読書習慣の続け方、積読でも回る5つの仕組み
画像出典: 写真: Shixart1985(CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
読書が続かないのは意志の弱さではなく、始めるまでのハードルが高いことが原因になりやすいです。1日1ページを下限にし、本を開く場所と時間を先に決め、読む本を2〜3冊並行にしておくと再開しやすくなります。積読は捨てるものではなく、次に読む候補の在庫として扱うと止まりません。
買った本が机の上に積まれたまま動かない状態は、じつはかなり多くの人が抱えています。丸善ジュンク堂書店が2019年に全国40店舗で行ったアンケート(2,104人回答)では、積読が「ある」と答えた人は79%。6冊以上ある人が66%、31冊以上ある人も23%いました。
正直なところ、ここで必要なのは「もっと気合いを入れる」ことではありません。読書が止まるのは、たいてい本を開くまでの動作が多すぎるからです。続く人は意志が強いのではなく、開くまでが短い。そこを設計し直せば、積読があっても読書は再開できます。
なぜ読書習慣は続かないのか?
まず前提をひとつ合わせておきます。読めていないのは、あなただけの状況ではありません。文化庁「令和5年度 国語に関する世論調査」(2024年3月調査・16歳以上3,559人)では、月に本を何冊読むかがこの20年ほどで大きく入れ替わっています。
| 調査年度 | 1か月に1冊も読まない | 1冊以上読む |
|---|---|---|
| 平成14年度 | 47.5% | 52.3% |
| 令和5年度 | 62.6% | 36.9% |
文化庁「令和5年度 国語に関する世論調査」の公表データをもとに作成(本は電子書籍を含み、雑誌・漫画を除く)
1か月に1冊も読まない人は、平成14年度の47.5%から令和5年度は62.6%へ増えました。裏を返せば、月に1冊読むだけで上位3分の1にあたる36.9%に入れるということです。つまり目標は「毎日たくさん読む」ではなく、「ゼロの月をつくらない」で十分に成立します。ここを勘違いして最初から高い基準を置くと、1日読めなかった時点で終わってしまいます。
先ほどの丸善ジュンク堂の調査では、積読になる理由の最多は「他に優先して読む本が増えた」、次いで「本を読む時間がない」でした。読めていないというより、順番が入れ替わり続けている状態です。だとすれば、直すべきは根性ではなく順番の管理になります。
読書習慣のつけ方:まず下限を1ページにする
習慣化でいちばん効くのは、目標を「達成できないほうが難しい」水準まで下げることです。新しい行動は脳に負荷がかかるため定着しにくく、極小の目標から始める「小さな習慣」の考え方がよく紹介されます。読書なら1日1ページ、極端に言えば1行でも成立とします。
- 1日1ページ読んだら達成
- 本を開いて目次を眺めたら達成
- 3分だけタイマーをかけて読む
下限が低いと、忙しい日でも記録が途切れません。ここが重要で、続かない人の多くは読めなかった日ではなく、途切れた記録を見て諦めています。1ページで達成にしておけば、連続記録は簡単には切れません。
そして実際にやってみると、1ページで止まる日はそう多くありません。開いてしまえば数ページは進むからです。下限は「そこまでしか読まない約束」ではなく「そこから先は気分次第」の合図として置きます。
進捗の実感は、ページ数ではなく回数で取ると安定します。カレンダーに読んだ日を丸で囲む、読書アプリで日付だけ記録する、といった形なら1ページの日も1時間の日も同じ1回です。月末に丸の数を数えると、量ではなく継続が目に見えます。
本を開くまでを何秒に縮められるか?
次に触る場所です。丸善ジュンク堂の調査では、読書をする場所は「自宅」が約91%、「電車などの乗り物の中」が62%でした。多くの人は自宅で読んでいるので、家の中のどこに本があるかがそのまま読書時間に効きます。
- 置き場所を決めるいつも座る場所から手を伸ばして届く範囲に1冊置きます。本棚にしまうと、取りに行く動作が増えた分だけ読まなくなります。
- スマホの定位置をずらす本を置いた場所には、充電器やスマホを置かないようにします。同じ場所に両方あると、ほぼ必ず画面を先に見ます。
- 読む時間を既存の習慣に紐づける「歯を磨いたら」「電車に座ったら」のように、すでに毎日やっている動作の直後に置きます。時刻で決めるより崩れにくいです。
- しおりの位置を見えるようにしておく閉じるときに、次に読む見開きへしおりを挟んでおくと、再開時に迷いません。
この4つはどれも、意志ではなく動線をいじる作業です。読書時間は1週間あたり「2〜3時間」という回答が35%で最多という調査結果もあり、まとまった時間を新しく作るというより、既にある隙間へ本を移動させるほうが現実的です。
積読を減らす読み方とは?
積読を「消化すべき負債」と考えると、開くたびに罪悪感が乗ってきて、さらに開かなくなります。先ほどの調査では、積読の理由に「意図して積読にしている」など積読前提での購入も含めて36%という回答がありました。積読の一部は、もともと在庫として買われているということです。
そこで、積んだ本を3つに仕分けします。読む順番を決めるのではなく、役割を決めるのがポイントです。
- いま読む(1〜2冊)手元に置く。下限1ページの対象はここから
- 気分で読む(1冊)軽いエッセイや短編など、疲れた日用の逃げ道
- 在庫(残り全部)本棚へ。読む義務はなく、必要になったときの候補
並行して2〜3冊持つのは、飽きたときに別の本へ移れるようにするためです。1冊に絞ると、その本が合わなかった瞬間に読書そのものが止まります。移動先があれば、止まるのは本であって習慣ではありません。
合わない本を途中でやめるのも、はっきり許可しておきます。50ページ読んで乗れなければ在庫へ戻す、くらいの基準で十分です。買った以上は最後まで、という約束を自分に課すほど、次の1冊に手が伸びなくなります。
この仕組みは「読みたい本はあるのに開けない」人向けです。読みたい本自体が見つかっていない場合は、習慣の設計より先に選び方を変えたほうが早く進みます。また、資格試験や仕事で期限内に読み切る必要がある本には、1日1ページの下限は合いません。その場合は締切から逆算した1日あたりのページ数を決めて、別枠で管理してください。
週末にまとめて読む日はどう作る?
平日は下限1ページで途切れさせず、週に1回だけ長く読む日を用意すると、実際に読み終える冊数が増えます。ここで使いやすいのが、25分作業+5分休憩を1セットとし、4セットで20〜30分の長い休憩を取るポモドーロ・テクニック(考案者はフランチェスコ・シリロ)の考え方です。
- タイマーを25分にセットする時計を見ずに済むので、あと何分かを気にしなくなります。
- 5分休む本を閉じて立ち上がります。ここでスマホを見ると休憩が伸びるので、飲み物を取りに行く程度にします。
- 4セットで一区切り25分×4で読書100分。あいだの休憩を含めても2時間かかりません。
専門書や実用書のように負荷の高い本ほど、区切りの効果が出やすいとされています。疲れ切る前に休むので、結果として長く読めるという理屈です。小説のように流れで読みたい本なら、タイマーは切って好きなだけ読んでかまいません。
音については、テンポの速い曲・遅い曲・環境音・無音の4条件で認知テストを行い、無音がもっとも成績が良かったという研究の紹介があります。一方で、周囲が騒がしい環境では歌詞のないBGMを流したほうが集中しやすいという声もあります。まずは無音で試し、落ち着かなければ歌詞なしのBGMへ切り替える——この順番で自分に合うほうを選べば十分です。
1か月続けるための記録はどうする?
最後に、続いているかどうかを自分で確認できる形にしておきます。読書記録は凝るほど面倒になって続かないので、記録する項目は絞ります。
| 記録する | 記録しない |
|---|---|
| 読んだ日付(丸をつけるだけ) | 読んだページ数 |
| 読み終えた本のタイトル | 要約・感想の長文 |
| 途中でやめた本(在庫へ戻した印) | 星の数などの評価 |
上の表の右側は、読書そのものより手間が大きくなりやすい項目です。感想を書きたくなったら書けばいいのですが、義務にすると「感想を書くのが面倒だから読まない」という逆転が起きます。まずは左側の3つだけで1か月回してみてください。
1か月たったら、丸のついた週と抜けた週を見比べます。抜けた週に共通点があるなら、下限がまだ高いか、置き場所が遠い可能性が高いので、そこだけ調整します。冊数はあとからついてきますし、そもそも月1冊読めた時点で、調査上は読む側の36.9%に入っています。
よくある質問
読書習慣をつけるには1日どれくらい読めばいいですか?
下限は1日1ページで十分です。文化庁の令和5年度調査では1か月に本を1冊も読まない人が62.6%を占めており、月1冊のペースでも読む側の36.9%に入ります。毎日長時間読むより、読まない日をつくらないほうが習慣として定着しやすくなります。
積読があるのは自分だけですか?
多数派です。丸善ジュンク堂書店が2019年に全国40店舗・2,104人を対象に行った調査では、積読が「ある」と答えた人が79%、6冊以上ある人が66%、31冊以上ある人が23%でした。積読の理由には「意図して積読にしている」といった積読前提の購入も含まれ、そうした回答が36%を占めています。
本を何冊も並行して読んでも大丈夫ですか?
問題ありません。むしろ2〜3冊を並行させておくと、1冊が自分に合わなかったときに別の本へ移れるため、読書そのものが止まりにくくなります。手元に置く「いま読む本」を1〜2冊、疲れた日用の軽い本を1冊、残りは本棚に在庫として置く形が管理しやすいです。
読書中に音楽を流してもいいですか?
人によります。テンポの速い曲・遅い曲・環境音・無音を比べた認知テストでは無音がもっとも成績が良かったという研究の紹介がある一方、騒がしい環境では歌詞のないBGMのほうが集中しやすいという意見もあります。まず無音で試し、落ち着かない場合に歌詞なしのBGMへ切り替えて、自分に合うほうを選ぶのが現実的です。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。