、まずは選択肢を並べて比べるところから始めれば十分です。
転職だとどれくらい収入が上がる?
転職の伸び幅は、公表データがあります。パーソルキャリアのdodaが継続的に出している「転職前後の年収変動レポート」の直近4回分を並べると、傾向がはっきり見えます。
| 公表月 | 平均年収変動額 | 年収増加者の平均増加額 | 年収増加者の割合 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月版 | 非公開(増加額のみ) | +73.1万円 | 60.4% |
| 2025年11月版 | 非公開(増加額のみ) | +72.7万円 | 58.5% |
| 2026年1月版 | +5.7万円 | +71.4万円 | 非公開 |
| 2026年3月版 | +5.1万円 | +71.8万円 | 非公開 |
パーソルキャリア株式会社(doda)の公表データをもとに作成(版によって開示指標が異なります)
ここで注目してほしいのは、2つの数字の差です。転職者全体の平均変動額は+5万円台なのに、年収が増えた人だけを見ると平均+70万円台。この開きは、下がった人が平均を押し下げているという意味です。
言い換えると、転職は「全員が少し上がる」制度ではなく、上がる人は大きく上がり、下がる人もそれなりにいる賭けの構造をしています。2025年11月版では増加した人の割合が58.5%、2025年9月版では60.4%でした。おおよそ6割前後、という規模感です。
職種による差もあります。年収増加者の割合が高いのは「クリエイター・クリエイティブ職」で67.9%、「技術職(SE・インフラ・Webエンジニア)」で66.1%(doda、2025年12月ごろ公開)。手に職の要素が強い職種ほど、転職で値札を書き換えやすい傾向です。
識学が2022年6月に過去3年以内に転職した22〜59歳の会社員1000サンプルへ行った調査では、59.7%が転職先で「後悔・失敗した」と回答し、理由の最多は「給与が思ったより低かった」でした(次点は「組織風土が合わなかった」)。金額だけを見て決めると、この落とし穴を踏みます。
年収が増えた人の割合と、転職を後悔した人の割合は、両立します。年収が上がっても働き方や組織風土が合わなければ後悔として答えるからです。金額が上がることと、満足することは別の指標だと分けて考えるのが、転職を検討するときの最初のコツです。
副業だとどれくらい収入が増える?
副業側の数字も見ておきます。dodaの副業実態調査では、副業をしている会社員の平均収入は月額およそ6.5万円。年代別では40代以上が最も高く、月10万円近い副収入という結果でした(doda、2026年8月時点で公開の最新版)。
年換算すると70〜80万円前後。先ほどの「転職で年収が増えた人の平均+70万円台」と、実は近い水準に届きます。ただし到達の仕方がまったく違います。転職は入社した月から反映される一括の変更、副業は稼働した分だけ積み上がる従量の収入です。
副業をする人自体も増えています。パーソル総合研究所の「副業の実態・意識に関する定量調査(第4回)」では、正社員の副業実施率は2025年時点で11.0%。調査開始の2018年以来で最高、2023年から4.0ポイント上がりました(調査期間2025年8月1〜7日、個人調査62,320名)。20代男性は11.4ポイント増の20.2%と、伸び幅が最も大きい層です。
- 趣味的な小遣い稼ぎ:62.6%
- 本業収入だけでは生活費が不足:51.6%
- 現職の将来収入への不安:51.6%
「生活費が不足」と「将来収入への不安」が同率で並んでいるのが、この調査のおもしろいところです。今困っている人と、まだ困っていないが備えたい人が、同じ数だけ副業を始めているということになります。
ランサーズのフリーランス実態調査2024年(2025年1月実施)では、フリーランスの年収は99万円以下の層が約7割を占め、最多層は「10万円未満」でした。副業目的でない人も含む母集団なので単純比較はできませんが、始めたばかりの時期は月数千円から数万円というのが現実的な想定です。平均6.5万円は、続けた先の到達点として見てください。
転職と副業、5つの軸でどう違う?
ここまでの数字を、判断に使える形に並べ直します。
| 比較軸 | 転職 | 副業 |
|---|---|---|
| 収入の伸び方 | 入社時に一括で変わる。増えた人の平均は+70万円台/年 | 稼働に応じて積み上がる。平均は月6.5万円前後 |
| 下振れリスク | あり。年収が下がる人も一定割合いる | 本業は残る。損失は主に時間 |
| 始めるまでの時間 | 在職中の準備・選考・入社時期調整で数か月 | 案件次第で今週から着手できる |
| 必要な手続き | 退職手続き、社会保険や年金の切り替え | 就業規則の確認、所得20万円超なら確定申告 |
| 解決できる不満 | 賃金テーブル・評価制度そのものへの不満 | 仕事は続けたいが金額だけ足りない状態 |
この表で最も重要なのは一番下の行です。不満の原因が「会社の給与の決まり方」にあるなら、副業をいくら積んでも本業の値札は変わりません。逆に、仕事内容も人間関係も悪くないのに金額だけが足りないなら、転職で全部を賭け直すのは割に合わない可能性があります。
もう一点、副業には会社側の条件があります。パーソルイノベーションが2025年5月に全国20〜40代の会社員674名へ行った調査では、副業容認企業に勤める割合は27.5%(前回比+2.2pt)。逆に言えば、まだ7割強は容認されていない環境です。就業規則の確認は、案件を探すより先にやることになります。
自分はどっち向き? 判断のしかた
次のチェックで、当てはまる数が多いほうが今のあなたに向いています。
- 評価は悪くないのに、昇給の上限が制度で決まっている
- 同じ職種の求人を見ると、明らかに提示額が高い
- 仕事内容そのものにも不満がある
- クリエイティブ職・技術職など、年収増加者の割合が高い職種にいる
- まとまった額を、来年ではなく数か月後に必要としている
- 今の仕事も人間関係も、辞めたいほどではない
- 不足額が月3〜10万円くらいで、年収を100万円上げる必要まではない
- 本業のスキルを外でも売れる感触がある
- 会社が副業を認めている、または申請すれば通りそう
- 収入だけでなく、将来使えるスキルも増やしたい
転職と副業のどちらも同じくらい当てはまるなら、副業から始めるのが合理的です。理由は、副業は転職の準備にもなるからです。外で通用するスキルかどうかを実際の案件で確かめられますし、実績が残れば転職の面接でも語れる材料になります。転職を先にすると、合わなかったときに戻る場所がありません。
副業を選ぶなら、最初の1案件までの手順は?
副業側を選んだ人向けに、着手から最初の入金までの流れを具体的に置いておきます。
- 就業規則を確認する(所要30分)社内ポータルの就業規則で「兼業」「副業」の項目を検索します。禁止・許可制・届出制・自由のどれかを確認し、許可制なら申請書の様式まで見ておきます。
- 売るものを1つに決める(所要1時間)本業でやっていることのうち、外の人が代わりにやってほしいと思う作業を1つ選びます。資料作成、文章、データ整理、動画の編集、簡単なサイト修正など。複数を同時に始めると、どれも実績が残りません。
- 実績サンプルを1点つくる(所要3〜5時間)まだ受注していなくても、架空の題材で成果物を1点つくります。応募時にこれがあるかないかで、返信率がはっきり変わります。
- 単価の下限を決めてから応募する(所要30分)「時給換算でいくらを下回ったら受けない」を先に紙に書きます。決めずに応募すると、目先の受注欲しさに時給500円の仕事を引き受けることになります。
- 小さい案件を1件だけ完遂する(1〜2週間)最初は金額より「納品して評価をもらう」ことを目的にします。1件終われば、次からは実績を根拠に価格交渉ができます。
- 入金と経費を記録し始める(毎月10分)入金日・金額・経費を、表計算ソフト1枚に記録します。年明けに慌てないための唯一の対策です。
副業の税金、いくらから申告が必要?
会社員が副業を始めるときに必ず出てくるのが、この話です。基準はシンプルです。
給与所得者が副業で得た「所得」(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。20万円以下なら所得税の申告は原則不要です。
ここで間違えやすいのが2点あります。
この20万円の特例は所得税だけに適用されるもので、住民税には同様の非課税特例がありません。そのため所得が20万円以下でも、住民税の申告は別途必要です。また、本業がすでに事業所得の個人事業主にはこの20万円ルール自体が適用されません。
もう1点は、判定するのが「収入」ではなく「所得」だということです。売上が30万円でも、機材や通信費などの経費が12万円あれば所得は18万円になります。だからこそ、手順6の記録が効いてきます。
副業をすると社会保険はどうなる?
税金と並んで気になるのが、健康保険と厚生年金の扱いです。ここは副業の「働き方」で分かれます。
業務委託やフリーランスとして請け負う形の副業なら、本業の会社の社会保険に入ったままで、副業側で新たに加入手続きが発生することはありません。一方、副業先とも雇用契約を結び、その勤務先でも社会保険の加入条件を満たした場合は、2社で同時に被保険者になる「二以上事業所勤務」の扱いになります。この場合は本人が届出を行い、両社の報酬を合算したうえで保険料が決められ、その保険料を各社が報酬額の割合に応じて分け合って負担する形になります。
つまり、アルバイトのように雇われる副業を選ぶと、勤務時間によっては手続きが本業の会社にも及びます。手続きを増やしたくないなら、業務委託型の副業を選ぶほうが実務は軽くなります。金額や勤務時間の条件は状況で変わるため、雇用型の副業を検討する段階で、日本年金機構や加入している健康保険組合に確認しておくと確実です。
詳しい要件はマネーフォワード クラウド確定申告の解説などで確認できます。金額が大きくなってきたら、税理士に一度相談したほうが結果的に安くつきます。
転職を選ぶなら、何から手をつける?
転職側を選んだ場合も、いきなり応募する必要はありません。
- 今の年収の位置を確かめるdodaの平均年収ランキング2025によると、正社員の平均年収は429万円で、2022年以降3年連続の上昇、前年比+3万円と2017年以降8年間で最高値でした。まず自分の職種・年代の相場に対して、どこにいるかを知ります。
- 求人の提示額だけを10件見る応募はせず、同職種の求人の提示レンジだけを10件確認します。現職と差がないなら、原因は会社ではなく職種の相場かもしれません。
- 金額以外の条件を先に書き出す後悔理由の上位には「組織風土が合わなかった」も入ります。譲れない条件を金額と並べて先に決めておくと、面接で確認すべきことが明確になります。
- 職務経歴書を1枚だけ更新する応募を決めていなくても構いません。書けることが少ないと感じたら、それは副業で実績を積むべきサインでもあります。
決めるのは、材料がそろってからで間に合います。転職も副業も、今週やることは「相場を知る」か「就業規則を開く」のどちらかで十分です。そこまで進めば、半年止まっていた判断が動き出します。
よくある質問
転職と副業、収入アップの効果が大きいのはどちらですか?
伸び幅の大きさでは転職です。dodaの転職前後の年収変動レポート2026年3月版では、年収が増加した人の平均増加額は+71.8万円でした。ただし転職者全体の平均変動額は+5.1万円にとどまり、年収が下がる人も一定割合います。副業はdodaの実態調査で平均月額約6.5万円と積み上げ型ですが、失敗しても本業の収入は残ります。
会社員の副業は、いくら稼いだら確定申告が必要ですか?
給与所得者の場合、副業で得た所得(収入から経費を引いた金額)が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。20万円以下なら所得税の申告は原則不要ですが、住民税には同様の非課税特例がないため、20万円以下でも住民税の申告は別途必要になります。なお本業がすでに事業所得の個人事業主には、この20万円ルールは適用されません。
副業をすると社会保険の手続きは必要ですか?
業務委託やフリーランスとして請け負う副業であれば、本業の会社の社会保険に加入したままで、副業側での新たな加入手続きは発生しません。副業先とも雇用契約を結び、その勤務先でも社会保険の加入条件を満たす場合は、2社で同時に被保険者となる「二以上事業所勤務」となり、本人の届出のうえで両社の報酬を合算して保険料が決まり、その保険料を各社が報酬額の割合に応じて分け合って負担します。条件は勤務時間などで変わるため、雇用型の副業を検討する段階で日本年金機構や加入中の健康保険組合に確認してください。
転職理由で「給与が低い」と答える人はどのくらいいますか?
パーソルキャリアが2026年2月16日に公表した転職理由ランキング【2025年版】では、「給与が低い・昇給が見込めない」が36.6%で1位でした。前回の33.6%から3.0ポイント上昇し、5年連続の1位です。年代別では30代から50代で1位、20代のみ「労働時間に不満」が1位となっています。
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