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ディープフェイクの見分け方、気づける4つの視点

2026年6月18日|いろは堂AI編集部
Manipulated Content: Is It Real or Fake?(REAIM会議での展示写真)

画像出典: 写真: Ministerie van Buitenlandse Zaken(CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
ディープフェイクは、生成AIが「もっともらしい見た目」を作る仕組み上、手や指、看板の文字、影の向き、輪郭の境界といった細部で破綻しやすいです。見分けの基本は、透かしやAI生成ラベルの有無、破綻しやすい部位の目視、投稿者プロフィールの確認、そして公式情報源との照合の4点です。判定ツールは補助であり、画質が低いと精度が落ちるため単独の根拠にはしません。
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有名人がとんでもないこと言ってる動画が流れてきた…これ、本物なの?

偽の動画や音声が出回るたび、「自分は見抜ける自信がない」という声が増えます。総務省が2026年5月に実施した調査(全国15歳以上の男女5,640人が対象)では、「ディープフェイクを知っている」と答えた人は40.3%でした。そして総務省は、存在を知っているだけでは不十分で、生成の仕組みへの理解こそが実質的な判断材料になると指摘しています。

正直なところ、これは目の良し悪しの話ではありません。AIがどうやって映像を作っているかを知ると、「壊れやすい場所」がわかるという、それだけの話です。逆に言えば、その場所さえ覚えておけば、専門知識がなくても最初の違和感には気づけます。

なぜ手や文字だけ不自然になるの?

🤔
顔はあんなにきれいなのに、なんで指だけ変になるんだろう

画像や動画を作る生成AIは、対象の「構造」を理解して描いているわけではありません。大量の画像から「こういう見た目になりやすい」というパターンを学び、それらしい配置のピクセルを埋めていきます。人の顔は学習データに膨大に含まれ、目・鼻・口の位置関係も安定しているので、非常にうまく再現されます。

一方、は事情がまったく違います。指の本数は同じでも、握る・広げる・重なる・隠れると、見え方が無限に変わる。「それらしさ」の平均値を取ると、指が6本あったり関節が逆に曲がったりした、どこかで見たようで実在しない形になってしまいます。歯や髪の毛も、細かい繰り返し構造が続くため同じ弱点を抱えます。

文字はさらに厳しい。文字は「形が少し崩れたら別物になる」記号ですが、生成AIにとっては模様の一種でしかありません。だから背景の看板や標識は、遠目には文字らしいのに、拡大すると読めない崩れた線の集合になっていることがあります。

生成AIが苦手とする描写
  • 手・指(本数、関節の向き、重なり)
  • 髪の毛・歯などの細かい繰り返し
  • 背景の看板・標識などの文字
  • 影の向きと、建物や柱など構造物の角度の関係
  • 壁・柱といった直線的な構造物のまっすぐさ

影と直線が挙がっているのも同じ理由です。本来の写真では、光源がひとつなら影はすべて同じ方向へ伸び、柱はまっすぐ立ちます。これは物理法則が保証している一貫性ですが、AIは物理ではなく見た目のパターンを再現しているため、画面の右側と左側で影の向きが食い違う、といった破綻が起きます。

確認する箇所本物の映像ではこう見える生成物で起きやすい見え方
手・指指は5本、関節は同じ向きに曲がり、重なった指の前後関係が追える指が6本ある、関節が逆に曲がる、重なった指の前後がつながらない
看板・標識の文字拡大しても文字として読め、同じ字は同じ形をしている遠目は文字らしいが、拡大すると読めない崩れた線の集合になる
顔と背景の境界髪の生え際や輪郭が背景とはっきり分かれ、再生しても揺れない境界がぼやける・にじむ、再生のたびにちらつく
顔の解像度顔も背景も同じ細かさで写っている顔の部分だけ周囲と細かさが違って見える
影の向き光源がひとつなら、影はすべて同じ方向へ伸びる画面の右側と左側で影の向きが食い違う、構造物の角度と合わない
壁・柱などの直線まっすぐ立ち、途中で曲がらない直線が緩く歪む、途中で角度が変わる

日本ファクトチェックセンターおよびGMOインターネットグループの公表情報をもとに作成

上の表の左右を見比べると、破綻の正体がはっきりします。どれも「本物なら当たり前に揃っているはずのもの」が揃っていないという形で現れる、ということです。手持ちの動画を止めて、この6か所を右列と照らし合わせるのが、実際の確認作業になります。

動画ならではの見どころは?

静止画に加えて、動画には「時間」という軸が増えます。ここが動画版ディープフェイクのいちばんの弱点です。1コマずつはうまく作れても、コマとコマのつながりを完全に保つのは難しい。

動画で確認したいポイント
  • 動きがカクカクしていないか
  • 物体が突然出現したり消えたりしないか(手に持った旗が次の瞬間に消える、といった実例が報告されています)
  • 国旗の星の数など、実在するものの細部が実物と違っていないか
  • 顔の輪郭や背景との境界線がぼやける・にじむ・ちらつくことはないか
  • 顔の部分だけ、周囲と解像度が違って見えないか

最後の2つは、顔だけを差し替えるタイプの加工でよく出ます。元の映像に別人の顔をはめ込む処理なので、顔と首の境目、髪の生え際といった「継ぎ目」に処理の跡が残りやすいのです。フレームを止めて境界線を見る、あるいは同じ場面を何度か再生して、境界がちらついていないかを見る。それだけで気づけることがあります。

この見どころには寿命があります

ここに挙げた破綻は、生成技術が上がれば減っていきます。実際、指の描写は数年前と比べて格段に改善しました。「破綻が見つからない=本物」とは言えないことは、必ず頭に置いてください。見どころは入口であって、判断の結論ではありません。だからこそ、次の章の照合手順が要になります。

真偽を確認する手順は?

目視だけに頼らない形にします。日本ファクトチェックセンターが示している確認の流れを、実際に手を動かす順に並べると次のようになります。

  1. 透かしとラベルを見るOpenAIのSoraやGoogleのGeminiなど、生成AIツールで作った動画には透かし(ウォーターマーク)が入る場合があります。YouTubeやTikTokといった動画プラットフォームには、投稿者がAI生成ラベルを付けられる仕組みもあります。まずここを確認します。
  2. 投稿者を調べるプロフィールと過去の投稿を見ます。「AIアーティスト」と自称していないか、AI生成画像を大量に投稿していないか。手がかりはたいてい本人のアカウントに残っています。
  3. 描写の破綻を目視する手・文字・輪郭・影・直線構造という前章の5点を、拡大して確認します。
  4. 公式情報源と照合する気象庁やNHKといった公的機関・報道機関の情報と内容を突き合わせます。大きな出来事なら、必ずどこかが報じています。
  5. 「ありえるか」を検証するその人物が言いそうな内容か、その時間・その場所にいたと考えられるか。映像の中身ではなく、外側の事実関係から確かめます。

実務でいちばん効くのは、4と5の照合です。映像がどれだけ精巧でも、「その日その人は別の場所にいた」という事実は動かせません。技術の進歩で1〜3の効き目が下がっても、この2つは残ります。

判定ツールはどこまで使える?

Hive Moderation(Hive AI Detector)のような検証ツールに、画像・音声・20秒未満の動画をアップロードすると、AI生成の可能性がパーセンテージで表示されます。手軽で、迷ったときの参考にはなります。

ツールの判定は絶対ではありません

画質が低いと精度が下がるなどの限界があり、判定結果はあくまで可能性の目安です。ツールの数字ひとつを根拠に「これは偽物だ」と断定して拡散すると、今度は自分が誤情報の発信源になります。ツールは手順5つのうちの補助であって、置き換えではありません。

音声だけの偽物はどう疑う?

😲
電話の声だと、そもそも見るところがないよね…

音声は映像より手がかりが少なく、しかも電話回線を通ると音質が落ちるため、細かい違和感はさらに埋もれます。ここでは「音を聞き分ける」発想を捨てて、確認の経路を切り替えるのが現実的です。

具体的には、かかってきた番号でそのまま話を進めず、いったん切って、こちらが知っている連絡先へかけ直す。家族なら本人しか知らない話を挟む。会社の入金指示なら、電話とは別の経路で上長に確認する。相手が「今すぐ」「この電話のまま」と急がせるほど、経路を変える価値が上がります。

これは音声認証を疑う話ではなく、真偽確認の手順4・5と同じ考え方です。コンテンツそのものではなく、その外側の事実で裏を取る。声を判別する技術が追いつかない領域でも、この方法なら通用します。

知識としてどこまで備えればいい?

総務省の同じ調査では、「ディープフェイクが存在していることは知っている」が46.8%、ICT活用スキルのテストで「AI技術を用いた画像・映像などが作成できることを知っている」と答えた人は全体の61.5%でした。存在の認知はある程度広がっている一方、「どう作られているか」まで踏み込んでいる人はもっと少ない、というのが総務省の問題意識です。

公的な動きも進んでいます。総務省は2026年版「インターネットトラブル事例集」を公開し、生成AIの普及に伴うディープフェイク被害を特集として新設しました。青少年の顔写真が不正に加工され性的画像として拡散される事例などを取り上げ、被害防止と加害防止の両面から注意を促しています。また、総務省の「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」は2024年度に始まり、2026年3月16日には都内でイベントが開かれ、公募で採択された14団体が技術開発の成果を発表しました。

つまり、見抜く側の技術も同時に育っている最中です。読者側が今できるのは、破綻の見どころを覚えておくことと、迷ったら公式情報源に当たる癖をつけること。この2つで十分に実用的です。

今日から持っておきたい構え
  • 驚く内容ほど、まず拡散せずに一度止まる
  • 手・文字・影・輪郭・直線をざっと見る
  • 投稿者のプロフィールと過去投稿を開く
  • 公的機関・報道機関が同じことを言っているか確かめる
  • 電話や音声は、こちらから別の経路でかけ直す
😌
全部を見抜こうとしなくていいんだ。止まって確かめる、が先なんだね

偽物を100%見破る方法は、残念ながらありません。それでも、破綻の理由を知っていれば「怪しい」と感じる回数が増え、確認する習慣があれば、それを鵜呑みにする回数が減ります。そこまでで十分に守れます。

よくある質問

ディープフェイクで最も見分けやすい部分はどこですか?

手や指、背景の看板・標識の文字、顔と背景の境界線、影の向きの一貫性、壁や柱など直線的な構造物の歪みです。生成AIは物の構造ではなく見た目のパターンを再現しているため、形が複雑に変わる部位や、物理法則で一貫性が決まる要素で破綻が起きやすくなります。

動画がAIで作られたかどうか、ラベルで判断できますか?

手がかりにはなります。OpenAIのSoraやGoogleのGeminiなど生成AIツールで作った動画には透かしが入る場合があり、YouTubeやTikTokでは投稿者がAI生成ラベルを付けられる仕組みがあります。ただしラベルの付与は投稿者に委ねられているため、ラベルがないことは本物である証明にはなりません。

AI判定ツールの結果はどこまで信用できますか?

参考の目安として使うにとどめてください。Hive Moderation(Hive AI Detector)などのツールは画像・音声・20秒未満の動画からAI生成の可能性をパーセンテージで示しますが、画質が低いと精度が下がるといった限界があり、判定は絶対ではありません。公式情報源との照合と組み合わせて判断します。

偽の音声で電話がかかってきた場合はどう確認すればよいですか?

音を聞き分けようとせず、確認の経路を変えるのが確実です。かかってきた番号でそのまま話を続けず、いったん切って自分が知っている連絡先へかけ直す、本人しか知らない話題を確認する、金銭がからむ指示は電話とは別の経路で上長や関係者に確かめる、という手順を取ります。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。