AI会計ソフトの自動仕訳、3社で何が違う?
画像出典: ぱくたそ (PAKUTASO)
AI会計ソフトの自動仕訳は、freeeが口座・カード連携データの学習を軸にAI-OCRを強化、マネーフォワード クラウドがAI-OCRでの証憑読み取りと学習ルールの二段構成、弥生が自動学習と自分で書く仕訳ルールの併用という違いがあります。選ぶときは「紙の証憑を読ませるか」「OCRの枚数課金」「学習を自分で制御したいか」「消費税申告が必要か」の4点で絞り込めます。どのソフトでも、AIが出すのは仕訳の候補までで、確定させるのは事業主本人です。
「AIが自動で仕訳する」という言葉は3社とも使っていますが、中身のしくみは同じではありません。口座・カードの明細を学習して科目を推測するものと、紙のレシートを読み取る段から始めるもの、さらに自分でルールを書けるものがあります。
正直なところ、ここを知らずにプランだけ見比べると、「レシートが読めると思っていたのに枚数制限で詰まる」といったずれが起きます。帳簿整理を始める前に、しくみの違いから見ていきましょう。
自動仕訳とは、結局どこまでをAIがやるのか?
自動仕訳とは、取引のデータを取り込み、「この支払いは通信費」「これは売上」と勘定科目を割り当てた仕訳の候補を機械が作る機能です。処理は大きく2つの層に分かれます。
- データ化の層銀行・クレジットカード・電子マネーの明細を連携して取り込む、またはレシートや請求書といった紙の証憑をAI-OCR(画像の文字を認識してデータに変換する技術)で読み取る。
- 科目推測の層取り込んだ取引に対し、過去に確定した仕訳のパターンを学習して「たぶんこの科目」という候補を出す。
3社の違いは、ほぼこの2層のどちらに重心があるかの違いです。そしてどのソフトも出すのは候補までで、科目を確定して申告するのは事業主本人です。ここは最初に線を引いておいてください。
学習の進み方にも二通りあります。ひとつは、ユーザーが科目を直したという履歴そのものを教材にする方式。もうひとつは、条件を満たす取引にこの科目を当てる、と人が明示的に書いたルールで動かす方式です。前者は手間が少なく、後者は意図したとおりに動きます。
freee・マネーフォワード・弥生、しくみはどう違う?
| データ化の入口 | 科目推測のしかた | 向いている場面 | |
|---|---|---|---|
| freee会計 | 銀行・カード・電子マネー連携が中心。2025年秋から「AIデータ化β」でレシート・請求書の読み取りを強化 | 過去の仕訳パターンを学習し候補を提示。光熱費・家賃・通信費などの定期的な支払いは一度確定させると翌月以降も同じ明細から推測 | 支払いの大半がカード・口座経由で、毎月同じ取引が繰り返される事業 |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | 受領した請求書・領収書をAI-OCRで解析して文字情報をデータ化し、仕訳まで自動生成 | 登録済みの仕訳(勘定科目・補助科目・部門・摘要など)を学習する「自動仕訳ルール」が、同一内容の証憑から候補を提案 | 紙やPDFの請求書・領収書が多く、証憑の読み取りから任せたい事業 |
| やよいの青色申告 オンライン | 「スマート取引取込」が銀行・カード・電子マネーの明細、CSV、領収書・レシートから取り込んで仕訳を自動作成 | ユーザーが勘定科目や摘要を修正すると次回以降は修正後の内容で取り込む学習機能に加え、「仕訳ルール設定」で条件に合う取引へ科目を自動割当するルールを個別に書ける | 科目の当て方に自分の決まりがあり、AIの推測任せにしたくない事業 |
各社公式サポートページの公表情報をもとに作成
上の表を一言でまとめると、freeeは連携データの学習型、マネーフォワードはOCRと学習ルールの二段構成、弥生は自動学習と明示ルールの併用です。カード決済中心で取引の型が決まっているならfreee、紙の証憑の山をまずデータにしたいならマネーフォワード、科目の当て方を自分で握りたいなら弥生、という分かれ方になります。
なお、freeeの「AIデータ化β」がディープラーニングを使ったAI-OCRである点は各種紹介記事による整理で、技術の詳細は公式の機能説明ページで確かめるのが確実です。
価格はどれくらい違う?
| サービス | プラン | 年額(年払い) | 備考 |
|---|---|---|---|
| freee会計 | スターター | 11,760円 | 確定申告のみ |
| freee会計 | スタンダード | 23,760円 | 消費税申告(インボイス対応)を含む |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | パーソナルミニ | 10,800円 | 最低限の確定申告機能 |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | パーソナル | 15,360円 | 消費税申告(インボイス対応)を含む |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | パーソナルプラス | 35,760円 | 電話サポート付き |
| やよいの青色申告 オンライン | セルフプラン | 11,800円 | 価格改定前の情報 |
| やよいの青色申告 オンライン | ベーシックプラン | 22,800円 | 操作質問サポート付き・価格改定前の情報 |
| やよいの青色申告 オンライン | トータルプラン | 19,800円 | 初年度半額キャンペーン表示あり・業務相談可・価格改定前の情報 |
freee株式会社・株式会社マネーフォワード・弥生株式会社の各社公式サイトの公表データをもとに作成(2026年時点)
上の価格表で目を留めてほしいのは、年額そのものよりプランごとに付く制限です。freeeはプランごとにレシート撮影の月間上限が決められており、マネーフォワードのAI-OCR読み取りには枚数に応じた従量課金があります。紙の証憑を主役にするつもりなら、ここが実質的な上限になります。
弥生は2025年9月1日に、2026年1月1日適用の価格改定が告知されています。上の数値は改定前のものを含むため、申し込む前に弥生の公式サイトで現在の価格を確認してください。税込・税抜の表記も各社で異なります。
選ぶときに確認すべき基準は?
- 対応する証憑の種類:銀行・カード明細だけで足りるか、紙のレシートや請求書のOCR読み取りまで必要か
- OCR読み取りの課金方式:マネーフォワードのAI-OCRは2024年6月1日以降、月6枚目から1枚20円の従量課金。freeeはプランごとにレシート撮影の月間上限がある
- 学習の自動化レベル:修正を重ねるだけで学習が進めばよいか、自分で「仕訳ルール」を書きたいか(弥生は両方できる)
- 消費税申告(インボイス制度)への対応:freeeはスタンダード以上、マネーフォワードはパーソナル以上に含まれる
1か月に処理する紙の証憑の枚数を、実際に数えてみるのがいちばん早い判断材料です。月数枚なら無料枠に収まり、月数十枚なら従量課金や撮影上限が年額に乗ってきます。
2025年分の申告スケジュールと制度変更
2025年分(令和7年分)の所得税・復興特別所得税の申告期間は2026年2月16日(月)から3月16日(月)まで、個人事業者の消費税等の申告・納付期限は2026年3月31日(火)です。国税庁の「令和7年分確定申告特集」準備編ページも公開されています。
2025年分からは基礎控除額が48万円から、合計所得に応じて最大95万円(所得132万円以下の場合)へ引き上げられ、扶養控除・配偶者控除の所得要件も48万円から58万円に緩和されました。帳簿そのものの付け方は変わりませんが、申告時の計算に関わるため、ソフトが対応しているかは確認しておく価値があります。
自動仕訳がうまくいかないとき、どこを疑う?
原因は3つの層のどれかにあり、順番に切り分けると見つかります。自分の使い方の問題と決めつける前に、上の層から確かめてください。
- データ化の層を疑う取り込まれた取引の日付・金額・摘要が、明細やレシートの実物と一致しているか見る。金額や摘要が崩れているならOCRの読み取りか連携の問題で、科目の設定をいくら直しても直らない。
- 学習・ルールの層を疑う摘要は正しいのに科目が違うなら、過去に別の科目で確定させた履歴を学習している可能性がある。同じ取引を正しい科目で確定し直すか、弥生のように仕訳ルールを書けるソフトなら条件を明示する。
- プラン・機能の制限を疑うレシートが取り込めない、OCRが途中で止まる場合は、プランの月間上限や従量課金の設定に当たっていることがある。機能の提供範囲は契約プランで変わるため、画面上の制限表示を先に確認する。
自動仕訳が強いのは、繰り返される同じ取引です。逆に、事業用と私用が混ざった支払いを何割まで経費にするかの振り分け(按分)、自宅の家賃や光熱費のように生活と事業の両方に関わる支出(家事関連費)をどう分けるか、金額の小さい備品をその年に一度で経費にできる扱い(少額減価償却資産)、取引先ごとに消費税がかかるかどうかの区分(消費税区分)の判断などは、事業の実態を知らないと決められません。AIが出すのは仕訳の下書きで、確定させるのは事業主本人という線は動かないと考えてください。迷う論点が多いなら、業務相談が付くプランや税理士への相談も選択肢になります。
今日できる一歩は?
どのソフトも、まずは1か月分だけ試すのがおすすめです。直近1か月の口座・カード明細を連携し、手元のレシートを数枚読み込ませて、自分の取引で科目がどれくらい当たるかを見る。これが机上のプラン比較よりも確実な判断材料になります。
当たりが悪くても、それが即「使えない」ではありません。最初の数十件を正しい科目で確定させた後に、同じ種類の取引がどう推測されるかまで見る。学習型のソフトは、ここで差が出ます。決めるのはそれからで間に合います。
よくある質問
AI会計ソフトの自動仕訳は、紙のレシートも読み取れますか?
3社とも対応していますが入口が違います。マネーフォワード クラウド確定申告は受領した請求書・領収書をAI-OCRで解析して仕訳まで自動生成し、やよいの青色申告 オンラインは「スマート取引取込」が領収書・レシートからも取り込みます。freee会計は口座・カード連携が中心でしたが、2025年秋から「AIデータ化β」でレシート・請求書の読み取りを強化しています。
自動仕訳で読み取ったレシートに追加料金はかかりますか?
マネーフォワード クラウド確定申告のAI-OCR読み取りは2024年5月まで無料で、2024年6月1日以降は月6枚目から1枚あたり20円の従量課金です。freee会計はプランごとにレシート撮影の月間上限が決められているため、契約するプランの上限を公式サイトで確認してください。
勘定科目の当て方を自分で決めたい場合、どのソフトが向いていますか?
やよいの青色申告 オンラインです。ユーザーが勘定科目や摘要を修正すると次回以降は修正後の内容で取り込まれる学習機能のほかに、「仕訳ルール設定」画面で特定の条件に合う取引へ指定した科目を自動割当するルールを個別に設定できます。自動学習と明示ルールを併用しやすい設計です。
2025年分の確定申告はいつまでに提出すればよいですか?
2025年分(令和7年分)の所得税・復興特別所得税の申告期間は2026年2月16日(月)から3月16日(月)までです。個人事業者の消費税等の申告・納付期限は2026年3月31日(火)です。国税庁の「令和7年分確定申告特集」準備編ページが公開されています。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。