ガバメントAI「源内」とは?10万人が使う中身
画像出典: 写真: 663highland(CC BY 2.5 / Wikimedia Commons)
ガバメントAI「源内」はデジタル庁が内製した行政職員向けの生成AI利用環境で、2026年5月29日から全府省庁の職員約18万人を対象とした大規模実証が始まり、約10万人が利用できる状態になりました。汎用チャットと、法制度調査や国会答弁検索といった業務特化アプリの2階建て構成が特徴です。1200人規模の先行実証では約8割が実際に使い、79.1%が業務効率化に寄与したと回答しています。
行政向けの生成AI利用環境「源内」が、2026年5月29日から全府省庁に広がりました。デジタル庁が発表した大規模実証では、政府職員約18万人が対象となり、そのうち約10万人が実際に使える状態になっています。
「役所がAIを導入した」というニュースは今までもありました。ただ今回が違うのは、規模と、中身の作り方です。外部のサービスをそのまま配ったのではなく、デジタル庁が自分たちで開発した環境を、まず自庁で1年使い倒してから他省庁へ広げている。この順番には、AIを組織に入れるときのヒントがかなり詰まっています。
ガバメントAI「源内」とは?
源内は、デジタル庁が内製開発した行政向けの生成AI利用環境です。政府全体でAI活用を進める「ガバメントAI」という取組があり、源内はその中で職員が実際に触る部分にあたります。動いている場所はガバメントクラウド、つまり政府向けに整備されたクラウド基盤の上です。
名前の由来は、生成AIを意味する「Generative AI」の略「Gen AI(ゲンナイ)」と、エレキテルで知られる江戸時代の発明家・平賀源内を掛けたもの、と言われています。複数のメディアで一致している説明ですが、デジタル庁が公式に明言した資料は確認できていないので、ここは通説として受け取っておくのがよさそうです。
構成は大きく2系統に分かれます。職員が直接ブラウザから使う「源内Web」と、行政実務向けの生成AIマイクロサービス群です。マイクロサービスというのは、機能ごとに小さく分けて作られた部品のことで、必要なものを組み合わせて使えるようにしてあります。
2026年5月29日に何が起きたのか
この日、デジタル庁は全府省庁の政府職員約18万人を対象とした大規模実証の開始を発表しました。うち約10万人が利用可能な状態になっています。それまでは一部省庁での試験的な利用にとどまっていたので、一気に段が上がった形です。
5月中に財務省・外務省などへ順次展開し、最終的には全府省庁の職員が行政業務で使える体制を整える計画とされています。実証期間は2026年5月から2027年3月を予定し、27年度中の本格導入を目指す——ここは二次情報にもとづく見通しなので、確定した予定として読むよりは方向感として押さえておくのが安全です。
| 2025年5月 | デジタル庁職員向けに「源内」提供開始 |
|---|---|
| 2025年5〜7月 | 庁内実証(対象約1200人) |
| 2025年8月 | 行政実務用AIアプリが20種類以上に拡充 |
| 2025年12月 | 政府職員10万人超の活用方針を表明 |
| 2026年3月 | 国土交通省など他府省庁へ展開開始/国産LLMの選定結果を公表 |
| 2026年4月24日 | Webアプリ部分などをOSS化しGitHubで公開 |
| 2026年5月29日 | 全府省庁18万人対象の大規模実証開始、約10万人が利用可能に |
デジタル庁ほかの公表情報をもとに作成
この並びを見ると、1年かけて自庁で試し、アプリを増やし、他省庁へ広げ、そして全体へ、という順序がはっきり見えます。いきなり全員に配るのではなく、小さく始めて使われ方を確かめてから広げているのが、この1年の設計です。
源内では何ができる?——「2階建て」の中身
提供されているAIアプリは20種類以上あります。並べてみると、性格の違う2種類が混ざっていることに気づきます。
- 対話型のチャットAI
- 文章の作成
- 長い資料の要約
- Lawsy(ロージー):法制度の調査を支援するAI
- 国会答弁検索AI:過去の答弁を検索する
- 公用文チェッカーAI:役所の文書ルールに沿っているか確認する
- 旅費・電子決裁など内部システムのヘルプAI
- 2026年度中に開発予定:国会答弁の草案を作成するAI
1階は、どんな職場にもある「読む・書く・まとめる」の仕事です。2階は、その組織にしか存在しない仕事。国会答弁の検索や公用文のチェックは、民間企業には出てこない業務ですが、裏返せばどの組織にも「その組織にしかない2階部分」があるということでもあります。
業務特化アプリのほうが1件あたりの効果は大きくなります。それでも源内が先に配ったのは1階の汎用型でした。理由は使われ方にあります。業務特化アプリは、その業務に関わる一部の人しか触りません。一方、要約や文章作成は全員に関係がある。まず全員が毎日触る場所から入れて、AIに何を頼めて何を頼めないかの感覚を組織に行き渡らせる。特化アプリはその後で効きます。
なぜ「使われた」と言えるのか——先行実証の数字
AI導入でいちばん多い失敗は、入れたけれど誰も使わない、です。源内の場合、デジタル庁が自庁で行った2025年5〜7月の実証結果が公表されています。
| 対象人数 | 約1200人 |
|---|---|
| 利用した人 | 950人(約8割) |
| 延べ利用回数 | 6万5000回以上 |
| 業務効率化に寄与したとの回答 | 79.1%(非常に寄与21.8%+ある程度寄与57.3%) |
デジタル庁の公表データをもとに作成
注目したいのは、利用率と効果実感が両方出ていることです。利用率だけ高くても「一度触って終わり」かもしれませんし、効果実感だけ高くても一部の熱心な人の声かもしれません。約8割が実際に使い、そのうえで約8割が効率化に寄与したと答えたという組み合わせだから、次の段へ進む根拠になっています。
デジタル庁がまず自分たちで1年使ってから他省庁へ広げたのは、この数字を作るためだったとも読めます。他部署に勧めるとき、「便利ですよ」より「うちで1200人が3か月使って、8割が使い続けました」の方が強い。
OSS化は何を意味する?
2026年4月24日、源内のWebアプリ部分や開発テンプレートなどがGitHubで公開されました。ソースコードはMITライセンス、ドキュメントはCC BY 4.0で、商用利用も可能です。MITライセンスというのは、著作権表示さえ残せば改変も商用利用も自由という、制約のとても緩い公開のしかたです。CC BY 4.0も考え方は同じで、作った人の名前(クレジット)を表示すれば、複製も改変も商用利用も自由にできる文書向けの利用許諾です。
狙いとして説明されているのは、各府省庁・自治体・民間での重複開発を抑えること。同じようなAI環境を全国の役所がそれぞれゼロから作るのは、時間もお金ももったいない。公開しておけば、各組織が自分たちで運用・改良していけますし、民間からの改善提案も取り込めます。
これは行政の外にいる人にも関係があります。自治体や企業が「AI環境を自前で持ちたい」と考えたとき、参考にできる実装が公開されている状態になった、ということだからです。
自分の職場にAIを持ち込むには?
源内の1年をそのまま真似することはできませんが、順番の考え方は規模に関係なく使えます。
- 小さい範囲で先に試すいきなり全社に配らず、自分のチームや自分ひとりで1〜2か月使う。この期間の目的は成果を出すことではなく、何に効いて何に効かないかを知ることです。
- 汎用の「読む・書く・まとめる」から入る議事録の要約、長い資料の要点抽出、メールのたたき台。全員に共通する仕事なので、効果が伝わりやすく、説明もいりません。
- 使われた記録を残す何人が使ったか、何回使ったか、時間がどれだけ減ったか。源内が次の段へ進めたのはこの記録があったからです。感想より数字の方が、次の稟議を通します。
- 自分の組織にしかない仕事へ広げる社内規程の検索、過去の提案書の参照、業界特有のチェック作業。ここが源内で言う2階部分で、効果はいちばん大きいけれど、1階で土台ができてから手をつけます。
解決したい業務課題がすでにはっきりしていて、その業務に関わる人が少数に限られている場合は、汎用から入る遠回りが不要なこともあります。また、扱う情報の機密性が高い職場では、どのサービスに何を入力してよいかのルールを先に決めないと、1段目にすら進めません。順番より先に、まず自分の職場の制約を確認してください。
行政は一般に、新しい道具の導入には慎重な組織です。その行政が18万人規模の実証に踏み切ったという事実は、AIを職場に持ち込む提案をするときの後押しになります。少なくとも「まだ誰も使っていない未知のもの」という説明は、もう成り立ちません。
よくある質問
ガバメントAI「源内」とは何ですか?
デジタル庁が内製開発した、行政職員向けの生成AI利用環境です。政府全体のAI活用の取組である「ガバメントAI」の一部で、職員が直接使うWebアプリと、行政実務向けの生成AIマイクロサービス群の2系統で構成され、ガバメントクラウド上で稼働しています。2025年5月にデジタル庁職員向けの提供から始まりました。
「源内」という名前の由来は何ですか?
生成AIを意味する「Generative AI」の略称「Gen AI(ゲンナイ)」と、エレキテルの製作で知られる江戸時代の発明家・平賀源内の名前を掛けた命名と言われています。複数のメディアで一致している説明ですが、デジタル庁公式資料での明記は確認されていないため、通説として扱うのが適切です。
源内ではどんなことができますか?
20種類以上のAIアプリが提供されています。対話・文章作成・要約といった汎用のチャットAIに加え、法制度調査を支援する「Lawsy(ロージー)」、過去の国会答弁を検索するAI、公用文チェッカーAI、旅費や電子決裁など内部システムのヘルプAIなど、行政実務に特化したものがあります。2026年度中には国会答弁の草案を作成するAIアプリの開発も予定されています。
源内のソースコードは誰でも使えますか?
2026年4月24日に、源内のWebアプリ部分や開発テンプレートなどがGitHubで公開されました。ソースコードはMITライセンス(著作権表示を残せば改変も商用利用も自由)、ドキュメントはCC BY 4.0(クレジットを表示すれば複製・改変・商用利用が自由)で提供され、商用利用も可能です。各府省庁・自治体・民間での重複開発を抑え、各組織が主体的にAI基盤を運用・発展できるようにすることが狙いとされています。
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