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翻訳の単価交渉、専門分野特化で20円超を狙う手順

2026年10月14日|いろは堂副業編集部
屋内の机に並べたノートパソコン数台とノートに、人物が片手でペンを持つ様子

画像出典: ぱくたそ (pakutaso.com)

この記事の要点
翻訳の単価は「英語ができるか」ではなく「どの分野を任せられるか」で決まります。汎用的な英文和訳の単価は機械翻訳の普及で下がった一方、医療・治験・特許・ITといった専門分野は英日1ワード15〜40円の目安が示されています。分野を1つ決め、過去の納品実績をその分野の語彙で棚卸しし、契約更新のタイミングに希望単価を自分から先に出す、という順番が交渉の現実的な進め方です。
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3年も受けてるのに単価が最初から一度も上がらない。交渉したら切られそうで言い出せない…

翻訳や通訳の仕事を続けていると、仕事量は増えたのに1案件あたりの手取りが変わらない、という段階に来ます。正直なところ、ここで止まる人はとても多いです。原因は営業力より前にあって、「汎用の翻訳者」という見え方のままだと、単価は市場の相場に引きずられるという構造にあります。

機械翻訳が実務に入ってきたことで、一般的な英文和訳の単価は過去10年で約4割下がったとされています。一方で医療・法務・特許・ITといった専門分野は、単価が維持から上昇の傾向と言われます。つまり交渉で押し返すより、どの分野の人として扱われるかを変えるほうが効きます。ここでは、これから1案件目を取る人の道筋と、すでに案件を受けている人が分野特化を打ち出して単価を上げるまでを、順番どおりに置いていきます。

なぜ専門分野を決めると単価が上がるのか?

発注側から見ると、汎用の翻訳者は代わりが見つかります。機械翻訳の下訳に手を入れればいい文書なら、相場はどうしても下に引っ張られます。けれど医薬品の添付文書や治験関連の文書、特許明細書は、訳し間違いが審査や安全性に直結します。ここでは「安いから発注する」が成り立ちません。

国内の医療翻訳は、医療機器・医薬品・臨床データの三分野を合わせて年間数百億円規模とみられています。また日本の在留外国人数は2025年時点で約340万人とされ、医療機関での言語対応のニーズが医療通訳の需要を押し上げていると言われます。需要の中身が「誰でもできる訳文」から「責任を持てる訳文」に寄っているのが、いまの地合いです。

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でも医療も特許も勉強したことがない。いまから専門って言えるの?

専門分野は、資格を取ってから名乗るものではありません。すでに受けた案件のなかで一番数をこなした領域が、実質あなたの専門です。ITのマニュアル翻訳を20本やっていれば、それは「IT翻訳の実績20本」として説明できます。先に名乗り、あとから検定や知識で裏打ちしていく順番のほうが、収入は早く動きます。

実績がゼロなら、最初の1案件はどう取る?

まだ受注経験がない段階では、交渉の話はいったん後回しです。最初の1案件は「安く受けて実績を作る」のではなく、応募できる状態を先に整えるところから始まります。やることは多くありません。

  1. 受ける方向を仮決めするこれまでの仕事・学んだこと・読み慣れた文書から、近い領域を1つ選びます。前職が介護なら医療、情報システム部門ならIT、といった距離の近さで十分です。この時点では専門を名乗る必要はなく、応募先を絞るための仮の軸です。
  2. 訳文サンプルを2本作る選んだ領域の公開文書(公的機関の資料や企業が公開しているマニュアルなど)から、各400〜600ワードを選んで訳します。1本は説明文、1本は手順書のように文書種別を変えておくと、応募先が判断しやすくなります。
  3. プロフィールを文書種別で書く「英語が得意」ではなく「◯◯分野の手順書・説明文の英日翻訳」と、扱える文書の種類で書きます。使える翻訳支援ツール、1日に処理できるワード数、対応できる納期も添えます。
  4. クラウドソーシングで小さく1本受ける入門案件の単価は分野によって5〜10円程度まで下がることがありますが、ここは金額より「納品して評価が残る」ことが目的です。短納期・大量の案件は避け、1,000〜3,000ワード程度の案件から入ります。
  5. 翻訳会社のトライアルに出す1〜2本の納品実績ができたら、翻訳会社の登録トライアルへ応募します。JTF(日本翻訳連盟)には加盟する翻訳会社が220社あり、JTFのほんやく検定の1級・2級取得者は一部のトライアルで優遇される場合があるとされています。会社経由の取引に移ると、同じスキルでも単価の水準が上がります。
初回応募までにそろえる4点
  • 仮決めした分野と、そこに近い自分の経歴
  • 訳文サンプル2本(文書種別を分けたもの)
  • 扱える文書種別・1日あたりのワード数・納期条件
  • 使用している翻訳支援ツールと、作りかけでも構わない用語集

最初の数本は時間あたりの収入が低くなります。そこは割り切って、納品の型(調べ方・見直し手順・用語の管理方法)を作る期間と考えてください。この型があると、2案件目以降の処理速度が上がり、分野特化の話に進めます。

分野ごとの単価はどれくらい違う?

単価の差を見ておくと、どこへ寄せるかの判断がしやすくなります。英日翻訳の1ワードあたりの目安を、分野別に並べます。

分野・段階英日の単価目安(1ワード)
未経験・初心者(一般実務)3〜8円
中級者(実務3年以上・一般実務)10〜20円
IT翻訳(技術・マニュアル)14円から(専門性が高いものは15〜25円)
特許翻訳(翻訳会社経由)12〜20円(経験次第で20〜35円)
治験関連文書15〜25円(高難度・短納期で30円超も)
医療・医薬翻訳20〜40円

翻訳分野の情報サイトが示す単価目安をもとに作成(公的な統計として公表されている数値ではありません)

この数字は、調査主体や回答者数が公表された統計ではなく、業界の情報サイトが示す目安です。実際の提示額は発注元の規模や取引経路で動くので、自分の相場と一致するとは限りません。目安はあくまで交渉の当たりをつけるための物差しとして使ってください。

経路でも差が出ます。特許翻訳はクラウドソーシング経由の入門案件だと5〜10円まで下がることがあります。同じスキルでも、どこから受けるかで単価が倍以上変わるということです。分野特化と並行して、取引先の種類を見直す価値はあります。

提示単価と手取りは別の数字

単価の話をするとき、どこまで引いた金額かを混ぜないでください。上の表はいずれも税抜・各種手数料を引く前の提示単価です。実際に口座に入るまでには、プラットフォーム経由ならその手数料が引かれ、原稿料として源泉徴収の対象になる取引では所得税相当分が差し引かれます。消費税は課税事業者かどうかで扱いが分かれます。

交渉の前に、直近の案件を1つ選んで「提示単価 → 手数料控除後 → 源泉徴収後」の3段で紙に書き出してみてください。これをやると、単価1円の差が年間でいくらになるかが具体的な金額で見えます。言い出す勇気は、気持ちより計算から出てきます。

分野特化を打ち出す準備はどうやる?

交渉の成否は、話し方より準備で決まります。ここは順番どおりに進めてください。

  1. 分野を1つに絞る過去1年の納品案件を一覧にし、件数とワード数が多い領域を特定します。2つで迷ったら、継続案件がある側を選びます。専門は複数名乗るほど薄まります。
  2. 実績をその分野の語彙で書き直す「マニュアル翻訳10本」ではなく「クラウド製品の管理者向けマニュアル、英日で計8万ワード」のように、文書種別・対象読者・分量まで書きます。発注側は分量と文書種別で難易度を判断します。
  3. 用語集とスタイル対応を見える形にする自分で作った分野用語集の項目数、指定スタイルガイドへの対応経験、翻訳支援ツールの使用歴を書き出します。これは「次も同じ品質で出せる」という根拠になります。
  4. 検定で第三者の裏打ちを足すJTF(日本翻訳連盟)のほんやく検定は、科学技術・医学薬学・情報処理などの分野別にオンラインで受験でき、1級〜5級があります。自分の専門分野での翻訳力を具体的に示せます。
  5. 値上げ後の価格表を作っておく希望単価を分野・文書種別ごとに1枚にまとめます。聞かれてから考えると、その場で安い額を言ってしまいます。
交渉を切り出す前にそろえる5点
  • 絞った分野と、その分野での累計ワード数
  • 直近の案件で守った納期と修正依頼の件数
  • 自作用語集の項目数・使用している翻訳支援ツール
  • 希望単価(分野別・文書種別の1枚の表)
  • いまの単価の手取り試算(手数料・源泉徴収後まで)

資格は何から考えるといい?

医療や特許の分野では、英語力そのものより英文解釈力が重視され、TOEIC900点以上・英検1級程度が目安の足切り水準として語られることが多いです。これは業界の一般論で、公式に統一された基準ではありません。すでに案件を受けている人なら、ここはおおむね通過しているはずです。

そのうえで分野を示す材料になるのが、JTFのほんやく検定です。JTFには加盟する翻訳会社が220社あり、1級・2級の取得者はトライアルで優遇される場合があるとされています。治験の方向に寄せるなら、日本CRO協会(CROは医薬品開発業務受託機関のことで、製薬会社から治験の実務を受託する企業です。その業界団体にあたります)が2015年から毎年実施している治験実務英語検定も専門性を示す材料になり得ます(開催日や受験要領は、申し込む前に実施団体の案内で確認してください)。

JTFの翻訳品質認証について、英日1ワード8円から10円への引き上げに成功した例が紹介されています。ただしこれは個別の事例で、取れば上がると一般化できるものではありません。資格は交渉の材料のひとつで、本体は実績のほうです。

単価交渉はいつ、どう切り出す?

タイミングは3つあります。契約更新時、相手の繁忙期、そして大きな成果を出した直後です。逆に単発案件の納品直後や、相手がトラブル対応で手一杯なときは避けます。

切り出し方で大事なのは、希望単価を自分から先に出すことです。相手の提示額を基準にすると、そこから下にしか動きません。先に数字を置けば、交渉の基準点が自分側になります。

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数字を先に言うのが一番こわい。角が立たない言い方ってある?

言い方の骨格は「変化の報告 → 具体的な根拠 → 希望単価 → 相手に残す余地」の4つです。値上げのお願いではなく、提供できる内容が変わったことの報告として組み立てます。文例にすると、こうなります。

「お取引を始めた当初は一般的なIT文書を中心にお受けしていましたが、この1年でクラウド製品の管理者向けマニュアルを計8万ワード担当し、御社指定のスタイルガイドにあわせた用語集も400項目ほど整備しました。この分野については、次期より1ワード◯円でお受けしたいと考えています。ご予算の都合があれば、対象を◯◯分野の案件に限る形などもご相談できます。」

最後の一文で逃げ道を残すのが実務的です。全案件の一律値上げは相手の予算構造では通りにくく、分野や文書種別を限定した値上げなら通ることがよくあります。満額でなくても、高単価の枠が1つできれば次の交渉の基準になります。

断られたときは何を聞くか

その場で引き下がらず、条件を聞いてください。「どの条件なら単価を見直せますか」と尋ねると、相手の社内基準が見えます。納品形式の統一、特定分野の優先対応、翻訳支援ツールでの作業といった条件が出てくることがあります。条件が示されたなら、交渉は次回に続きます。何も出てこないなら、その取引先では構造的に上がらないという情報が手に入ったことになります。

通訳の単価はどう考える?

通訳は翻訳と単価の数え方が違い、時間単位や半日・全日単位での設定が一般的です。医療通訳の需要が伸びているとされる一方で、分野別の時間単価の相場として広く公表された数値は見当たりません。だからこそ、交渉では相場に頼らず自分の記録を使います。

具体的には、対応した場面の種類(外来の問診、検査説明、企業の技術打ち合わせなど)、拘束時間と移動時間、事前に読み込んだ資料の量を案件ごとに記録しておきます。拘束時間と準備時間を足した実働で単価を出すと、現在の時間単価が実際にはいくらかが見えます。この数字があれば、「移動と事前準備を含めると実働◯時間なので、◯円でお願いしたい」という形で根拠を示せます。

税金・勤務先の規定・保険はどうなる?

単価と並んで最初につまずくのが手続きの面です。順番に整理します。

確定申告は何をいつまでにやるか

翻訳の報酬は、会社員の給与とは別に自分で計算して申告する所得にあたります。申告が必要かどうかは所得の金額や給与以外の収入の有無で変わり、必要な場合は原則として翌年の2月16日から3月15日までに前年分を申告します。自分が該当するかは国税庁の案内で確認するのが確実です。

実務として効くのは記録です。報酬の明細(源泉徴収された金額が分かるもの)、辞書・用語集・翻訳支援ツールの購入費、通信費、通訳で発生した交通費の領収書を、月ごとにまとめて保管してください。源泉徴収された所得税は、申告したうえで納めるべき税額より多ければ戻ります。引かれた分を取り戻す手続きが申告でもあるので、明細の保管が直接お金に関わります。

会社員が副業で受けるときの確認点

勤務先がある場合は、就業規則の副業に関する条項を先に読んでください。全面禁止か、許可制か、届け出だけでよいのかで動き方が変わります。許可制なら、業務内容・想定する稼働時間・勤務先の業務と競合しないことを書いて申請します。

先に確かめておきたいこと

守秘義務は翻訳の副業で特に重い論点です。勤務先の資料・社内用語集・顧客情報を副業の案件に持ち込むことはできません。逆に、翻訳案件で扱う文書も秘密保持契約の対象になることが多く、取引先名を実績として公開できない場合があります。交渉用の実績は、公開可否を確認したうえで「分野・文書種別・ワード数」で書くのが安全です。

保険と年金はどう扱われるか

会社員として勤めながら副業で翻訳を受けている間は、健康保険・厚生年金は勤務先の加入が続きます。副業の報酬は事業所得または雑所得として扱われ、所得が増えると翌年度の住民税や、国民健康保険に加入している人であれば保険料の計算に影響します。

独立して専業になる場合は、国民健康保険と国民年金への切り替えが必要です。会社を辞める場合には、勤務先の健康保険を任意継続する選択肢もあります。どちらが有利かは前年の所得や扶養の人数で変わるため、退職前に加入先の窓口で両方の保険料を試算してもらってください。単価が上がってから独立を考えるときは、この固定費の差を先に数字で把握しておくと判断を誤りません。

向いていないケースもあります

いまの取引先が1社だけの場合、交渉は慎重に進めてください。断られて関係が冷えたときに収入がゼロになる状態では、対等な話し合いになりません。先に2社目・3社目の取引を作ってから交渉に入るほうが安全です。

また、分野特化は勉強の時間を要します。医療や特許は専門知識の蓄積が前提で、短期間で単価が跳ねる話ではありません。副業として使える時間が週に数時間しかない段階では、まず汎用案件で納品の型を安定させるほうが先です。単価より先に取引の安定を作る、という順番もあります。

今日からできる一歩は?

まだ受注がない人は、選んだ領域の公開文書から400〜600ワードを1本訳すところまで。すでに案件を受けている人は、過去1年の納品案件を書き出して件数の多い分野を1つ選ぶところまでやれば十分です。ここが決まると、読む資料も受ける案件も自然に寄っていきます。

そのうえで、次の契約更新の時期を手帳に書き込んでください。交渉は思いついた日ではなく、更新の少し前に持っていくほうが通ります。単価を上げる行為は、相手にお願いすることではなく、扱える仕事の範囲が変わったことを伝える作業です。知ってから決めればいい話なので、まずは自分の実績の棚卸しから始めてみてください。

よくある質問

翻訳の専門分野はどう選べばいいですか?

過去1年の納品案件を一覧にして、件数とワード数が最も多い領域を選ぶのが現実的です。知識がない分野を一から学ぶより、すでに実績があり継続案件のある領域を専門として打ち出すほうが早く単価交渉の材料になります。専門は複数名乗ると薄まるため、まずは1つに絞ります。

実績がない状態で最初の翻訳案件を取るにはどうしますか?

これまでの仕事に近い領域を仮決めし、公開文書から400〜600ワードの訳文サンプルを2本作り、扱える文書種別と1日あたりのワード数を書いたプロフィールを用意してから応募します。まずクラウドソーシングで1,000〜3,000ワード程度の案件を受けて納品実績を作り、その後に翻訳会社の登録トライアルへ進むと単価の水準が上がります。

翻訳の副業をすると確定申告や保険はどうなりますか?

翻訳の報酬は給与とは別に自分で計算して申告する所得にあたり、申告が必要な場合は原則として翌年2月16日〜3月15日に前年分を申告します。源泉徴収された所得税は申告によって精算され、納めるべき額より多く引かれていれば戻ります。会社員として勤めている間は健康保険・厚生年金は勤務先の加入が続き、専業として独立する場合は国民健康保険と国民年金への切り替え、または勤務先の健康保険の任意継続を選ぶことになります。

医療翻訳や治験翻訳の単価はどれくらいですか?

医療・医薬の英日翻訳は1ワード20〜40円、和文英訳は1文字15〜30円が相場とされ、治験関連文書は15〜25円、高難度や短納期の案件では30円を超える場合もあるとされています。これらは業界の情報サイトが示す目安であり、調査主体や回答者数が公表された統計ではないため、実際の提示額は取引経路や発注元によって変わります。

単価交渉を切り出すタイミングはいつが適切ですか?

契約更新時、相手の繁忙期、大きな成果を出した直後の3つが切り出しやすいとされています。逆に相手がトラブル対応中のときや単発案件の納品直後は避けます。希望単価は相手の提示を待たず自分から先に伝えると、交渉の基準点を自分側に置けます。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。