いろは堂AI ← 戻る

手順書をAIの質問で作る5つの段階

2026年6月1日|いろは堂AI編集部
ノートとノートPCで手順をメモする人物

画像出典: 写真: Shixart1985(CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
手順書が書けないのは、慣れた作業ほど判断が無意識化して手順が飛んでしまうからです。自分で書き出すのではなく、AIにインタビュー役をさせて「まず何をしますか」「次に何を確認しますか」と逆質問させると、飛んだ工程が埋まります。引き出す→整形する→例外を足す→表記を統一する→実際の作業者に試してもらう、の5段階で進めます。
😮‍💨
「あの作業、手順書にしておいて」って言われて3週間経つ…。毎日やってることなのに、いざ書こうとすると手が止まるんだよね。

白紙のドキュメントを開いて、最初の一行で止まる。これは文章力の問題ではなく、慣れた作業ほど手順が意識に上がらなくなるという、記憶の仕組みの側の問題です。

毎日やっている作業を思い出そうとすると、頭の中では「あれをやって、まあいろいろあって、終わり」くらいの粗さでしか再生されません。実際には途中で20個くらいの判断をしているのに、慣れた判断ほど意識に上がらないまま処理されるからです。正直なところ、これを一人で書き出そうとするのが一番つらいやり方です。

そこで役割を逆にします。自分が書くのではなく、AIに質問役をやらせて、答える側に回る。人は「ゼロから思い出す」のは苦手でも、「聞かれたことに答える」のは驚くほど得意です。

なぜ毎日やっている作業ほど手順書にできないのか?

作業を覚えたての頃は、一つひとつの操作を言葉で確認しながら進めます。「このボタンを押す」「ここの数字が前月と合っているか見る」。この段階なら、頭の中の言葉をそのまま書き出せば手順書になります。

ところが繰り返すうちに、その言葉が消えていきます。手が勝手に動き、目が勝手に異常を拾う。効率が上がった状態というのは、言い換えると「手順が言葉から切り離された状態」です。ベテランほど手順書を書きにくいのは、能力の問題ではなくこの逆転が起きているからです。

やっかいなのは、本人には「全部書いた」と感じられてしまうことです。抜けた部分は意識に上がらないので、抜けたこと自体に気づけません。出来上がった手順書を新人に渡すと、3行目で「これ、どこの画面ですか」と聞かれる。あの現象の正体がこれです。

🤔
じゃあ自分で書き出すのが無理なら、どうすればいいの?

抜けを埋めるには、外から突っつかれる必要があります。本来これは、隣に座った同僚が「え、その前に何かしてない?」と口を挟んでくれる役割でした。その役をAIにやらせる、というのが今回の作り方です。

AIに「書かせる」のではなく「質問させる」のはなぜ?

よくある使い方は、「◯◯の手順書を作って」と頼んで下書きを出してもらう方法です。これは構成の型を得るには便利ですが、中身は一般論になります。AIはあなたの職場の画面も、ローカルルールも、去年トラブルになった例外も知らないからです。

知識を持っているのはあなたの側で、それが言葉になっていないだけ。だとすれば、AIに任せるべき仕事は「内容を作ること」ではなく「言葉になっていない部分を、質問で引きずり出すこと」です。

AIへの指示は、役割・目的・与える情報・制約・出力形式を明確に伝えるほど狙った結果に近づくとされています。今回の場合、役割は「執筆者」ではなく「聞き手」になります。

最初にAIへ渡す指示の骨組み
  • 役割:手順書を作るためのインタビュアーとして振る舞ってほしい
  • 目的:この作業を初めてやる人が、迷わず再現できる手順書を作りたい
  • 進め方:一度に一問ずつ質問し、私の答えを受けて次を聞く
  • 制約:私が飛ばした工程や、曖昧な表現があれば必ず突っ込んで確認する
  • 出力:質問が一巡したら、番号付きの手順としてまとめる

ポイントは「一度に一問ずつ」です。まとめて10問投げられると人は答えを雑にしますが、一問ずつなら細部まで答えます。そして「飛ばした工程に突っ込む」を明示的に頼むこと。これを言わないと、AIは礼儀正しく話を先に進めてしまい、肝心の抜けが埋まりません。

頭の中の段取りを引き出す5ステップ

ここからが実際の流れです。所要時間の目安は、30分程度の作業一つにつき20〜30分。白紙を睨んで3週間放置するより速く終わります。

  1. ステップ1|インタビューさせる上の指示を渡し、「まず何をしますか」「次に何を確認しますか」から始めてもらいます。答えは箇条書きでなく、話し言葉のままで構いません。「あー、その前にメールの添付を開いてる」のような後出しこそ、抜けていた工程そのものです。
  2. ステップ2|粒度と順序を整えさせる質問が一巡したら、「ここまでの内容を、初見の人が上から順に実行できる番号付き手順にしてください」と頼みます。ここで初めてAIが書き手になります。粒度がバラついていれば「ステップ3だけ細かすぎるので2つに分けて」と指示します。
  3. ステップ3|例外パターンを足す「この手順で、うまくいかない可能性がある箇所を挙げて、それぞれ何が起きたら何をすべきか質問してください」と続けます。手順書が現場で使われなくなる最大の理由は、想定どおりに進まなかった瞬間に何も書いていないことです。
  4. ステップ4|表記を統一させる「同じものを別の言葉で呼んでいる箇所を洗い出してください」と頼みます。「登録画面/申込フォーム/入力ページ」が混在していると、読み手はそれが同じ画面なのか判断できません。この照合はAIが得意な作業です。
  5. ステップ5|実際に人が動けるか試す完成した手順書を、その作業を知らない人に渡して、そのとおりに動いてもらいます。詰まった箇所が、あなたの頭の中にまだ残っている暗黙の工程です。そこだけ追記すれば完成します。
🤩
ステップ5、これまで「わかりにくい?」って聞くだけで終わってた…!

感想を聞くと、たいてい「わかりやすいです」と返ってきます。読んでわかることと、そのとおり動けることは別物です。実際に動いてもらうと、詰まる場所が指一本で示されます。

質問の答え方でつまずくのはどこ?

インタビュー形式でよくあるのが、答えが抽象的になってしまうケースです。「データを確認します」と答えると、AIも「データを確認する」と書きます。これでは元の木阿弥です。

目安として、その文を読んだ人が、自分の手をどう動かすか一通りに決まるかで判断します。「データを確認します」では決まりません。「前月分のCSVを開いて、合計行が請求書の金額と一致しているか見ます」なら決まります。

ありがちな答え方手順書に書けない理由
「いつものやつを開く」ファイル名も保存場所も特定できない
「問題なければ次へ進む」何が問題なのかの基準がない
「適宜調整する」調整の方向も範囲も不明
「担当者に確認する」誰に、どの手段で聞くかが抜けている

この4つが出たら赤信号です。AIに「曖昧な表現があれば突っ込んで」と最初に頼んでおくと、この手の答えに対して「いつものやつとは、具体的にどのファイルですか」と返ってきます。面倒に感じますが、その面倒さこそが手順書の中身です。

AIに任せてはいけないのはどこ?

この作り方でAIが担当しているのは、質問すること・整形すること・表記のゆれを見つけることの3つだけです。中身の正しさは一切保証されません。

この方法が向いていないケースもあります

手順を間違えると事故や法令違反につながる作業(医療、設備保全、経理の締め処理、個人情報の取り扱いなど)では、AIが整形した文章をそのまま配布してはいけません。AIは会話の流れから「たぶんこうだろう」という一文を補ってしまうことがあり、それが実際の手順とずれていても、文章としては自然に読めてしまいます。この種の作業では、公式の規程やマニュアルとの突き合わせを人が行うことが前提になります。

また、社内システムの画面や取引先名など、外部に出せない情報を扱う場合は、利用しているAIサービスの入力データの扱いを先に確認してください。ここは職場のルールが優先されます。

マニュアル作成にAIを使って作成時間を大きく削減したとする企業の事例も紹介されていますが、これは個々の企業による自己申告であり、第三者が検証した数値ではありません。どこまで短縮できるかは作業の複雑さによって変わるため、時間削減そのものを目的にしないほうが結果はよくなります。

目的は、「その作業を知らない人が、聞かずに完了できること」の一点です。この基準さえ握っていれば、AIをどこまで使うかは自由に決められます。

最初の1本はどれから作ればいい?

いきなり業務全体を網羅しようとすると、また止まります。最初に選ぶべきは、次の条件に当てはまる小さな作業です。

1本目に向いている作業
  • 30分以内で終わる
  • 月に数回は発生する
  • 今は自分しかやり方を知らない
  • 誰かに聞かれて口頭で説明したことがある

最後の条件が特に重要です。一度でも口で説明したことがある作業は、すでに部分的に言葉になっているため、インタビューが進みやすくなります。

1本作り終えると、質問と回答のやりとりの型が手元に残ります。2本目からは同じ指示文を使い回せるので、時間は半分以下になります。手順書づくりが後回しになる本当の理由は量の多さではなく、1本目の入り口が重いことです。その入り口だけ、AIに開けてもらえば十分です。

よくある質問

AIに手順書を丸ごと書かせるのと、質問させるのはどちらがよいですか?

職場固有の手順を残したい場合は、AIに質問させる方法が適しています。AIは自社の画面構成やローカルルール、過去のトラブル事例を知らないため、丸ごと書かせると一般論の手順書になります。知識を持っているのは作業者本人で、それが言葉になっていないだけなので、AIには質問して引き出す役割を任せ、内容は本人が答える形にします。

AIにインタビューさせるときの指示文には何を含めればよいですか?

役割(手順書作成のインタビュアーとして振る舞う)、目的(初めての人が再現できる手順書を作る)、進め方(一度に一問ずつ質問する)、制約(飛ばした工程や曖昧な表現があれば必ず確認する)、出力形式(一巡したら番号付き手順にまとめる)の5点を含めます。特に「一問ずつ」と「曖昧なら突っ込む」の2つを明示しないと、抜けが埋まらないまま進みます。

手順書に例外パターンはどこまで書くべきですか?

作った手順書が使えるかどうかは、どう確かめればよいですか?

その作業を知らない人に手順書を渡し、書かれたとおりに実際に動いてもらいます。感想を聞くだけでは「わかりやすい」で終わってしまい、抜けは見つかりません。読んで理解できることと、そのとおり動けることは別で、相手が詰まった箇所が、作成者の頭の中に残っている暗黙の工程です。そこだけ追記すれば手順書は完成します。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。