電子書籍と紙、本の種類でどう使い分ける?
画像出典: 写真: Zsinytwiki(CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)
電子書籍と紙は「どちらかを選ぶ」ものではなく、読む本の種類と読む場面で使い分けるのが現実的です。マンガ・シリーズもの・移動中に読む本は電子、繰り返し参照する本・行ったり来たりして読む本・手元に残したい本は紙が向いています。まず1か月、マンガだけを電子に寄せて自分の相性を測るところから始めれば、判断を間違えても失うものがありません。
本の置き場所が足りなくなったとき、まず頭に浮かぶのが電子書籍への切り替えです。ただ「電子に移す=紙をやめる」と考えると、決断が急に重くなります。実際のところ、電子と紙は二者択一ではなく、本の種類で分けている人がかなり多いのが実態です。
ここで整理するのは、どちらが優れているかではありません。どの本を電子にして、どの本を紙のまま残すかという線引きの引き方です。この線さえ決まれば、次に本屋で1冊手に取ったときに迷いません。
電子書籍と紙、そもそもどちらが主流なの?
使い分けを考える前に、いま世の中がどうなっているかを押さえておくと判断しやすくなります。紙と電子それぞれがどのくらいの規模なのかは、出版科学研究所が毎年集計しています。
| 紙の出版物(2025年) | 9,647億円(前年比4.1%減) |
|---|---|
| 電子出版(2025年) | 5,815億円(前年比2.7%増) |
| うち電子コミック | 5,273億円(前年比2.9%増) |
出版科学研究所の公表データをもとに作成
紙は減り続けていて、2025年は1975年以来はじめて1兆円を割りました。ただ、それ以上に目を引くのは、上の表の電子出版5,815億円のうち5,273億円、つまり大部分が電子コミックだという点です。電子書籍市場は「本全体が電子に移った」のではなく、まずマンガから移っていったという形をしています。
これは使い分けを考えるうえで、かなり実用的なヒントです。多くの人が最初に電子へ移したのがマンガだったなら、あなたが最初に試す1ジャンルもマンガで構わない、ということになります。
電子が向いている本はどれ?
電子書籍の強みは、冊数が増えても物理的に困らないこと、外出先に何冊でも持ち出せること、買ったその場で読み始められることです。この強みが効くのは、次のような本です。
- マンガ・シリーズもの:巻数が増えるほど置き場所の問題が大きくなる
- 1回読んで満足する本:小説、エッセイ、話題の新刊
- 通勤・移動中に読む本:かばんの重さが変わらない
- 続きが気になる本:夜中に次の巻を買える
- 字が小さくて読みづらい本:文字サイズを変えられる
ポイントは「前から順に読み進めて、読み終わったら本棚に戻す本」という共通点です。ページを行ったり来たりしない読み方の本は、電子にしてもほとんど不便がありません。
読む端末によって体感はかなり変わります。スマホやタブレットは画面そのものが光っているのに対し、電子ペーパー(E-Ink)を使った読書専用端末は紙と同じく光を反射して見せる方式です。長時間読むつもりなら、スマホで試して合わなかった段階で諦めず、専用端末を店頭で見てから判断したほうが後悔しません。
紙のほうがいい本はどれ?
紙の本が強いのは、ページの位置を体で覚えられることです。「あの話は右ページの下のほうにあった」という記憶で戻れるのは紙ならではで、この感覚は電子ではまだ再現しきれません。
- 参考書・資格試験のテキスト:付箋を貼って何度も行き来する
- 図表や写真が多い本:見開きで見たい、画面が小さいと潰れる
- 料理本・実用書:開いたまま横に置いて手を離せる
- 手元に残したい本:好きな作家の本、贈られた本
- 読みかけで積んでおきたい本:目に入る場所にあると読む
最後の項目は軽く見られがちですが、実は効きます。電子書籍は「買ったこと自体を忘れる」という独特の弱点があります。本棚の積読は視界に入りますが、アプリの中の積読は開かないと見えません。読む習慣が途切れがちな人ほど、この差は無視できません。
使い分けの線はどこで引く?
ここまでの内容を、実際に本屋やアプリで1冊を前にしたときに使える形にまとめます。判断は3つの質問で足ります。
- この本を2回以上開くか 1回読んで終わりなら電子。何度も参照するなら紙。
- 前から順に読むか、行ったり来たりするか 順に読むなら電子。ページを往復するなら紙。
- 持ち歩くか、家で読むか 持ち歩くなら電子。家の机で読むなら紙でいい。
3つのうち2つ以上が電子側なら電子、そうでなければ紙。この程度の粗い基準で十分です。細かく最適化しようとすると、そもそも本を買う前の段階で疲れてしまいます。
参考として、hontoが2018年2月に全国の10〜69歳の男女1,200名へ行った調査では、使い分けの理由として男女とも約4割が「読むシーン(外出先か自宅か)で分けている」と答えています。女性では「大事な本は紙」が19%でした。少し前の調査なので数値そのものより、場面で分けるという発想が以前から一般的だったという点を受け取れば十分です。
まず何から試せばいい?
いきなり全部を電子に移す必要はありません。失敗しても損が出ない範囲から始めるのが現実的です。
- 1か月、マンガだけを電子で買う いちばん相性がいいジャンルなので、電子そのものの使い勝手を判定しやすい。
- 移動中に読めたか振り返る 電車で開く回数が増えたなら、あなたには電子が効いています。
- 読み終わったあと本棚を見る 「これは紙で欲しかった」と思う本があれば、それが紙に残すジャンルの正体。
- その1ジャンルだけ紙に固定する 残りは電子に寄せる。線引きは以上で完了。
1か月で自分の傾向がわかるので、そのあとは迷わずに買えるようになります。無料で読める作品や試し読みから始めれば、費用をかけずに端末との相性だけ確かめることもできます。
電子書籍は購入した書店のサービスが終了した場合、読めなくなる可能性が原理的にあります。また、読み終えた本を古本として売ることはできません。「読んだ本は売って次を買う」というサイクルで読書をしてきた人にとっては、電子への移行は費用面で不利になることがあります。
加えて、インプレス総合研究所が2025年5月にスマホ・タブレットユーザー10,281名へ行った調査では、有料の電子書籍を利用している人は17.8%でした。電子が合わないと感じても、それは少数派の感覚ではありません。
本棚があふれている場合はどうする?
置き場所を理由に電子へ移りたい場合、移行の順番があります。これから買う本を電子にするのが先で、すでにある紙の本を処分するのは後です。順番を逆にすると、手放したあとに「あれをもう一度読みたい」となったとき買い直しになります。
すでに持っている本の置き場所については、図書館という手もあります。文部科学省の2024年度社会教育調査(速報値)では全国の公共図書館は3,400館で過去最多、国民1人あたりの貸出冊数も4.8冊と前回調査の4.2冊から増えています。「読みたいけれど所有しなくていい本」を図書館に任せると、買う本の基準がはっきりします。
電子か紙かという問いは、突き詰めると「この本を自分の手元に置きたいか」という問いに変わります。その答えが出る本だけを紙で買えば、本棚は自然と好きな本だけになります。
よくある質問
電子書籍と紙、どちらか一方に統一したほうがいいですか?
統一する必要はありません。マンガやシリーズもの、移動中に読む本は電子、参考書や図表の多い本、手元に残したい本は紙、というように本の種類で分けるのが現実的です。hontoが2018年に行った調査でも、使い分けている人の約4割が読む場面によって分けていると答えています。
電子書籍は目が疲れやすいですか?
使う端末によって変わります。スマホやタブレットは画面そのものが発光するため負担が大きいとされますが、電子ペーパー(E-Ink)を使った読書専用端末は紙と同じく光を反射して文字を見せる方式のため、負担は紙に近いとされています。長時間読む予定があるなら専用端末を検討する価値があります。
電子書籍はどのジャンルから始めるのが失敗しにくいですか?
マンガから始めるのが無難です。2025年の電子出版市場5,815億円のうち電子コミックが5,273億円を占めており、最も多くの人が電子で読んでいるジャンルにあたります。巻数が増えても置き場所に困らない利点が最も分かりやすく出るため、電子の使い勝手を判定しやすくなります。
紙の本を処分してから電子に移行しても大丈夫ですか?
順番を逆にすることをおすすめします。まずこれから買う本を電子にして自分との相性を確かめ、紙の本の処分はそのあとにします。先に処分すると、電子が合わなかった場合や読み返したくなった場合に買い直しになります。また電子書籍は購入した書店のサービスが終了すると読めなくなる可能性がある点も、急いで手放さない理由になります。
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